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元婚約者の妾になれと言う兄チャールズ
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祖国に帰国し、生まれ育った城に着いた私はその様子の変貌に驚いた。かつては城じゅうに飾られていた薔薇の花は甲冑や槍に変わっている。美しい湖や山々の自然を描いた絵画は外され、毒々しい色使いの暗い絵画にとって変わっていたのだった。
出迎えてくれたのは兄だった。兄のチャールズは、私に向かって顔を歪めて毒づいた。
「恥知らずだな。離縁されて、のこのこ出戻ってくるなど、王女としての自覚はないのか!」
そうか、表向きはコルトン王の逆鱗に触れて強制帰国なのだから、周りからはそう思われてしまうのね。私は、もちろん、コルトン王の本心は漏らすことはできない。ドミニ王国では、側妃ではなく娘としての扱いを受けていたことも言うべきことではないのだ。
「父上は、病で母上と共に、田舎で療養中だ。実質は、今ではケネディ王国は私が統治している。やれやれ、このような王族としての義務も果たせなかった妹は如何すれば良いかな? このまま、この王宮に住ませるわけにはいかないぞ」
帰国した早々、兄から冷たい言葉を投げつけられた。それを見ていた王宮の者達が私を”役立たずの出戻り王女”と呼ぶのに時間はかからなかった。
「アレクシス王女様が嫁いだからこそ、大国ドミニ王国と戦争にもならず平和に過ごせたのに、なぜこのような扱いを受けるのでしょう。おいたわしい。私は悔しいです」
専属侍女のマヤとケイラが私の手を握りしめ、悔し涙を浮かべていた。
翌日、ドミニ王国から王の崩御の知らせがあった。側妃と愛妾達は残らず一緒に埋葬されたと。王の巨大な墓に一緒に生きたまま閉じ込められた者達は、さぞ恐ろしかっただろう。餓死するのが先なのか窒息するのが先なのかわからないが、怖くて辛い死に方なのは間違いない。
それは、ドミニ王国では大変名誉なことと思われていた。一緒に埋葬された女性達の遺族には多額の金銭がドミニ王国から支払われるのだ。ケネディ王国には、そのような風習はないが兄はその金銭がケネディ王国だけには入らないいことを知って私を睨み付けた。
「不名誉なことだ! お前がコルトン王の不興を買い出戻ってきたおかげで、私は諸外国からいい笑いものだぞ!
王族の勤めすらまともにできず、祖国に戻るとは! 恥知らずの愚か者が!」
『なぜ、王と一緒に死ななかったのだ?』と責める兄に、私はなんと答えればよいのだろうか?
「申し訳ありません・・・・・・」俯く私に兄は、イライラとした口調で驚くような命令をしてきたのだった。
「アレクシス王女、お前はこの失態の責任をとり王族から籍を抜く。お前はもう平民だ。お前の元婚約者のワイアットを覚えているか?あいつは、今では大富豪だ。お前を妾に欲しいと言ってきた。私は喜んで承諾したぞ。即刻、支度をしワイアットの元に行け。あぁ、あいつの新しい屋敷は素晴らしく豪華だぞ。贅沢な暮らしをさせてもらえるに違いない。この兄に感謝しろよ」
翌日、わずかな身の回りの物だけを持ち、侍女のマヤとケイラを伴いワイアット家に向かおうとしたが兄に止められた。
「アレクシス! お前はもう王族でも貴族でもない。侍女を連れていくことは許さない。ワイアットは末端男爵だがお前は正妻にしないと断言している。となれば、お前は平民のままだ。平民に侍女はいらないだろう」
兄とは昔から気が合わなかった。お互い距離をとり親しく話したこともあまりない。そして、今はじめて兄の本性を見てこの城はもう私の家ではないことを痛感した。ここはもう兄のもので、王族ではなくなった私はワイアットの妾になるという。
私は、恨まれて蔑まされて別れた元婚約者の元に一人っきりで妾になりに向かうのだった。
出迎えてくれたのは兄だった。兄のチャールズは、私に向かって顔を歪めて毒づいた。
「恥知らずだな。離縁されて、のこのこ出戻ってくるなど、王女としての自覚はないのか!」
そうか、表向きはコルトン王の逆鱗に触れて強制帰国なのだから、周りからはそう思われてしまうのね。私は、もちろん、コルトン王の本心は漏らすことはできない。ドミニ王国では、側妃ではなく娘としての扱いを受けていたことも言うべきことではないのだ。
「父上は、病で母上と共に、田舎で療養中だ。実質は、今ではケネディ王国は私が統治している。やれやれ、このような王族としての義務も果たせなかった妹は如何すれば良いかな? このまま、この王宮に住ませるわけにはいかないぞ」
帰国した早々、兄から冷たい言葉を投げつけられた。それを見ていた王宮の者達が私を”役立たずの出戻り王女”と呼ぶのに時間はかからなかった。
「アレクシス王女様が嫁いだからこそ、大国ドミニ王国と戦争にもならず平和に過ごせたのに、なぜこのような扱いを受けるのでしょう。おいたわしい。私は悔しいです」
専属侍女のマヤとケイラが私の手を握りしめ、悔し涙を浮かべていた。
翌日、ドミニ王国から王の崩御の知らせがあった。側妃と愛妾達は残らず一緒に埋葬されたと。王の巨大な墓に一緒に生きたまま閉じ込められた者達は、さぞ恐ろしかっただろう。餓死するのが先なのか窒息するのが先なのかわからないが、怖くて辛い死に方なのは間違いない。
それは、ドミニ王国では大変名誉なことと思われていた。一緒に埋葬された女性達の遺族には多額の金銭がドミニ王国から支払われるのだ。ケネディ王国には、そのような風習はないが兄はその金銭がケネディ王国だけには入らないいことを知って私を睨み付けた。
「不名誉なことだ! お前がコルトン王の不興を買い出戻ってきたおかげで、私は諸外国からいい笑いものだぞ!
王族の勤めすらまともにできず、祖国に戻るとは! 恥知らずの愚か者が!」
『なぜ、王と一緒に死ななかったのだ?』と責める兄に、私はなんと答えればよいのだろうか?
「申し訳ありません・・・・・・」俯く私に兄は、イライラとした口調で驚くような命令をしてきたのだった。
「アレクシス王女、お前はこの失態の責任をとり王族から籍を抜く。お前はもう平民だ。お前の元婚約者のワイアットを覚えているか?あいつは、今では大富豪だ。お前を妾に欲しいと言ってきた。私は喜んで承諾したぞ。即刻、支度をしワイアットの元に行け。あぁ、あいつの新しい屋敷は素晴らしく豪華だぞ。贅沢な暮らしをさせてもらえるに違いない。この兄に感謝しろよ」
翌日、わずかな身の回りの物だけを持ち、侍女のマヤとケイラを伴いワイアット家に向かおうとしたが兄に止められた。
「アレクシス! お前はもう王族でも貴族でもない。侍女を連れていくことは許さない。ワイアットは末端男爵だがお前は正妻にしないと断言している。となれば、お前は平民のままだ。平民に侍女はいらないだろう」
兄とは昔から気が合わなかった。お互い距離をとり親しく話したこともあまりない。そして、今はじめて兄の本性を見てこの城はもう私の家ではないことを痛感した。ここはもう兄のもので、王族ではなくなった私はワイアットの妾になるという。
私は、恨まれて蔑まされて別れた元婚約者の元に一人っきりで妾になりに向かうのだった。
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