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祖国への3年ぶりの帰国

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「なぜ、ワイアット様にわざわざ憎まれるようなことをおっしゃったのですか? これでは、アレクシス王女様だけが悪者になってしまいます」

 私の専属侍女のマヤがドミニ王国に向かう馬車のなかで尋ねてきた。

「ワイアットは、とても勇敢で私を愛してくれている方だから。この結婚が酷い内容のものだと知ったら、きっと私を守ろうとして殺されてしまうわ。憎んでもらったほうがいいのよ。私がドミニ王国行くのに変わりはないのだから。そして、二度と、ワイアットには会えないわ。ワイアットには私を忘れて幸せになってほしいのよ」

 ドミニ王国の風習は後からお父様にお聞きしていた。その国では王の妃や愛妾はすべて王が亡くなったら一緒に埋葬されるのだ。老王は齢60歳。私は、死にに行くようなものだ。


ーードミニ王国の大広間にてーー


「アレクシス王女、よう参られた。寛ぐがよい。おぉ? 貴女の顔をよく見せてくれ。・・・・・・なんてことだ! 貴女は私の亡くなった第2王女に似ている。とても、美しい子だった。そなたにはな、南の宮殿を授けよう。」

 コルトン王の第2王女は病で私の年頃に亡くなったと聞かされた。最も愛する正妃の産んだ愛娘だったらしい。その正妃も今は亡き人になっている。

 それ以降の私は側妃ではなく娘のような待遇を受けた。私の居室に度々いらっしゃるコルトン王は、娘を溺愛する父親のようだった。

「珍しいお菓子を持ってきたぞ。アレクシスに食べさせたくてな」

「美味しいですね」

「うん、うん。そうであろう。真っ先に食べさせようと思ってなぁーー。まだまだ、たくさんあるからな」 

 穏やかな優しい日々が3年ほど続き、お互いに親子のような感情が育っていた。








 王が病になり、寝付くことが多くなったある日、私は呼び出された。

「アレクシス。祖国に帰ることを命じる。お前は私と同じ墓に埋葬されることはない。お前は私の逆鱗に触れた。ゆえに、即刻離縁し祖国に戻す」


「私がなにをしたのでしょうか?」

「ふっ、愚か者め。 アレクシス、私の亡くなった娘のぶんも長生きし必ず幸せになるのだぞ」

 コルトン王は私の手を握りしめ優しくほほえんだのだった。私は、コルトン王から二つの宝石を渡された。

「この二つの宝石はお守りになる。売れば、城の三つぐらい軽く買える貴重なものだ。持って行きなさい」

 私は、この宝石とわずかなドレスだけを馬車に積んでマヤ達とともに祖国に向かった。そのわずか2時間後にコルトン王が亡くなったことを後から知るのだった。



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