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5 (妹視点)その3

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今日は、王家主催の舞踏会だ。胃が痛くてたまらない。

私が仕上げたハンカチの刺繍は酷い出来だったし、上着の襟の刺繍はハエがたかっているようにしか見えない・・・・・

それでも、ロン公爵様は、なにもおっしゃらなかった。

王宮に着くと、皆がこちらに注目した。

「「「「あら、奥様のディオール様がご一緒ではないのね? どなたかしら?」」」」

「「「ほぉーー、かわいい貴婦人だが、ディオール様の方が気品があるなぁ」」」」

「「「あのロン公爵様の襟の刺繍、珍しいわよね? なんの模様かしら?」」」

いろいろな、囁き声が聞こえてくる。やめてよ! お姉様は、私の数倍も美しいし有能だ。そんなこと、言われなくたってわかってる。

ダンスもへまばかりして、周りの貴族達に笑われているのがわかった。


*:゚+。.☆.+*✩⡱:゚


王様と王妃様が並んでいらっしゃって、ご挨拶をする時になっても、私はなんて言っていいのかわからなくなって頭が真っ白だ。

その時に、後ろからそっと肩に手をかけたのがお姉様だった。

「大変、遅れましたことをお詫び申し上げます。こちらに向かう途中で、体調を悪くしたものですから、控え室で休んでおりました。こちらは、私の妹でございます」

お姉様は、私にふわりと笑いかけて、王妃様に紹介してくれた。

王妃様は、にこりとお笑いになり、温かい言葉をかけてくださった。

私は、お姉様に抱きついた。

「ごめんなさい、『大好きな最愛のお姉様』」

「ねぇ、オークリン。もう、その言葉は効かないわよ?」

お姉様は優しい口調でおっしゃったが、その目はとても厳しい冷たいものだった。

私は、一番の味方だった怒らせるべきではない人を怒らせたのだった。
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