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21 アリアナの全てを知りたい魔王
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「ダリ、お誘いありがとうございます。影絵ショーに誘ってもらえるなんてすごく嬉しいです。子供向けの催しですけれど、密かに見たいなと思っていたものです。なぜ、わかったのですか?」
「それは当然さ。妃が何を思っているのか、常に気にかけているからね。」
アリアナと魔王は仲良く並んで影絵ショーを楽しんだ。観客は子供連れの夫婦ばかりで、子供たちだけで来ている割合も多い。会場ではキャンディやゼリーが売られており、魔王は迷わずミスティックフルーツキャンディをアリアナに渡す。これは幻影のように変化するキャンディで、口に入れると味が変わる。見た目も輝くような色合いで、魔界らしい神秘的なキャンディなのだ。今ちょうど食べたいと思いながら、アリアナが見ていたキャンディでもある。
「ダリ、すごいです。私がこれを食べたいと、よくわかりましたね?」
「偶然だよ。ただ、私はいつも妃のことを考えているから、それで自然に分かったのかもしれないね」
アリアナは感動のあまり、魔王の頬にそっと唇を近づけ、柔らかくささやいた。
「こんなに愛されて、私は世界一幸せです」
☆彡 ★彡
別の日、アリアナは体調を崩していた。軽い頭痛がし、身体も少し熱っぽく感じていた。
「魔界風邪にかかったのか? 心配しないで。この薬草の汁を飲めば、すぐに良くなるから」
まだ魔王には一言も伝えていなかった。むしろ、心配をかけまいと、いつも以上に元気なふりをしていたほどだ。肩に乗っているジョアンナでさえ、その変化には気づいていなかった。
「またしてもですね。どうして、ダリには私のことがわかるのでしょう?」
「それは愛の力さ。アリアナの心や体調の変化は、夫である私には手に取るようにわかるのだよ」
さらにまた別の日、魔王城での夕食時の出来事である。いつものように、アリアナは魔王の膝の上に乗せられ、魔王が差し出してくれる物を食べようとしていた。
「今日はシェフに人間界の食べ物を作らせたよ」
「まぁ、嬉しい! いったい、なにがでてくるのでしょう? 楽しみですわ」
アリアナの前には、ちょうど今、食べたいと思っていた料理がズラリと並べられる。
「ローストビーフだわ。それにサーモンのムースも! ポテトのグラタンも大好きですし、ベリーのタルト! ちょうど、食べたいと思っていたものばかりです」
「喜んでもらえて嬉しいよ。アリアナが食べたい物が用意できて満足だ」
「私もジョアンナのお陰で魔法が使えますが、ダリの頭のなかは読めません。ダリの魔力も吸収しているので、かなりの魔力量だと思うのですが・・・・・・私にもダリがなにを考えているのか、わかったらいいのに」
アリアナは悲しげに俯いた。しかし、魔王はアリアナに心のなかを見られなくてホッとしていた。
(私の心のなかを見たら、絶対アリアナは離れてしまうよ。私の思っていることは絶対に秘密さ)
実のところ、魔王がアリアナに贈った結婚指輪は、ただの指輪ではなかった。指輪には、アリアナの体調や感情をリアルタイムで監視できる魔法が施されており、魔王はその情報を常に確認するのが日課となっていたのだ。指輪がアリアナの思考や体調を常に把握し、魔王に逐一報告するような監視システムになっていることを、アリアナは知らない。
「これは絶対に秘密だな。それに、常にアリアナのことを考えていることがバレたら、気味の悪い男だと思われてしまう」
魔王は首をぶんぶんと振りながら、アリアナに気づかれないように独りごちた。アリアナにだけは、絶対に嫌われたくない。しかし、監視をやめることもできない魔王だった。
「それは当然さ。妃が何を思っているのか、常に気にかけているからね。」
アリアナと魔王は仲良く並んで影絵ショーを楽しんだ。観客は子供連れの夫婦ばかりで、子供たちだけで来ている割合も多い。会場ではキャンディやゼリーが売られており、魔王は迷わずミスティックフルーツキャンディをアリアナに渡す。これは幻影のように変化するキャンディで、口に入れると味が変わる。見た目も輝くような色合いで、魔界らしい神秘的なキャンディなのだ。今ちょうど食べたいと思いながら、アリアナが見ていたキャンディでもある。
「ダリ、すごいです。私がこれを食べたいと、よくわかりましたね?」
「偶然だよ。ただ、私はいつも妃のことを考えているから、それで自然に分かったのかもしれないね」
アリアナは感動のあまり、魔王の頬にそっと唇を近づけ、柔らかくささやいた。
「こんなに愛されて、私は世界一幸せです」
☆彡 ★彡
別の日、アリアナは体調を崩していた。軽い頭痛がし、身体も少し熱っぽく感じていた。
「魔界風邪にかかったのか? 心配しないで。この薬草の汁を飲めば、すぐに良くなるから」
まだ魔王には一言も伝えていなかった。むしろ、心配をかけまいと、いつも以上に元気なふりをしていたほどだ。肩に乗っているジョアンナでさえ、その変化には気づいていなかった。
「またしてもですね。どうして、ダリには私のことがわかるのでしょう?」
「それは愛の力さ。アリアナの心や体調の変化は、夫である私には手に取るようにわかるのだよ」
さらにまた別の日、魔王城での夕食時の出来事である。いつものように、アリアナは魔王の膝の上に乗せられ、魔王が差し出してくれる物を食べようとしていた。
「今日はシェフに人間界の食べ物を作らせたよ」
「まぁ、嬉しい! いったい、なにがでてくるのでしょう? 楽しみですわ」
アリアナの前には、ちょうど今、食べたいと思っていた料理がズラリと並べられる。
「ローストビーフだわ。それにサーモンのムースも! ポテトのグラタンも大好きですし、ベリーのタルト! ちょうど、食べたいと思っていたものばかりです」
「喜んでもらえて嬉しいよ。アリアナが食べたい物が用意できて満足だ」
「私もジョアンナのお陰で魔法が使えますが、ダリの頭のなかは読めません。ダリの魔力も吸収しているので、かなりの魔力量だと思うのですが・・・・・・私にもダリがなにを考えているのか、わかったらいいのに」
アリアナは悲しげに俯いた。しかし、魔王はアリアナに心のなかを見られなくてホッとしていた。
(私の心のなかを見たら、絶対アリアナは離れてしまうよ。私の思っていることは絶対に秘密さ)
実のところ、魔王がアリアナに贈った結婚指輪は、ただの指輪ではなかった。指輪には、アリアナの体調や感情をリアルタイムで監視できる魔法が施されており、魔王はその情報を常に確認するのが日課となっていたのだ。指輪がアリアナの思考や体調を常に把握し、魔王に逐一報告するような監視システムになっていることを、アリアナは知らない。
「これは絶対に秘密だな。それに、常にアリアナのことを考えていることがバレたら、気味の悪い男だと思われてしまう」
魔王は首をぶんぶんと振りながら、アリアナに気づかれないように独りごちた。アリアナにだけは、絶対に嫌われたくない。しかし、監視をやめることもできない魔王だった。
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