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4 希代の悪女誕生

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 わたしが出席しなければならない夜会は、必ず週に一回はあります。オズボルト侯爵家の令嬢の務めとして、それが負担と思ったことはこれまではありませんでした。

 今夜は王家の主催の夜会でして、必ず出席しなければならないものです。ですが、気は進みませんでした。

「まぁーー。オリオン様にエスコートされているのはイレーヌ様ね! ご覧になって。クララ様は両親といらっしゃって男性のエスコートがいないわ! お可哀想に」

「イレーヌ様は輝くブロンドにエメラルドの瞳が宝石のようですが、あの美しい顔の裏は悪魔ですね・・・・・・。クララ様をご覧になって、かわいそうに、あんなにやつれて・・・・・・友人に恋人を奪われたのですから無理もないですわ」

 貴婦人達の容赦のない噂話の今夜の餌食は私ですが、このような言葉にどのように反論したらいいのかもわかりません。

 私とオリオン様がファーストダンスを踊り終わると、クララ様はタイミングを見計らったようにやってきてオリオン様に弱々しく微笑みかけて、おっしゃいます。

「一曲だけでいいのです。オリオン様と踊らせていただいてよろしいでしょうか」

「もちろんですわ! どうぞ」

 私はクララ様に答えると、一人バルコニーに向かいました。二人が踊り出すと感嘆のため息が聞こえてきます。

「やはり、お二人はお似合いですわぁーー」

「こんなお似合いのカップルを切り裂くなんてイレーヌ様も酷いわね・・・・・・」

 ヒソヒソ話はここでも繰り広げられるのです。私の両親もカーティス男爵夫妻も、アイヤナ準男爵夫妻も、この夜会には出席しており、この声が聞こえているはずなのに・・・・・・なにも言わないのです。

 この婚約を決めたのはあなた方なのに、なぜ責められるのはわたしだけなのでしょう?

 お父様、お母様、私はこんなにも非難されているのに・・・・・・なぜ、笑いながら会話が楽しめるのですか?

 オリオン様は2曲目をクララ様と一緒に踊りおわり、私のもとに来ようとしています。それを悲しげな面持ちで見つめていたクララ様は、いきなり床に倒れてしまいました。

 真っ青な顔色のクララ様はアイヤナ準男爵夫妻と共にその夜会から帰ってしまいました。
その後の私に向けられた視線は、まるで私がクララ様を突き飛ばしたとでもいわんばかりの嫌悪に満ちていました。

 その二日後、クララ様が自宅の階段の踊り場から、転げ落ちる事件が起こりました。クララ様は大怪我を負い、これはオリオン様との恋が実らなかったことを苦にして自殺しようとしたに違いない、と噂されました。

 階段の踊り場からヒールを履いた華奢な女性が転げ落ちることは、確かに命の危険があります。

「イレーヌ様がオリオン様に横恋慕して、家柄にものを言わせて奪ったからだわ」

「なにもよりによって友人の恋人に目を付けなくても・・・・・・他にも、男性はいるのにねぇーー」

 この事件で私は、希代の悪女とまで言われるのです・・・・・・
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