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因果応報が始まる

10 サミール視点

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昔のことだが、ジェイス辺境伯の父上は、王都に来ると必ずウィルソン公爵家に寄っていた。王女様でいらっしゃったクリスタル様は、いつも優しく微笑んでいたが、病弱で寝込んでいることが多いようだった。

「クリスタル。貴女は幸せかい?」父上は、必ずクリスタル様に聞いていた。

「もちろん、幸せよ?」どこか、うつろな表情でおっしゃるクリスタル様は、生気がなく、人形のようだった。

私は、アイリスと仲良くなって、一緒に本を読んだり庭園を駆け回って遊んだ。アイリスは、両親の愛に飢えていた。

「お父様は、いつも屋敷にはいらっしゃらないし、お母様は、いつも夢を見ているようで、近くにいても心はここにはないみたい。私は、誰にも愛されない子供だわ・・・」

そんなことはないよ。アイリスは、綺麗で可愛くて、勉強だってなんだって頑張っている。

「僕が愛するから大丈夫だよ。僕がアイリスを守るから。絶対に、守るから・・・」

私は、幼い頃に、アイリスに誓ったんだ。

「ほんとに? じゃぁ、大きくなったら、サミールのお嫁さんにしてくれる?」

アイリスは、嬉しそうに私の手を握って頬を染めた。もちろん、そのつもりだった。

それからの私は忙しかった。なにしろ、王女様と宰相の娘を妻に迎えるには賢くならないといけなかったから。

私は、人の見ていないところで人の3倍努力して、見ているところでは、さも怠け者のように振る舞った。女性に関しても、わざと、趣味の悪い女性とつきあい、”うつけもの”といわれるようにしたんだ。

父上は、優秀すぎて、敵をつくることが多かったというから、逆を狙った。人は愚か者には口が軽くなるようで、なんでも話してくれる。王家の秘密も筒抜けだったよ。


*:゚+。.☆.+*✩⡱:゚


 父上は私の亡くなったお母様を友人のように好きだったと言った。愛とは違うと・・・。

「なぜ、クリスタル様を力尽くで奪わなかったのですか?」

私が聞くと父上は首を振った。

「クリスタル様が宰相がいいとおっしゃったんだ。いくら、私でも、無理だろう? 宰相が無理矢理に嫌がるクリスタルを奪っていったなら、この命にかけても奪い返しただろうが・・・」

 大きくなって、いろいろと勉強していくうちに、宰相に不信感を感じるようになった。・・・王家もことになっているし・・・

王妃様も、かなりのだと思う。アイリスは王家のにはさせないよ? 


*:゚+。.☆.+*✩⡱:゚


やがて、クリスタル様が亡くなって、ウィルソン公爵は新しい妻と連れ子を迎えた。アイリスとは、内密に手紙をやりとりしていた。

『義妹は、なんでも私のものを欲しがります。それから、私は王太子妃に選ばれたわ』

その手紙を読んで、私は、その義妹を王太子に会わせるように言った。なにも、心配しなくていいよ。私は完璧に計画を練っているのだから。

ヴァレリアの崇拝者のふりをして、言いなりになっている男を演じて、実はいいように行動させていた。全ては、愛するアイリスの為さ。

私は小さな魔石をフラワーアレンジメントに毎回、忍ばせた。魔石は映像も音声も記憶できる優れものだ。

私は、それを翌日回収して、確認させてもらった。思ったよりも、酷い内容に吐き気がしたな・・・王家に見せるのはあの義妹が王太子妃になってからでいい・・・



*:゚+。.☆.+*✩⡱:゚ーー次回予告
★ヴァレリア視点★


「え?  エステバン様と???????がキスしている?∑( ◦д⊙)‼」

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