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2 エストレラ視点

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お姉様は、本当になんでも言うことをきく。まさに「負け犬体質」よ。なにを要求しても、黙って受け入れるからどこまで「はい」というか試してみたわ。

初めはドレスや宝石だった。次は婚約者だ。けれどなにを奪っても、少しも泣かない。涙の一粒も浮かべないなんて。

なんて、つまらない姉だろう・・・


ある日、もっとお姉様に意地悪したくなって、お姉様の部屋の鏡台の引き出しに、私がオズボルト様からいただいた大事な婚約指輪を隠した。

「あら? 私の大事な指輪がないわ! オズボルト様に頂いた大事な婚約指輪なのに・・・」

私は、派手に騒ぎ立てて、大泣きした。お母様とお父様は、私の言葉しか信じない。美しさって正義なのよ!

お姉様は泥棒をした罪を私にきせられて、反省を促すようにと狭くて寒いメイドの部屋に移らされた。

面白いから、そのままメイドのように、こき使ってやった。

あの日も、平民達が貴族達への不満を叫んでいて外は騒がしかったけれど、私は、そのイライラをお姉様にぶつけた。

「飲み物を持ってきてよ! それから、私の部屋も掃除をしておいて? あぁ、前みたいに宝石を盗んだりしたら、また、お母様達に言いつけるからね!」

私は、お姉様にぞんざいに命令したわ。

「エストレラ。私は、メイドではありませんよ? 貴女の姉です」

お姉様は、初めて口答えしたわ! すっごく面白かったけれど、偉そうな口調に腹がたった。

「なによ! 冴えないブスのくせに! あんたなんか、でしょう?」

私が、心底、嫌そうな口調で言うと、お父様も顔をしかめて同意した。

「このアーリィは、本当に私達の子なのかな? 全く似てないが・・・」

お父様は、少し過激なことまでお母様に言い出したわ。

「まぁ、もちろん、貴方の子ですよ!」

お母様は、泣き出した。ほんとに、この姉は、いるだけで私達を不愉快にさせる。

「おまえなんか、いなければ良かったのに!」

お父様は、忌々しげにお姉様を睨み付けた。

お姉様の瞳から一筋の涙がこぼれた。私は意地悪な満足感に浸っていた。

外は、今日も雨だった。私は、雨が好きだ。優しい雨音を聞きながら読書をするのも、眠るのも。自然の子守歌みたいだわ・・・



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