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火事と従業員のタネコさん

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 私は駆けた。ホームセンター冨士山の、斜め横にある倉庫には、いろいろな種類の商品の在庫がかなり詰まっていた。その大事な倉庫から、煙が立ちあがり火の粉も少しだけ見える。

「大変だわ! イライジャ様! ほら、最近、新発売のアレを持って来て下さい!」

「あれ? あぁ、『あっという間に消えぇーる』だね?」

 商店街のみんなが、不安気に見ている中、私とイライジャ様と他の従業員も含めて、小型の消火器をそれぞれに持ち四方から協力して消していった。

「あらぁ、あんな小さくても、結構、消えるわねぇーー」

 そんな関心するお客様達の声に、私も声を張り上げて宣伝する。

「そうなんですーー! こちらは、高性能で安全かつ素早く火を消していきますよぉー! こうしてあまり、火に近づかないでも、消火剤を噴射することで火を集中的に消せるんです!」

「「「便利だわぁーー。あれだけ、消えればお台所のちょっとしたボヤならすぐね」」」

「「「一家に一台、必要だわね!」」」

 そんなこんなで、また商品が売れたのは嬉しかった。

「サラってさぁ、凄いと思うよ? こういう事件の時でも、商品を売ろうとする商魂たくましいところはさ・・・・・・」

 イライジャ様の、あとの言葉を、私が補った。

「商魂たくましいところは?」

 私がイライジャ様に詰め寄ると、イライジャ様は優しい声で囁いた。

「僕の妻にうってつけだ」

 ふふっ。私は、このホームセンター冨士山ばかりを育てていたわけではなかった。ちゃんと、恋愛も進行中よ。

 私は、倉庫の中で、甘い会話を交わしながら、イライジャ様と在庫の被害状況をチェックした。


 なんと、ある商品だけがごっそりなくなっていた。最近、新発売のジョロという洗剤は売れ筋商品だった。それが、1本もないのだ。

「これは、倉庫にも防犯カメラが必要ですね?」


 翌日、私は従業員の一人を呼び出した。

「ねぇ、貴方が当番の時に限って在庫がいつも減っていたことに私が気がつかないとでも思った?」

「どこに、そんな証拠があるんですか?」

 40代の従業員のタネコさんが食ってかかってきたのだった。
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