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ブリアンナ登場(ディラン・アシュレside)

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「まだ、なにかご用ですか? 慰謝料はこれ以上、ビタ一文もまけないわよっ!」

 その言葉に驚いた私はこの女をまじまじと観察した。声もドレスもサラなのだけれど、顔も髪型もサラではない。

「お前は誰だ? サラのようでサラではない。 あいつに妹でもいたのだろうか・・・・・・」

「なにを、ぶつぶつとおっしゃっているのですか。妹のはずがないでしょう。私は一人娘です」

 打てば響くとはこのことか。サラはすぐに言葉を返してくる。いつもなら、下を向いて涙を溜めているのに・・・・・・あぁ、その涙は欠伸のせいだと言っていたが。

「じゃぁ、本当にサラなのか。その顔はずいぶん違うけれど・・・・・・いつもそのようだと良いと思うぞ」

 私は、サラの顔を見て素直にそう思った。長い睫とアイシャドーが目に奥行きをつくるのだろうか? すばらしくぱっちりした目は輝いてさえ見えた。鼻もすっと引き締まり陰影ができていて、いつもより高く見える。頬も唇も淡いピンクでとても美しい女だ。こんなに化粧映えするなら、はじめからすればいいのに。髪も綺麗に結い上げて髪飾までつけている。私と会う時は、髪飾りどころか、結い上げてもいなかった。長い黒髪を無造作にたらしていただけだ。


「あのぉーー。先ほどの婚約破棄だがな・・・・・・その、父上がな・・・・・・反対している。だから、なんていうか、その、あの・・・・・・」

 言いづらいな。あれだけ啖呵を切って婚約破棄を宣言しておいて今更、なかったことにしろなんて男として恥ずかしい。

「お父様に叱られていらっしゃったのでしょう? 婚約は家同士のものですからね。そんなに簡単には破棄できませんよね。けれど、ディラン様はご自分の言葉に責任を持つべきですわ。これを取り消すとしてもですよ? 慰謝料はいただきますわ」
 
「婚約破棄を取り消すならば、もとに戻っただけだろう? 慰謝料はなくなるはずだ」

 私は胸を張って切り返した。元通りになれたのなら、さっきの言葉はなくなって、慰謝料もゼロだ。

「おバカさんなのですか?ディラン様は婚約破棄を私に突きつけて私の心を動揺させたのですよ? 愛する婚約者から婚約破棄を突きつけられた苦痛がおわかりになりますか? その精神的苦痛に対して慰謝料を請求します」

 だめだ、サラは強すぎる。なにを言っても対抗できない気がした。私は、こんな理屈やじゃなくて朗らかな女がいいんだ! 

「こんにちはぁーー。勝手にきちゃったわぁ。ディラン様。別れ話は済んだのですか? さきほど、約束してくれましたよね? さっさと婚約者と別れて私を妻にしてくれるって! 待ちきれませんよ、早くしてください。そこの貴女、あ、あれ? 聞いていたほど冴えなくないじゃん。むしろ綺麗・・・・・・ふん。でも私だって負けてないんだからぁーー。さっさと別れなさいよ。この未練がましい女め!」

 クレアン家の侍女が二人がかりで止めるの振り切ってブリアンナは乱入してきた。ますます、嬉しそうなジョセフィーヌと奥からクレアン伯爵も出てきて私はますます追い詰められるのだった。



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