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2 私の家族は優しいのですわーー早速の無意識ざまぁ (グレイス・リッチモンドside)
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グレイス・リッチモンド視点
「ちっ! なんでこんなに話が進まないのよっ! あんたなんて追い出してやるんだから。私はルーカス様とは結婚を誓い合った仲なのよ!」
イライラと怒りで顔を赤くしている女性に私はため息をつく。
(可哀想に……おっしゃっていることがめちゃくちゃですわ。やはり病院に連れて行ってもらわないとね)
そう思っているとまたもやリッチモンド家に侵入者がやって来ました。
「おい、俺を金で買うような真似をして!恥ずかしくないのか?」
今度は男性で私より年下に見える、やけに威張った態度の若者です。プリプリしながら私を蔑んでいますが・・・・・・なんと薄っぺらい体なのでしょう。筋肉が足りないわ・・・・・・
「俺はお前との婚約を破棄する! だいたい爵位もない商人風情が俺と釣り合うはずがないだろう? 身の程知らずだな! 俺はそこにいるエミリーと恋仲なんだ!」
と得意満面でそう宣言したのでした。
(困りましたね、また患者さんが増えましたわ。今日の精神病院は患者さんの監視が甘過ぎます。あとで意見しなければ)
侍女が病院に連絡をして、やっと病院関係者の男性が二人やって来ました。私は早速この方達のお仕事をねぎらいましたわ。
「お忙しいなか、わざわざご足労いただいてありがとうございます。いつも大変なお仕事なさっていて尊敬しますわ。ところでそちらの患者さんと思われる男女二名がリッチモンド家に押しかけてきましたのよ……あちらにいる男女です」
私はまずはこの方達に丁寧に挨拶をしてお茶とお菓子を振る舞い、この突然の侵入者のことをお話ししました。
「いきなりやって来てけんか腰でわけのわからないことをおっしゃるって、絶対病気ですわよね?」
私の問いかけに二人は真面目な顔でこくりと頷きます。
「そうですね。この二人はうちの患者ではありませんが、とりあえず一日だけ収容しておきましょう。どっちにしても災難でしたね」とても丁寧な言葉をいただいたのでした。
「おい、待て!! 俺は病院なんかに行かないぞ! なんて失礼な奴だ! お前なんかちょっと綺麗だからって調子に乗るなよ! 成金のくせにっ! 金しかないくせにっ!」
「そうよ! 病院なんて行くもんですか! 私達は侯爵令息と伯爵令嬢よ! 平民風情が! 不敬罪で処刑してやるんだからぁーー!!」
この頭のおかしな二人の叫び声に私の家族もサロンに集まってきます。お父様は心底心配して病院関係者の方にお願いしました。
「うんうん。グレイスの判断はとても正しい。いきなり人の家に前触れもなく訪問し、門番も執事も無視してサロンにまであがりこみグレイスに喧嘩を売る等、変なクスリでも飲んだか頭でもどこかに打ち付けたのだろう。検査料はリッチモンド家がお支払いするからどうぞこの二人を精密検査してあげてください。まぁ、これも何かの縁でしょう。はっはっはっは!」
お父様はとてもお優しいのよ。
「うん、僕もその意見に賛成だな。それから念の為に犯罪歴も調べた方がいいかもしれませんね。その女性もあちらの若者もとても上等な服を着ている。どこかで盗んだのでしょう。ちゃんとした家の者がこのようなことをするわけもないので犯罪者か病気でしょう。全くお気の毒なことだ。病気だとしたらとても不憫ですよ。まだ若いのに・・・・・・」
そう言いながら涙ぐむお兄様。
お母様も「神のお恵みがありますように」と言いながらハンカチを握りしめて号泣している。
「あ、お兄様。病気だとしたらリッチモンド家で雇ってあげましょう。適切な治療をしてマシになったら、頭はアレでも手は動かせるはずですから、そちらの女性には洗濯メイドの仕事を。あちらの男性には馬の世話なんてどうかしら? 靴磨きもこの間辞めたばかりですわね」と私。
「おぉ、なんて名案だ! 靴磨きなら誰でもできる。君達のことは責任もってリッチモンド家が引き受けよう」
お父様も顔を輝かせて強く頷いた。
なんて素敵な家族かしら! 私達リッチモンド家はいつもこのように皆に優しいのですわ。
病院関係者の方はリッチモンド家がお金を負担すると聞くと、満面の笑みでお父様の手を強く握りしめておっしゃいました。
「お任せください。体の隅々まで検査します。そして適切なクスリも出しましょう。それから保安員も呼びこちらで犯罪歴などもしっかりと確認させていただきます!! リッチモンド家が保証人になっていただけるのならどんな治療もいたしましょう!! 最高の医療技術で最高の医者に最高の治療をさせますからねっ!!」
とても力強く請け負っていただいて私達家族は大変満足したのでした。世界は愛に満ちていますわね?
二人の病院関係者は嫌がる女性と若者をずるずると引きずるようにして嬉しそうに去っていきました。
「ちくしょーー!! やめろぉおぉおおーー!! 俺は病気じゃねーーぞ」
「無礼者!! 私は伯爵令嬢ですわよっ!! 放してぇええぇええーー」
病院関係者の方がマッチョな理由がわかりましたわ。患者さんってあんなにも抵抗して暴れるのですものね。
「ちっ! なんでこんなに話が進まないのよっ! あんたなんて追い出してやるんだから。私はルーカス様とは結婚を誓い合った仲なのよ!」
イライラと怒りで顔を赤くしている女性に私はため息をつく。
(可哀想に……おっしゃっていることがめちゃくちゃですわ。やはり病院に連れて行ってもらわないとね)
そう思っているとまたもやリッチモンド家に侵入者がやって来ました。
「おい、俺を金で買うような真似をして!恥ずかしくないのか?」
今度は男性で私より年下に見える、やけに威張った態度の若者です。プリプリしながら私を蔑んでいますが・・・・・・なんと薄っぺらい体なのでしょう。筋肉が足りないわ・・・・・・
「俺はお前との婚約を破棄する! だいたい爵位もない商人風情が俺と釣り合うはずがないだろう? 身の程知らずだな! 俺はそこにいるエミリーと恋仲なんだ!」
と得意満面でそう宣言したのでした。
(困りましたね、また患者さんが増えましたわ。今日の精神病院は患者さんの監視が甘過ぎます。あとで意見しなければ)
侍女が病院に連絡をして、やっと病院関係者の男性が二人やって来ました。私は早速この方達のお仕事をねぎらいましたわ。
「お忙しいなか、わざわざご足労いただいてありがとうございます。いつも大変なお仕事なさっていて尊敬しますわ。ところでそちらの患者さんと思われる男女二名がリッチモンド家に押しかけてきましたのよ……あちらにいる男女です」
私はまずはこの方達に丁寧に挨拶をしてお茶とお菓子を振る舞い、この突然の侵入者のことをお話ししました。
「いきなりやって来てけんか腰でわけのわからないことをおっしゃるって、絶対病気ですわよね?」
私の問いかけに二人は真面目な顔でこくりと頷きます。
「そうですね。この二人はうちの患者ではありませんが、とりあえず一日だけ収容しておきましょう。どっちにしても災難でしたね」とても丁寧な言葉をいただいたのでした。
「おい、待て!! 俺は病院なんかに行かないぞ! なんて失礼な奴だ! お前なんかちょっと綺麗だからって調子に乗るなよ! 成金のくせにっ! 金しかないくせにっ!」
「そうよ! 病院なんて行くもんですか! 私達は侯爵令息と伯爵令嬢よ! 平民風情が! 不敬罪で処刑してやるんだからぁーー!!」
この頭のおかしな二人の叫び声に私の家族もサロンに集まってきます。お父様は心底心配して病院関係者の方にお願いしました。
「うんうん。グレイスの判断はとても正しい。いきなり人の家に前触れもなく訪問し、門番も執事も無視してサロンにまであがりこみグレイスに喧嘩を売る等、変なクスリでも飲んだか頭でもどこかに打ち付けたのだろう。検査料はリッチモンド家がお支払いするからどうぞこの二人を精密検査してあげてください。まぁ、これも何かの縁でしょう。はっはっはっは!」
お父様はとてもお優しいのよ。
「うん、僕もその意見に賛成だな。それから念の為に犯罪歴も調べた方がいいかもしれませんね。その女性もあちらの若者もとても上等な服を着ている。どこかで盗んだのでしょう。ちゃんとした家の者がこのようなことをするわけもないので犯罪者か病気でしょう。全くお気の毒なことだ。病気だとしたらとても不憫ですよ。まだ若いのに・・・・・・」
そう言いながら涙ぐむお兄様。
お母様も「神のお恵みがありますように」と言いながらハンカチを握りしめて号泣している。
「あ、お兄様。病気だとしたらリッチモンド家で雇ってあげましょう。適切な治療をしてマシになったら、頭はアレでも手は動かせるはずですから、そちらの女性には洗濯メイドの仕事を。あちらの男性には馬の世話なんてどうかしら? 靴磨きもこの間辞めたばかりですわね」と私。
「おぉ、なんて名案だ! 靴磨きなら誰でもできる。君達のことは責任もってリッチモンド家が引き受けよう」
お父様も顔を輝かせて強く頷いた。
なんて素敵な家族かしら! 私達リッチモンド家はいつもこのように皆に優しいのですわ。
病院関係者の方はリッチモンド家がお金を負担すると聞くと、満面の笑みでお父様の手を強く握りしめておっしゃいました。
「お任せください。体の隅々まで検査します。そして適切なクスリも出しましょう。それから保安員も呼びこちらで犯罪歴などもしっかりと確認させていただきます!! リッチモンド家が保証人になっていただけるのならどんな治療もいたしましょう!! 最高の医療技術で最高の医者に最高の治療をさせますからねっ!!」
とても力強く請け負っていただいて私達家族は大変満足したのでした。世界は愛に満ちていますわね?
二人の病院関係者は嫌がる女性と若者をずるずると引きずるようにして嬉しそうに去っていきました。
「ちくしょーー!! やめろぉおぉおおーー!! 俺は病気じゃねーーぞ」
「無礼者!! 私は伯爵令嬢ですわよっ!! 放してぇええぇええーー」
病院関係者の方がマッチョな理由がわかりましたわ。患者さんってあんなにも抵抗して暴れるのですものね。
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