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5,なんで、もう一個、惚れ薬を買わなかったのかしら?(レティシアside)

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 私はレティシア・パリセ男爵令嬢だ。好きで、男爵令嬢なんかに産まれたわけじゃぁないわよ。こんな末端貴族は大人になった社交界での格付けされた世界では、片隅に追いやられてしまうわ。

 でも、この貴族の学園で、いい男を捕まえて玉の輿に乗れば、そんな心配もなくなるわ。だから、私は高位貴族の嫡男を狙っていた。けれど、高位貴族達はみんな、なにかしら血が繋がっていて仲が良くて入り込む隙間がない。特にあのソフィア・ローズ公爵令嬢は一番の家柄といっていい。

 この国の王様の弟を父親に持ち、隣国の王女が母親だ。おまけに、派手な美人ときたら、女なら誰だって好きにはなれない。あの最高に素敵な王太子と恋仲で婚約寸前という話もきいた。

 あぁーー、世の中は不公平に満ちている。勉強も頑張ってみた。愛想もよくしてみた。真面目で良い子の演技をするとクラスの人気者にはなれた。けれど、そんなものにはなんの意味もない。大人になる前に、家柄のしっかりした素敵な男性を手に入れたいわ。

 玉の輿に乗れて、あの羨ましすぎるソフィア・ローズ公爵令嬢もぎゃふんと言わせられるような、なにか良い方法はないかなぁーーと思い悩んでいた。

 ある日、市井の出店で『恋のお呪い』と書いてある薬を見つけた。こんな出店で売っている薬に、凄い効果なんてあるわけがないけれど、王太子になんとかこれを飲ませたらきっと楽しいことが起こる気がした。

 そして、本当にとても愉快なことが起きたわ! なんと、あの王太子が私のものになりそう!
こんなことなら、もっとあの薬を買えば良かったわ。

 そうしたら、あのハロルドにも飲ませるのに・・・・・・最近、ソフィア・ローズ公爵令嬢をやけに庇うピアーズ侯爵家の嫡男か・・・・・・あのハロルドも手に入ったら楽しそうなのに・・・・・・。

 今日の教室はなにかいつもと違うわ。いやに、男子生徒達が騒ぐと思ったら、ソフィア・ローズ公爵令嬢が別人のようだった。あの派手な縦巻きロール髪がない・・・・・・ほとんどすっぴんに見える唇には薄いピンクのリップ? 素材がいいぶん、ハンパなく綺麗だった。おまけにシンプルなデザインのリボン一つ付いていないドレス。

 これじゃぁ、悪女に見えない・・・・・・なに、イメチェンしてんのよ?

 ロミオ様が私を素通りしてソフィア・ローズ公爵令嬢のところに行ってしまった。

 え? なんで、彼女の手を取っているの?
   
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