上 下
10 / 16

9

しおりを挟む
(国王陛下視点)

 真夜中に余を揺り起こす不届き者は誰だ? 寝ぼけながらも意識を現実に戻していくと・・・・・・目の前にロズリーヌを抱きかかえるエドガールがいた。後ろには10名ほどの精鋭部隊。

「おい、これはなんの真似だ? ロズリーヌはジュスタンの妻で懐妊しておるのだぞ?」
「懐妊は嘘です。私はジュスタン様とは”白い結婚”です」
 ロズリーヌが放った言葉に一気に目が覚めた。

 傍らには同じタイミングで目を覚ました王妃もいる。
「”白い結婚”ですって? ではなぜ子どもができたなんて嘘を?」
 小首を傾げる王妃。

「私の腹違いの妹アラベルに産ませて、私の子どもとして育てようとしたのです」

「なんですって? ジュスタンは正気なの?」

「彼はすでに正気じゃないですよ。子犬にまでヤキモチを焼きムチで打たせ、ロズリーヌは監禁していました。あいつは危険な男です」
 とエドガール。

「なんてことだ。ロズリーヌよ、夜会の場で様子がおかしかったのはそのせいか?」

 余の問いかけに頷くロズリーヌ。これはなんたる失態だ・・・・・・まさかこれほど身近にいながら、姪の危機にも気がつかなかったとは・・・・・・

「許せ、ロズリーヌ。そして我が愛する妹姫アマンディーヌよ、お前の愛娘を守ることができなんだ。きっと天国で怒っているに違いない」
 余は天を仰ぎアマンディーヌに詫びた。





 夜が明けてしばらくするとジュスタンが血相を変えて王宮にやって来る。
「大変です! 妻のロズリーヌがおりません・・・・・・いったいどこに?」
「ロズリーヌは王妃の宮におる。お前、余に偽りを申したな?」
 ジュスタンが青ざめた顔で否定し、言い訳をしながら余をまるめ込もうと必死で説明をしてきた。

「ジュスタンよ。このようなところで何を言っても無駄である。5日後に裁判を開く。そこで弁明したいことがあるのなら申せ」
「裁判? わたしは何も悪いことなどしておりません」

「ロズリーヌに対する監禁や、アラベルの子どもをロズリーヌの子どもとして育てようとしたことは重い罪になる。なぜ、こんなことをしたのだ? これでは庇いきれない」

「ロズリーヌにずっと生きていてほしかっただけです。わたしだけを見つめて、わたしだけに微笑んでほしかった」

「ジュスタンよ、お前は宰相を解任する。裁判が終わったら王都から追放だ。田舎で静かに暮らすのだ。二度とロズリーヌに近づいてならん」

「くっ・・・・・・御意」






 ジュスタン裁判の前日、シャンパトリタン辺境伯が大隊を率いて王都入りした。隣には甲冑を装着したシャンパトリタン辺境伯夫人までいる。

「息子の嫁を迎えに来ましたわ。元より亡きアマンディーヌ様とは、息子エドガールとロズリーヌ様を婚姻させようとのお約束をしておりました。それと、あのサッシャの息子ジュスタンも私が説教してさしあげに来ましたわ。監禁だなんて気持ち悪い! なにしろ、私はサッシャの妻アネモーネ様とも親友でしたからねっ!」
 女騎士の格好をしたナスタシア・シャンパトリタン辺境伯夫人は、その昔世に名を轟かせた戦姫でもあった。

 ジュスタンの罰は、かなりキツいものになりそうだ。ナスタシアは心理・精神的拷問のエキスパートでもあるのだから・・・・・・


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

心の声が聞こえる私は、婚約者から嫌われていることを知っている。

木山楽斗
恋愛
人の心の声が聞こえるカルミアは、婚約者が自分のことを嫌っていることを知っていた。 そんな婚約者といつまでも一緒にいるつもりはない。そう思っていたカルミアは、彼といつか婚約破棄すると決めていた。 ある時、カルミアは婚約者が浮気していることを心の声によって知った。 そこで、カルミアは、友人のロウィードに協力してもらい、浮気の証拠を集めて、婚約者に突きつけたのである。 こうして、カルミアは婚約破棄して、自分を嫌っている婚約者から解放されるのだった。

【完結】ドアマットに気付かない系夫の謝罪は死んだ妻には届かない 

堀 和三盆
恋愛
 一年にわたる長期出張から戻ると、愛する妻のシェルタが帰らぬ人になっていた。流行病に罹ったらしく、感染を避けるためにと火葬をされて骨になった妻は墓の下。  信じられなかった。  母を責め使用人を責めて暴れ回って、僕は自らの身に降りかかった突然の不幸を嘆いた。まだ、結婚して3年もたっていないというのに……。  そんな中。僕は遺品の整理中に隠すようにして仕舞われていた妻の日記帳を見つけてしまう。愛する妻が最後に何を考えていたのかを知る手段になるかもしれない。そんな軽い気持ちで日記を開いて戦慄した。  日記には妻がこの家に嫁いでから病に倒れるまでの――母や使用人からの壮絶な嫌がらせの数々が綴られていたのだ。

王妃はわたくしですよ

朝山みどり
恋愛
王太子のやらかしで、正妃を人質に出すことになった。正妃に選ばれたジュディは、迎えの馬車に乗って王城に行き、書類にサインした。それが結婚。 隣国からの迎えの馬車に乗って隣国に向かった。迎えに来た宰相は、ジュディに言った。 「王妃殿下、力をつけて仕返ししたらどうですか?我が帝国は寛大ですから機会をたくさんあげますよ」 『わたしを退屈から救ってくれ!楽しませてくれ』宰相の思惑通りに、ジュディは力をつけて行った。

お兄様、奥様を裏切ったツケを私に押し付けましたね。只で済むとお思いかしら?

百谷シカ
恋愛
フロリアン伯爵、つまり私の兄が赤ん坊を押し付けてきたのよ。 恋人がいたんですって。その恋人、亡くなったんですって。 で、孤児にできないけど妻が恐いから、私の私生児って事にしろですって。 「は?」 「既にバーヴァ伯爵にはお前が妊娠したと告げ、賠償金を払った」 「はっ?」 「お前の婚約は破棄されたし、お前が母親になればすべて丸く収まるんだ」 「はあっ!?」 年の離れた兄には、私より1才下の妻リヴィエラがいるの。 親の決めた結婚を受け入れてオジサンに嫁いだ、真面目なイイコなのよ。 「お兄様? 私の未来を潰した上で、共犯になれって仰るの?」 「違う。私の妹のお前にフロリアン伯爵家を守れと命じている」 なんのメリットもないご命令だけど、そこで泣いてる赤ん坊を放っておけないじゃない。 「心配する必要はない。乳母のスージーだ」 「よろしくお願い致します、ソニア様」 ピンと来たわ。 この女が兄の浮気相手、赤ん坊の生みの親だって。 舐めた事してくれちゃって……小娘だろうと、女は怒ると恐いのよ?

妹に傷物と言いふらされ、父に勘当された伯爵令嬢は男子寮の寮母となる~そしたら上位貴族のイケメンに囲まれた!?~

サイコちゃん
恋愛
伯爵令嬢ヴィオレットは魔女の剣によって下腹部に傷を受けた。すると妹ルージュが“姉は子供を産めない体になった”と嘘を言いふらす。その所為でヴィオレットは婚約者から婚約破棄され、父からは娼館行きを言い渡される。あまりの仕打ちに父と妹の秘密を暴露すると、彼女は勘当されてしまう。そしてヴィオレットは母から託された古い屋敷へ行くのだが、そこで出会った美貌の双子からここを男子寮とするように頼まれる。寮母となったヴィオレットが上位貴族の令息達と暮らしていると、ルージュが現れてこう言った。「私のために家柄の良い美青年を集めて下さいましたのね、お姉様?」しかし令息達が性悪妹を歓迎するはずがなかった――

愛してしまって、ごめんなさい

oro
恋愛
「貴様とは白い結婚を貫く。必要が無い限り、私の前に姿を現すな。」 初夜に言われたその言葉を、私は忠実に守っていました。 けれど私は赦されない人間です。 最期に貴方の視界に写ってしまうなんて。 ※全9話。 毎朝7時に更新致します。

【完結】婚約破棄される前に私は毒を呷って死にます!当然でしょう?私は王太子妃になるはずだったんですから。どの道、只ではすみません。

つくも茄子
恋愛
フリッツ王太子の婚約者が毒を呷った。 彼女は筆頭公爵家のアレクサンドラ・ウジェーヌ・ヘッセン。 なぜ、彼女は毒を自ら飲み干したのか? それは婚約者のフリッツ王太子からの婚約破棄が原因であった。 恋人の男爵令嬢を正妃にするためにアレクサンドラを罠に嵌めようとしたのだ。 その中の一人は、アレクサンドラの実弟もいた。 更に宰相の息子と近衛騎士団長の嫡男も、王太子と男爵令嬢の味方であった。 婚約者として王家の全てを知るアレクサンドラは、このまま婚約破棄が成立されればどうなるのかを知っていた。そして自分がどういう立場なのかも痛いほど理解していたのだ。 生死の境から生還したアレクサンドラが目を覚ました時には、全てが様変わりしていた。国の将来のため、必要な処置であった。 婚約破棄を宣言した王太子達のその後は、彼らが思い描いていたバラ色の人生ではなかった。 後悔、悲しみ、憎悪、果てしない負の連鎖の果てに、彼らが手にしたものとは。 「小説家になろう」「カクヨム」「ノベルバ」にも投稿しています。

私が妊娠している時に浮気ですって!? 旦那様ご覚悟宜しいですか?

ラキレスト
恋愛
 わたくしはシャーロット・サンチェス。ベネット王国の公爵令嬢で次期女公爵でございます。  旦那様とはお互いの祖父の口約束から始まり現実となった婚約で結婚致しました。結婚生活も順調に進んでわたくしは子宝にも恵まれ旦那様との子を身籠りました。  しかし、わたくしの出産が間近となった時それは起こりました……。  突然公爵邸にやってきた男爵令嬢によって告げられた事。 「私のお腹の中にはスティーブ様との子が居るんですぅ! だからスティーブ様と別れてここから出て行ってください!」  へえぇ〜、旦那様? わたくしが妊娠している時に浮気ですか? それならご覚悟は宜しいでしょうか? ※本編は完結済みです。

処理中です...