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9 ケイティ視点 / ビアス侯爵が迎えに来る
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※ケイティ視点
私はメイド達がブロッサムを襲う様子を見届けるために、こっそりと目立たない場所に隠れていた。そこからは彼女達の話し声がはっきりと聞こえたから、場面を想像して耳を澄ませていた。
カエルの鳴き声とメイド達の悲鳴、ブロッサムの落ち着いた声、それらを総合すると、どうやら犯行は失敗に終わったようだ。それにしてもメイドも言っていたけれど、あの子の話し方は上流階級の令嬢のアクセントだ。
メイドなんかじゃないかも・・・・・・これは調べる価値がありそうだわ。
翌日からメイド達はブロッサムと仲良くしだして、和気あいあいと働き出した。私が文句を言っても、パティは取り合わない。
「ブロッサムはそれほど嫌な子じゃないですよ。礼儀正しくて仕事はテキパキとできるし、他のメイド達とも仲良くやってるし」
「そうかもしれないけど、私はあの子が嫌いよ。あの子の話し方はおかしいわ。私達より上の階級の喋り方でしょう?」
私がそう言うと、パティは訳知り顔で笑った。
「きっと母親が上流階級のメイド出身で、幼い頃から練習させられたのだと思いますよぉ。綺麗な顔で上品な言葉を話せたら、良い屋敷で雇ってもらえますしね」
ユーラ侍女長もサンディメイド長も、ブロッサムにころっと騙されて、あんな子を可愛がっちゃって・・・・・・。本当に面白くないわ!
どす黒い気持ちが渦巻く。今まで私と仲の良かった侍女仲間も、なんであんな子と仲良く話すの? 私はクリスフォード様が好きなのに、あの子は横からかっさらっていくつもりなんでしょう?
なんで私の居場所を奪うの?
私の嫌いなブロッサムと仲良くする子は敵よね?
敵の味方は敵でしょう?
きっと私のことを皆であざ笑っているのよね?
☆彡 ★彡
今日は公休日だった。私は乗り合い馬車に乗り、王都近くにある「ゴールデンヴィンテージカフェ」に出かけた。そこは貴族の侍女たちが集まる優雅な場所よ。美しい庭園に囲まれた豪華な建物で、外観も内装も上品で洗練されていた。
カフェの入り口には、古いローズのつるが美しく張り巡らされ、店内は広々としており、大きな窓からは陽光が差し込み、優雅なカーテンが優しく揺れている。内装はクラシックな優雅さを演出しており、シャンデリアが天井から吊り下げられ、家具や装飾品も凝っていた。
カフェのスタッフはオシャレな制服を身にまとい、メニューには洗練された料理やスイーツ、鮮やかなフルーツを使ったドリンクが並んでいた。
カフェの一角には、侍女たちがゆったりとくつろげるエリアが設けられていて、私たちはそこで情報の共有や近況報告を行いながら、互いの絆を深めるのよ。
もちろん、お料理はそれなりの値段だけれど、私達侍女は節約してでもここに来て、贅沢な気分を味わう。自分へのご褒美というわけね。
私はここでとても有益な情報を手に入れた。彼女の名前はヨッヘンでビアス侯爵家の侍女だと名乗った。そこでは姉の結婚式の最中に妹が家出したらしいの。
名前はブロッサム。ブラウンの髪と瞳の女性だという。家族が心配して探し回っているという話も聞いた。
「その子ならターナー伯爵家にいるわよ。ビアス侯爵閣下に迎えにくるようにお伝えしてよ。とても我が儘なお嬢様だからターナー伯爵家でも困っていたのよ」
私がヨッヘンに話しかけると、彼女はニヤリと笑って言った。
「ブロッサム様を見つけた者には、謝礼をたんまり払ってくださるらしいわ。だから、二人で山分けにしましょうよ」
なんて図々しい女なの? 私が見つけたのだから、そのお金は私の物よ。そう言いたい気持ちをグッと抑えた。とにかくブロッサムさえいなくなればまた元通りの居心地の良い生活に戻れる。
※ブロッサムに視点が変わります。
メイド達が出て行ってもガマガエル達はドアのところで固まっていて、池に帰ろうとしなかった。
「もしかして、私を守ってくれるの?」
ゲコ。
ランちゃんが私のベッドの横で護衛騎士のように警戒態勢で待機してくれた。
「ありがとう」
ゲコゲコ。
ランちゃんがそこにいてくれているだけで、安心して眠れるような気がするし、きっとあのメイド達もなにもしてこないと思う。
護衛はランちゃんとガマガエル達に任せて私は眠りについた。
翌朝、目覚めるとガマガエル達はいなくなっていた。朝食前にその様子を見に行くことにする。ランちゃんとガマガエル達は池の畔の茂みで休んでいた。きっと、昨晩の活躍で疲れているのかもしれない。
「ランちゃん、おはよう」
遠慮がちに声をかけると、
ゲコ~。
ランちゃんとガマガエル達は、一斉に挨拶を返してくれたのだった。
それからは毎日、ガマちゃん達は私の部屋で交代に眠るようになった。私を守っているつもりのようで、たまにバニラもそこに加わる。
今日も起きてすぐに部屋に待機していたがまちゃんに挨拶をして、池にいるガマちゃんにも挨拶をするため、庭園に出た。
ゲコゲコ~。
ランちゃんが鳴くと、ガマガエル達も一斉に鳴き出す。何を言っているのか分からないけど、しきりに門の方角を見ていた。門の外にはたくさんの騎士が集まっていたのよ。
ふと見れば、その騎士服に縫い付けられた紋章はビアス侯爵家のものだった。
「ブロッサムーー! 私達は少しも怒っていないからね。迎えにきてあげたよ。愛しい娘よ」
門の外で、お父様が大きな声を張り上げたのだった。
私はメイド達がブロッサムを襲う様子を見届けるために、こっそりと目立たない場所に隠れていた。そこからは彼女達の話し声がはっきりと聞こえたから、場面を想像して耳を澄ませていた。
カエルの鳴き声とメイド達の悲鳴、ブロッサムの落ち着いた声、それらを総合すると、どうやら犯行は失敗に終わったようだ。それにしてもメイドも言っていたけれど、あの子の話し方は上流階級の令嬢のアクセントだ。
メイドなんかじゃないかも・・・・・・これは調べる価値がありそうだわ。
翌日からメイド達はブロッサムと仲良くしだして、和気あいあいと働き出した。私が文句を言っても、パティは取り合わない。
「ブロッサムはそれほど嫌な子じゃないですよ。礼儀正しくて仕事はテキパキとできるし、他のメイド達とも仲良くやってるし」
「そうかもしれないけど、私はあの子が嫌いよ。あの子の話し方はおかしいわ。私達より上の階級の喋り方でしょう?」
私がそう言うと、パティは訳知り顔で笑った。
「きっと母親が上流階級のメイド出身で、幼い頃から練習させられたのだと思いますよぉ。綺麗な顔で上品な言葉を話せたら、良い屋敷で雇ってもらえますしね」
ユーラ侍女長もサンディメイド長も、ブロッサムにころっと騙されて、あんな子を可愛がっちゃって・・・・・・。本当に面白くないわ!
どす黒い気持ちが渦巻く。今まで私と仲の良かった侍女仲間も、なんであんな子と仲良く話すの? 私はクリスフォード様が好きなのに、あの子は横からかっさらっていくつもりなんでしょう?
なんで私の居場所を奪うの?
私の嫌いなブロッサムと仲良くする子は敵よね?
敵の味方は敵でしょう?
きっと私のことを皆であざ笑っているのよね?
☆彡 ★彡
今日は公休日だった。私は乗り合い馬車に乗り、王都近くにある「ゴールデンヴィンテージカフェ」に出かけた。そこは貴族の侍女たちが集まる優雅な場所よ。美しい庭園に囲まれた豪華な建物で、外観も内装も上品で洗練されていた。
カフェの入り口には、古いローズのつるが美しく張り巡らされ、店内は広々としており、大きな窓からは陽光が差し込み、優雅なカーテンが優しく揺れている。内装はクラシックな優雅さを演出しており、シャンデリアが天井から吊り下げられ、家具や装飾品も凝っていた。
カフェのスタッフはオシャレな制服を身にまとい、メニューには洗練された料理やスイーツ、鮮やかなフルーツを使ったドリンクが並んでいた。
カフェの一角には、侍女たちがゆったりとくつろげるエリアが設けられていて、私たちはそこで情報の共有や近況報告を行いながら、互いの絆を深めるのよ。
もちろん、お料理はそれなりの値段だけれど、私達侍女は節約してでもここに来て、贅沢な気分を味わう。自分へのご褒美というわけね。
私はここでとても有益な情報を手に入れた。彼女の名前はヨッヘンでビアス侯爵家の侍女だと名乗った。そこでは姉の結婚式の最中に妹が家出したらしいの。
名前はブロッサム。ブラウンの髪と瞳の女性だという。家族が心配して探し回っているという話も聞いた。
「その子ならターナー伯爵家にいるわよ。ビアス侯爵閣下に迎えにくるようにお伝えしてよ。とても我が儘なお嬢様だからターナー伯爵家でも困っていたのよ」
私がヨッヘンに話しかけると、彼女はニヤリと笑って言った。
「ブロッサム様を見つけた者には、謝礼をたんまり払ってくださるらしいわ。だから、二人で山分けにしましょうよ」
なんて図々しい女なの? 私が見つけたのだから、そのお金は私の物よ。そう言いたい気持ちをグッと抑えた。とにかくブロッサムさえいなくなればまた元通りの居心地の良い生活に戻れる。
※ブロッサムに視点が変わります。
メイド達が出て行ってもガマガエル達はドアのところで固まっていて、池に帰ろうとしなかった。
「もしかして、私を守ってくれるの?」
ゲコ。
ランちゃんが私のベッドの横で護衛騎士のように警戒態勢で待機してくれた。
「ありがとう」
ゲコゲコ。
ランちゃんがそこにいてくれているだけで、安心して眠れるような気がするし、きっとあのメイド達もなにもしてこないと思う。
護衛はランちゃんとガマガエル達に任せて私は眠りについた。
翌朝、目覚めるとガマガエル達はいなくなっていた。朝食前にその様子を見に行くことにする。ランちゃんとガマガエル達は池の畔の茂みで休んでいた。きっと、昨晩の活躍で疲れているのかもしれない。
「ランちゃん、おはよう」
遠慮がちに声をかけると、
ゲコ~。
ランちゃんとガマガエル達は、一斉に挨拶を返してくれたのだった。
それからは毎日、ガマちゃん達は私の部屋で交代に眠るようになった。私を守っているつもりのようで、たまにバニラもそこに加わる。
今日も起きてすぐに部屋に待機していたがまちゃんに挨拶をして、池にいるガマちゃんにも挨拶をするため、庭園に出た。
ゲコゲコ~。
ランちゃんが鳴くと、ガマガエル達も一斉に鳴き出す。何を言っているのか分からないけど、しきりに門の方角を見ていた。門の外にはたくさんの騎士が集まっていたのよ。
ふと見れば、その騎士服に縫い付けられた紋章はビアス侯爵家のものだった。
「ブロッサムーー! 私達は少しも怒っていないからね。迎えにきてあげたよ。愛しい娘よ」
門の外で、お父様が大きな声を張り上げたのだった。
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