57 / 58
番外編
17 閑話ーその3 こずえの夫視点 / こずえ(妻)視点
しおりを挟む
ꕤ୭* 夫視点
妻が水道水を売っていたことは知らなかった。あの霊水を近所の人に、アイスぐらいの値段で分けてあげているとしか聞いていない。
俺は一流企業ではないが地元ではそこそこの会社に勤めており、役職にもついている。3人の子供も元気に育っているし妻は専業主婦だった。
「詐欺を働かなきゃいけないほど、お金に困らせていないはずだぞ!」
俺は妻に拘置所で面会するなり怒鳴った。
「だって、これから子供の教育費もかかってくるし、私だっていろいろ考えていたのよ! 少しでも子供の為にお金を稼いで良い学校にいれないといけないって・・・・・・」
妻は子供の為と言うけれど、それは表向きの話だ。
「知っているんだよ。お前のクローゼットの奥がブランド物のバッグばかりだって。お前が逮捕されてから不審に思ってお前の部屋を隅々まで見たらさ、でてくる、でてくる。いろんなものがなっ!」
子供が3人もいるのに妻のクローゼットにはブランド物の他にも、怪しいものがいっぱいあった。いつ着るんだよ? と疑問に思うほどのセクシーな下着。派手なワンピースに高価なコート。俺と出かける時にはけっして着ることのなかった服の山。
バッグの中を覗き込むと、ホストクラブの名刺が何枚も入っていた。膝から崩れ落ちて、詐欺にはしった動機が腑に落ちた。そりゃ、お金はいるよな。若い男に貢いで金持ちのマダムの振りをするのなら、水でもなんでも売りたくなるよな。
「離婚だ! 子供は俺が引き取る。お前が出所しても帰る家はないぞ! お前の実家の両親も縁を切るそうだ」
そう言い捨てると、俺は振り向くことなくその場を後にした。なにがいけなかったのかわからないよ。仕事で忙しかったし出張も頻繁にあって構ってはやれなかったが、それは家族を養う為で遊んでいたわけじゃない。
俺は家に帰って妻の物を何日もかけて処分していく。この家は売って俺は引っ越すつもりだ。こんな大きな事件になっては、とてもここには住んでいられない。
ꕤ୭*妻視点
なんで人のクローゼットを見るのよ! 夫婦であってもそこにはプライバシーがあるじゃない! それにお金がおもしろいように入ってきたから、少しお買い物しただけでホストクラブはちょっとした悪戯心だ。
そこに行けばお姫様になれて若い男がちやほやしてくれる。おもしろいゲームと同じ虚構の世界だが、楽しくてつい夫の出張のたびに通ってしまった。
「うわぁーー! ゴージャスなお姉様が来てくれて光栄です! もしかして会社経営でしょ? どう見ても女社長だもん」
そんなふうに言われてついその気になり大盤振る舞いしたら、女王様のようにかしづかれた。男達全てが私にペコペコして、綺麗な顔の男もスタイル抜群の男も全てがお金で思い通りになる。
お金は正義で神様なのよ! だから買ってくれる人がいる以上、水を売ってお金を手に入れるのは当然のことだ。『病は気から』って言うじゃない? これを飲んだり塗ったお陰で身体が改善したのなら、それは良くなるっていう思い込みがさせた奇跡なのよ。つまり、私が水を売ってあげたお陰じゃない!
なのに、なんで罪になるのよ? おかしいわよ。それから、なぜ離婚されるの? ちょっと気分転換しただけだ。夫と子供は別枠で大事な家族だから捨てるつもりはなかった。家族は私が帰るべき場所でそこは聖地だ。でも若い男はまた別な存在で、私を女として輝かせてくれるビタミン剤のようなもの。
ーー私は悪くない!! 少しも悪くないはずだ・・・・・・
けれど、私は離婚され刑務所にいる。夫も子供もいなくなって・・・・・・実家の親兄弟にも縁を切られた。もちろん、あの若い男達も遠ざかっていった。
3年後、出所した私に世間の風は冷たい。私のいる場所はもうどこにもないのだった。
妻が水道水を売っていたことは知らなかった。あの霊水を近所の人に、アイスぐらいの値段で分けてあげているとしか聞いていない。
俺は一流企業ではないが地元ではそこそこの会社に勤めており、役職にもついている。3人の子供も元気に育っているし妻は専業主婦だった。
「詐欺を働かなきゃいけないほど、お金に困らせていないはずだぞ!」
俺は妻に拘置所で面会するなり怒鳴った。
「だって、これから子供の教育費もかかってくるし、私だっていろいろ考えていたのよ! 少しでも子供の為にお金を稼いで良い学校にいれないといけないって・・・・・・」
妻は子供の為と言うけれど、それは表向きの話だ。
「知っているんだよ。お前のクローゼットの奥がブランド物のバッグばかりだって。お前が逮捕されてから不審に思ってお前の部屋を隅々まで見たらさ、でてくる、でてくる。いろんなものがなっ!」
子供が3人もいるのに妻のクローゼットにはブランド物の他にも、怪しいものがいっぱいあった。いつ着るんだよ? と疑問に思うほどのセクシーな下着。派手なワンピースに高価なコート。俺と出かける時にはけっして着ることのなかった服の山。
バッグの中を覗き込むと、ホストクラブの名刺が何枚も入っていた。膝から崩れ落ちて、詐欺にはしった動機が腑に落ちた。そりゃ、お金はいるよな。若い男に貢いで金持ちのマダムの振りをするのなら、水でもなんでも売りたくなるよな。
「離婚だ! 子供は俺が引き取る。お前が出所しても帰る家はないぞ! お前の実家の両親も縁を切るそうだ」
そう言い捨てると、俺は振り向くことなくその場を後にした。なにがいけなかったのかわからないよ。仕事で忙しかったし出張も頻繁にあって構ってはやれなかったが、それは家族を養う為で遊んでいたわけじゃない。
俺は家に帰って妻の物を何日もかけて処分していく。この家は売って俺は引っ越すつもりだ。こんな大きな事件になっては、とてもここには住んでいられない。
ꕤ୭*妻視点
なんで人のクローゼットを見るのよ! 夫婦であってもそこにはプライバシーがあるじゃない! それにお金がおもしろいように入ってきたから、少しお買い物しただけでホストクラブはちょっとした悪戯心だ。
そこに行けばお姫様になれて若い男がちやほやしてくれる。おもしろいゲームと同じ虚構の世界だが、楽しくてつい夫の出張のたびに通ってしまった。
「うわぁーー! ゴージャスなお姉様が来てくれて光栄です! もしかして会社経営でしょ? どう見ても女社長だもん」
そんなふうに言われてついその気になり大盤振る舞いしたら、女王様のようにかしづかれた。男達全てが私にペコペコして、綺麗な顔の男もスタイル抜群の男も全てがお金で思い通りになる。
お金は正義で神様なのよ! だから買ってくれる人がいる以上、水を売ってお金を手に入れるのは当然のことだ。『病は気から』って言うじゃない? これを飲んだり塗ったお陰で身体が改善したのなら、それは良くなるっていう思い込みがさせた奇跡なのよ。つまり、私が水を売ってあげたお陰じゃない!
なのに、なんで罪になるのよ? おかしいわよ。それから、なぜ離婚されるの? ちょっと気分転換しただけだ。夫と子供は別枠で大事な家族だから捨てるつもりはなかった。家族は私が帰るべき場所でそこは聖地だ。でも若い男はまた別な存在で、私を女として輝かせてくれるビタミン剤のようなもの。
ーー私は悪くない!! 少しも悪くないはずだ・・・・・・
けれど、私は離婚され刑務所にいる。夫も子供もいなくなって・・・・・・実家の親兄弟にも縁を切られた。もちろん、あの若い男達も遠ざかっていった。
3年後、出所した私に世間の風は冷たい。私のいる場所はもうどこにもないのだった。
0
お気に入りに追加
562
あなたにおすすめの小説
異世界転生したけどチートもないし、マイペースに生きていこうと思います。
碧
児童書・童話
異世界転生したものの、チートもなければ、転生特典も特になし。チート無双も冒険もしないけど、現代知識を活かしてマイペースに生きていくゆるふわ少年の日常系ストーリー。テンプレっぽくマヨネーズとか作ってみたり、書類改革や雑貨の作成、はてにはデトックス効果で治療不可の傷を癒したり……。チートもないが自重もない!料理に生産、人助け、溺愛気味の家族や可愛い婚約者らに囲まれて今日も自由に過ごします。ゆるふわ癒し系異世界ファンタジーここに開幕!
運よく生まれ変われたので、今度は思いっきり身体を動かします!
克全
児童書・童話
「第1回きずな児童書大賞」重度の心臓病のため、生まれてからずっと病院のベッドから動けなかった少年が12歳で亡くなりました。両親と両祖父母は毎日のように妾(氏神)に奇跡を願いましたが、叶えてあげられませんでした。神々の定めで、現世では奇跡を起こせなかったのです。ですが、記憶を残したまま転生させる事はできました。ほんの少しだけですが、運動が苦にならない健康な身体と神与スキルをおまけに付けてあげました。(氏神談)
悪役令嬢っぽい子に転生しました。潔く死のうとしたらなんかみんな優しくなりました。
下菊みこと
恋愛
悪役令嬢に転生したので自殺したら未遂になって、みんながごめんなさいしてきたお話。
ご都合主義のハッピーエンドのSS。
…ハッピーエンド???
小説家になろう様でも投稿しています。
救われてるのか地獄に突き進んでるのかわからない方向に行くので、読後感は保証できません。
異世界生活物語
花屋の息子
ファンタジー
目が覚めると、そこはとんでもなく時代遅れな異世界だった。転生のお約束である魔力修行どころか何も出来ない赤ちゃん時代には、流石に凹んだりもしたが俺はめげない。なんて言っても、魔法と言う素敵なファンタジーの産物がある世界なのだから・・・知っている魔法に比べると低出力なきもするが。
そんな魔法だけでどうにかなるのか???
地球での生活をしていたはずの俺は異世界転生を果たしていた。転生したオジ兄ちゃんの異世界における心機一転頑張ります的ストーリー
恋の魔眼で見つめたら
立花鏡河
児童書・童話
わたしって、空気みたいな存在だ。
目立たず、クラスに友だちもいない。
ひとりぼっちでも平気なフリしてるけど、
心のなかでは。。。
吉丸つむぎ
私立聖ネクサス学園 中等部二年
それは突然だった。
黒き魔女と出会い、わたしは手に入れた。
見つめあうだけで、相手から好意を
持たれる【魅了の魔眼】を!
地味な学園生活は一変。
学園の四人のイケメン王子たちから溺愛されまくり!
こんなの反則だって、自分でもわかってる。
だけど、胸のときめきは抑えられなくて……。
★*゚*☆*゚*★*゚*☆*゚*★
【ダンス王子】
岸 湊斗
中等部二年
いつもクールで、ダンスが得意な男の子。
魔眼の暗示で、つむぎに恋しちゃった!?
「おれ、つむぎに本気で惚れたんだ」
「つむぎの顔を曇らせるやつは許さねーよ」
★*゚*☆*゚*★*゚*☆*゚*★
【さわやか王子】
望月 葵
中等部二年
サッカー部所属のさわやかなスポーツマン。
恋のオフェンスも積極的!?
「おれ、きみの涙をぬぐえる男になりたいよ」
「吉丸さんのこと、マジで好きだよ」
★*゚*☆*゚*★*゚*☆*゚*★
【癒やし王子】
神谷 怜音
中等部一年
成績優秀で、癒やしオーラのある美少年。
無邪気な笑顔の、あざと可愛い系!?
「このコトを打ちあけたのは吉丸センパイだけです」
「ぼくのこと、怜音ってよんでくださいね」
★*゚*☆*゚*★*゚*☆*゚*★
【ドS王子】
神谷 紫音
中等部三年
怜音の兄で、美しきバンドマン。
女の子に対して、超ドS!?
「あっぶねぇな。このドジ!」
「赤い目をした女には用心しなきゃな」
★*゚*☆*゚*★*゚*☆*゚*★
【第2回きずな児童書大賞】にエントリー
しています。
※表紙絵は「イラストAC」様より、
涼木黎 様の作品をお借りしました。
恋なんて必要ないけれど
水ノ瀬 あおい
青春
恋よりバスケ。
「彼女が欲しい」と耳にする度に呆れてしまって、カップルを見ても憐れに思ってしまうセイ(小嶋誠也)。
恋に全く関心がなくて、むしろ過去の苦い経験からできれば女とは関わりたくもない。
女に無駄な時間を使うならスコアを見直してバスケのことを考えたいセイのバスケと……恋愛?
悪役令嬢に転生したおばさんは憧れの辺境伯と結ばれたい
ゆうゆう
恋愛
王子の婚約者だった侯爵令嬢はある時前世の記憶がよみがえる。
よみがえった記憶の中に今の自分が出てくる物語があったことを思い出す。
その中の自分はまさかの悪役令嬢?!
今さら、私に構わないでください
ましゅぺちーの
恋愛
愛する夫が恋をした。
彼を愛していたから、彼女を側妃に迎えるように進言した。
愛し合う二人の前では私は悪役。
幸せそうに微笑み合う二人を見て、私は彼への愛を捨てた。
しかし、夫からの愛を完全に諦めるようになると、彼の態度が少しずつ変化していって……?
タイトル変更しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる