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26 結月の嫌味なんかに負けないよっ!
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「あぁ・・・そうなんだ。えっと、じゃぁ皆で仲良くしましょうか?」
「わぁーー。嬉しい! 紬、良かったねぇ。前と違ってすごくいっぱいお友達ができそうじゃない? この子、小学生の頃はいじめられっ子で仲間外れにされていたのよぉ。友達なんか一人もいない可哀想な子だったんだからぁ」
柊君も凛さんも、どう反応していいのかわからないみたいだった。
「ふーーん。私も小学生の頃さ、いじめられっ子で仲間外れにされていたわよぉ。んで、そんなことを得意そうに言いふらす子って、大抵その時に虐めていたいじめっ子なんだよねぇ。あ、私は渡辺楓よ。佐々木さんの斜め後ろの席だわ。よろしくね」
私に、にっこりした楓さんは背筋のぴしっとしたメガネをかけた優等生タイプだ。
「え? ひどぉーーい! 楓さんたらジョークがきついわぁーー」
結月は少しだけ目を泳がせている。
「え? 別にジョークじゃないけど?」
「あっは、まぁ、皆で仲良くしましょうよ、ね! これからよろしくお願いします」
凛さんは皆をとりなすように、にこやかに微笑んだ。
「はぁい。私とも仲良くしてね。私は木村陽葵。佐々木さんの斜め前の席よ!」
またまた飛び入り参加の陽葵さんが、私に敬礼のような手つきで挨拶してきたのだった。
ꕤ୭*
自宅に帰ると聡子さんもそこにはいて、礼子さんやお祖母ちゃんにも学校であったとを全部話したんだ。
「すごく上手な子ね、結月ちゃんって。こっちから否定しづらいことを皆の前で話せるって底意地悪い子だわぁ」
聡子さんはそう言いながら、おせんべいをバリッと割った。
「昔からそういうタイプの子っているよねぇ? 自分から『お母さんに捨てられた』なんて言えるはずないよ!なんて糞意地悪な子だろうね? 真理子にそっくりだよ。あの親子には、変につきまとわれて困ってしまうねぇ」
お祖母ちゃんは首を振りながらため息をついた。
「あら、それでいいわよ! 紬ちゃん、否定なんかしなくていいわ! 『私が礼子叔母さんをお母さんに選んだんだよ!』って言ってやればいいわ。間違っていないわ。お金があるからって表現をするからひどく勝手な子に聞こえるけれど、実際は違うんだから……」
私は礼子さん達に話を聞いてもらって少しだけ気が晴れたけれど、まだじめっと湿ったように心は重い。
そんな時に私の携帯が鳴って、莉子ちゃんの元気な声が聞こえた。私は莉子ちゃんだけには、勇気をだしてこの経緯を話した。
「ふん! 私がその場にいたらその結月って子を吹っ飛ばしてたやったのにぃーー! ったく柊君のバカは、なんでなんも言わんの? 女子のそういう嫌味って男ってば鈍感かよ? それとも柊君だけなのかな? 暖君に私から言っとくよ。もっと紬ちゃんを守れって、伝えるようにさ。ほんとにヘタレなんだか……鈍いんだか、わからないねぇ。いい? 紬ちゃん……そういうときにはね……わかった? できるよね?」
「あっはは。うん、できるよ!」
「そうよ! やったれ! 紬ちゃん、その瞬間は女優になるのよ?」
「はぁい!」
私は元気よく返事をしてその夜は、もう明日の心配なんかしなかった。
ꕤ୭*
翌日は、ちょっとだけ小雨の降る肌寒い日だった。私の服は白いブラウスとベージュのスカートにグレーのカーディガン。すごく無難だけど、ブラウスにもスカートにも裾や袖に上品な小花の刺繍があった。
高校の教室に着くと早速、凛さんがニコニコして寄ってきた。
「おはよー! 紬さん」
昨日は佐々木さんだったけれど今日は紬さんって呼んでくれた。
「おはよー!凛さん」
私がにっこりすると凛さんも同じくにっこり。同じような空気を感じた。仲間的なものって言えばいいのかな。きっと自然と仲良くできちゃう感じ。
「うわぁーー。その服、素敵。地味な色だけれど、もしかして有名ブランドの×××のブラウスじゃない? これってすっごい高いんだよね? さすが私達のお母さんを捨てて、お金持ちの礼子叔母さんちの子になっただけあるねぇ?」
「そうだよ! 私は礼子さんを母親に選んだよ! でもね、礼子叔母さんが例え貧乏でも選んだよ。だって、礼子さんは本当に私を可愛がってくれるから」
そして、私は悲しそうな顔つきで遠い目をしたんだ。莉子ちゃんが言ったように『独りぼっちで留守番させられた子犬の目』を演技した。
でも、わざわざ演技する必要はなかったんだ。だって、『前のお母さん』との思い出を少し考えただけで涙がにじんできたから。
悲しかったことや、酷い言葉を投げつけられた時の気持ちは忘れない。
その表情を見た時に、周りの子は莉子ちゃんが言ったように察してくれた。
「紬ちゃん、あっちで話そう」
まずは柊君が結月から私を引き離し、凛さん、楓さんと陽葵さんもあとに続く。
「紬ちゃんを虐めようって気持ちは捨てたほうがいいよ。自分に倍になってかえってくるよ」
「倍になって?……あっはは! そんなこと紬ができるわけないじゃない?……」
「僕がするよ。だって、僕たちは親が認めた許婚だもん」
「きゃぁーー」
「うわぉ!早くもここにカップルが!」
「うわぁーー、素敵!」
入学二日目で超有名人になれた私なのだった。そのおかげで私は”柊君の嫁”とあだ名がつけられた。
それは仲のいい子達からは優しい響きで発音され、一部の私を嫌う人達からは意地悪な発音で表現されたのだった。
でも、誰からも好かれるなんて無理なんだよね。だって、自分も相手も生きていて人間なんだもん!
「わぁーー。嬉しい! 紬、良かったねぇ。前と違ってすごくいっぱいお友達ができそうじゃない? この子、小学生の頃はいじめられっ子で仲間外れにされていたのよぉ。友達なんか一人もいない可哀想な子だったんだからぁ」
柊君も凛さんも、どう反応していいのかわからないみたいだった。
「ふーーん。私も小学生の頃さ、いじめられっ子で仲間外れにされていたわよぉ。んで、そんなことを得意そうに言いふらす子って、大抵その時に虐めていたいじめっ子なんだよねぇ。あ、私は渡辺楓よ。佐々木さんの斜め後ろの席だわ。よろしくね」
私に、にっこりした楓さんは背筋のぴしっとしたメガネをかけた優等生タイプだ。
「え? ひどぉーーい! 楓さんたらジョークがきついわぁーー」
結月は少しだけ目を泳がせている。
「え? 別にジョークじゃないけど?」
「あっは、まぁ、皆で仲良くしましょうよ、ね! これからよろしくお願いします」
凛さんは皆をとりなすように、にこやかに微笑んだ。
「はぁい。私とも仲良くしてね。私は木村陽葵。佐々木さんの斜め前の席よ!」
またまた飛び入り参加の陽葵さんが、私に敬礼のような手つきで挨拶してきたのだった。
ꕤ୭*
自宅に帰ると聡子さんもそこにはいて、礼子さんやお祖母ちゃんにも学校であったとを全部話したんだ。
「すごく上手な子ね、結月ちゃんって。こっちから否定しづらいことを皆の前で話せるって底意地悪い子だわぁ」
聡子さんはそう言いながら、おせんべいをバリッと割った。
「昔からそういうタイプの子っているよねぇ? 自分から『お母さんに捨てられた』なんて言えるはずないよ!なんて糞意地悪な子だろうね? 真理子にそっくりだよ。あの親子には、変につきまとわれて困ってしまうねぇ」
お祖母ちゃんは首を振りながらため息をついた。
「あら、それでいいわよ! 紬ちゃん、否定なんかしなくていいわ! 『私が礼子叔母さんをお母さんに選んだんだよ!』って言ってやればいいわ。間違っていないわ。お金があるからって表現をするからひどく勝手な子に聞こえるけれど、実際は違うんだから……」
私は礼子さん達に話を聞いてもらって少しだけ気が晴れたけれど、まだじめっと湿ったように心は重い。
そんな時に私の携帯が鳴って、莉子ちゃんの元気な声が聞こえた。私は莉子ちゃんだけには、勇気をだしてこの経緯を話した。
「ふん! 私がその場にいたらその結月って子を吹っ飛ばしてたやったのにぃーー! ったく柊君のバカは、なんでなんも言わんの? 女子のそういう嫌味って男ってば鈍感かよ? それとも柊君だけなのかな? 暖君に私から言っとくよ。もっと紬ちゃんを守れって、伝えるようにさ。ほんとにヘタレなんだか……鈍いんだか、わからないねぇ。いい? 紬ちゃん……そういうときにはね……わかった? できるよね?」
「あっはは。うん、できるよ!」
「そうよ! やったれ! 紬ちゃん、その瞬間は女優になるのよ?」
「はぁい!」
私は元気よく返事をしてその夜は、もう明日の心配なんかしなかった。
ꕤ୭*
翌日は、ちょっとだけ小雨の降る肌寒い日だった。私の服は白いブラウスとベージュのスカートにグレーのカーディガン。すごく無難だけど、ブラウスにもスカートにも裾や袖に上品な小花の刺繍があった。
高校の教室に着くと早速、凛さんがニコニコして寄ってきた。
「おはよー! 紬さん」
昨日は佐々木さんだったけれど今日は紬さんって呼んでくれた。
「おはよー!凛さん」
私がにっこりすると凛さんも同じくにっこり。同じような空気を感じた。仲間的なものって言えばいいのかな。きっと自然と仲良くできちゃう感じ。
「うわぁーー。その服、素敵。地味な色だけれど、もしかして有名ブランドの×××のブラウスじゃない? これってすっごい高いんだよね? さすが私達のお母さんを捨てて、お金持ちの礼子叔母さんちの子になっただけあるねぇ?」
「そうだよ! 私は礼子さんを母親に選んだよ! でもね、礼子叔母さんが例え貧乏でも選んだよ。だって、礼子さんは本当に私を可愛がってくれるから」
そして、私は悲しそうな顔つきで遠い目をしたんだ。莉子ちゃんが言ったように『独りぼっちで留守番させられた子犬の目』を演技した。
でも、わざわざ演技する必要はなかったんだ。だって、『前のお母さん』との思い出を少し考えただけで涙がにじんできたから。
悲しかったことや、酷い言葉を投げつけられた時の気持ちは忘れない。
その表情を見た時に、周りの子は莉子ちゃんが言ったように察してくれた。
「紬ちゃん、あっちで話そう」
まずは柊君が結月から私を引き離し、凛さん、楓さんと陽葵さんもあとに続く。
「紬ちゃんを虐めようって気持ちは捨てたほうがいいよ。自分に倍になってかえってくるよ」
「倍になって?……あっはは! そんなこと紬ができるわけないじゃない?……」
「僕がするよ。だって、僕たちは親が認めた許婚だもん」
「きゃぁーー」
「うわぉ!早くもここにカップルが!」
「うわぁーー、素敵!」
入学二日目で超有名人になれた私なのだった。そのおかげで私は”柊君の嫁”とあだ名がつけられた。
それは仲のいい子達からは優しい響きで発音され、一部の私を嫌う人達からは意地悪な発音で表現されたのだった。
でも、誰からも好かれるなんて無理なんだよね。だって、自分も相手も生きていて人間なんだもん!
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