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王宮の舞踏会

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社交界で、今、最も話題をさらっているのは、ミラー公爵夫人だった。

あの有名な学園を卒業して5年ぶりに出席する今日の舞踏会はミラー公爵夫人のお披露目のようなものでもあった。

豪奢な馬車が並ぶなか、ひときわ贅を尽くした馬車が王宮に到着した。

ミラー侯爵家の紋章が刻印された馬車が王宮の前にのりいれると、すべての馬車は道を譲り、馬車から降りていた者は膝をおり礼の姿勢をとった。

ミラー公爵は王家の血筋を最も濃くひく高貴な家柄なので、他の貴族とは一線をひいている別格扱いだった。

キラキラ光る金髪の美丈夫がまず馬車から優雅に降りてきた。

そのあとに、艶やかな濃いプラチナブロンドの髪を優雅に結った美女が降りてきた。

瞳は灰色というよりは、やはりシルバーがかった青みのある憂いをたたえ、すっとした肢体は百合の花のように凜とした上品さと気高さが感じられた。

馬車のなかからその様子を見ていた者たちは驚嘆の声をあげた。





舞踏会の開かれるホールでは、身分の高いものが最後に入場するので貴族たちが全て入ったあとから

ミラー公爵夫妻は入場する。

背の高い、すらりとしたカップルがはいってくると、全ての美男美女のカップルが一瞬にしてかすんでしまう。

「まるで、神話のなかの女神様と男神様のようですわねーあの優美なお姿!!あのように美しく成長なさるなんて誰が思ったでしょう?」

「全くですわ。あの立ち居振る舞い、完璧なうえに王妃様より気品がありませんこと?」

「まずいですわ!ご挨拶に並ばないと‥‥でも、お声をかけていただけなかったらどうしましょう」

「あら、あなたはミラー公爵夫人にずいぶん意地悪を言ったのでしょう?ばかなことをしたわねぇー
ご覧なさいな、もう社交界の女王様のように中心にいらっしゃるわ!!私、申し訳ないですけれど今後あなたとはお付き合いできませんわ」

あわただしく、貴婦人たちがミラー公爵夫人の前で続々と膝を折ると、ミラー公爵夫人が艶やかに微笑んだ。

声をかけられた者は歓喜し、かけられなかった者は恥ずかしさにいたたまれない思いをしている。







王や王妃が入場するとすぐ、ダンスがはじまり、ミラー公爵夫妻の優雅すぎる踊りにみな踊るのをやめてただみとれていた。


王妃に呼ばれたミラー公爵夫人は和やかに王女たちとも会話し、すっかり気に入られていた。
他国から来た貴族ともその国の言葉でウイットのとんだ会話を楽しみ、要人の間を優雅に渡り歩くミラー公爵夫人は誰が見てもこの場の中心であった。





「ミラー公爵夫人に睨まれたら社交界では生きていけない」

以降、ミラ-公爵夫人は社交界の大輪の薔薇として語り継がれることになる。





「そういえば、ワイアット侯爵家は断絶したらしいですわねぇーーどうしてかしら?」

「さぁー詳しいことは知りませんわ。でも、怒りをかってはいけない王よりも最も恐ろしい方を敵に回したとか‥‥

って」


「え?なんて恐ろしい‥‥それってどなたのことですか?」


「さぁーー知りませんわ。ただ、ケイリー・ワイアットはミラー公爵夫人を一番いじめていたんじゃないかしら」

「‥‥」

「‥‥」




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