3 / 9
楽しい学園生活とうすっぺらい手紙
しおりを挟む
私は今、かの有名な女子学園にいる。
学園のどこもかしこもすごく豪華で優美だった。
学園長は、光り輝くほど美しく麗しい美女だった。
私はまぶしくてつい目を伏せてしまった。
私にはない圧倒的な美しさ、金髪に黄金の瞳の美女の学園長は私を叱りながら長い細い棒で背中を叩いた。
あまり痛くないけど衝撃音がすごい特殊な棒みたい。
私はびくっと背筋が伸びて自然と顔を上に向けた。
「そう、貴女に必要なのは、まっすぐに上を向く自信よ?背筋を伸ばして自分が誰よりも魅力的だと信じなさい!
女の美しさはね、髪や瞳の色だけで決まるものではないわ。5年かけて貴女を誰にも負けないほどの美女にしてあげる。男がすべてひざまづくようなね?」
「えっと、私は男性みんなにひざまづかれたいんじゃありません。私だけを愛してくれる誠実な素敵な男性一人にひざまづいてほしいんです」
「うふ、乙女ねぇー。いいわ、あなただけを見つめてくれる最高の男にひざまづかせるようにしてあげましょう?覚悟はよくて?この学園の授業は厳しいわよ?」
「望むところです!だって、私、猫から人間の女性になりたいのですもの!」
「猫ねぇ?まぁ、猫でもいいのよ。極上の毛並みのつやつやのお利口な猫ちゃんになりましょう」
☆
五カ国語の授業に、各国の歴史、経済学に政治学。
ダンスに社交術、女性同士の嫌みの流し方、圧倒的な存在感をだすための会話の間の取り方。
美容には特に多くの時間が使われた。
まずは規則正しい食事、水分の適切な取り方、毎日のトレーニングと一流の講師たちから教わるお肌と髪の手入れ。
毎日、行われる全身のマッサージと全身美白パック、髪は真珠の粉とオリーブ油でパックされ、一日おきに睫毛には育毛剤がぬられた。
爪には常に桜色になる花の色素が溶け出した香油を塗ると、徐々に染まっていき手を洗っても爪にはピンクのつやつやした光沢が残った。
お化粧の仕方も、私に最もあうやり方で‥‥すべてが私のために‥‥
同級生と会うことも在学生とも会うこともない3年間はひたすら自分磨きの日々だった。
ドレスは私の背の高さをより強調するかのようなシンプルな身体の線にそったデザインが選ばれた。
常に背筋は伸ばし、高慢なほど顎はツンとあげなさい!と言われた。
あんなに色あせた灰色の、ぱさついていた髪が今では、キラキラ光るまっすぐな濃いシルバーにしかみえない、しかもきらきらと輝いている。
睫毛は長く、瞳の色は灰色ではなく、今や髪の色と同じく進化を遂げたようだ。濃い銀色の瞳になり、少し青みがかっていて神秘的な色合いになっていた。
体つきは、女性らしく胸は豊かに、腰は細く、手足はすんなりと長く背が高くゴージャスで気品さえ漂わせる。
学園長は私に満足そうにほほえんだ。
「どう?すばらしい美女になったでしょ?これが本来の貴女。猫扱いする男を捨てる準備ができたわね?」
私は、口元に微笑をうかべた。
☆
残りの2年間はこの学園の生徒たちと初めて顔をあわせて社交術の実践訓練!
これがけっこう楽しかったの!
隣国のカロリーネ王女とそのまた隣の国の大富豪のリリアン皇女とは大親友になったし、海を挟んだお向かいの国のアレクシス王女とも仲はいいし、いろいろな国の言葉でおしゃべりしたり喧嘩したりで刺激的だった。
そして私達はさらに容姿を磨いていった。
髪はさらにきらめくように、瞳はさらに深く澄むように、胸はさらに豊かになるように腰はさらにくびれるように‥‥
私は胸がぺっちゃんこだったから、ここまで豊かになるなんて魔法だと思っている。
私は一度、学園長に聞いてみたことがある。
これって、魔法の力が働いていませんか?って
学園長はこうおっしゃった。
「魔法は、はるか昔に滅んだけれど、今でも私たちのなかに潜んでいると思うわ。努力しだいで自分が望んだ者になれるという魔法よ?素敵なことね?」
そうなのかなぁ?
噂だとこの学園長はこの世に生き残った最後の魔女って異名があるけど‥‥
でも、私は精一杯がんばった!
ご褒美は今の私だ。
もうけっして灰かぶり姫なんて言われない。
☆
合計5年間の私の留学は穏やかに豊かに優雅に王女たちとの友情を育みながら終わったのだった。
特に仲の良かったカロリーヌ王女やリリアン皇女には必ず遊びに来るようにと言われ、夫のことを話したら、そんなバカは捨てて自分の国にくるようにと執拗に勧められた。
なんで、旦那様がバカ呼ばわりされているのかって?
それは毎月私に届いていた手紙が原因なの。
素敵な愛人ができました、とか、かわいい恋人ができました、とか
猫のミミである私にいちいち報告してきて最後のしめくくりがこの言葉だったわ。
でも、君は大事な僕の猫だから絶対捨てないよ?
正妻の公爵夫人として、ずっと飼っていてあげるから安心して?
こんな手紙が毎月1通だけ届いた。
最初は悲しかったけれど、5年もこの内容だと途中からはあきれ果ててなにも感じなくなっていた。
毎月変わる恋人たち。
それとも同時並行なのかな?
だとしたら、私の旦那様にはすごい数の愛人と恋人がいることになる。
あれだけ、背も高く筋肉質な身体に美しい顔の男性だもの、まして筆頭公爵家で大富豪。
モテないほうがおかしいものね?
旦那様はきっと愛人をいっぱいお屋敷に住まわせているに違いない。
学園のどこもかしこもすごく豪華で優美だった。
学園長は、光り輝くほど美しく麗しい美女だった。
私はまぶしくてつい目を伏せてしまった。
私にはない圧倒的な美しさ、金髪に黄金の瞳の美女の学園長は私を叱りながら長い細い棒で背中を叩いた。
あまり痛くないけど衝撃音がすごい特殊な棒みたい。
私はびくっと背筋が伸びて自然と顔を上に向けた。
「そう、貴女に必要なのは、まっすぐに上を向く自信よ?背筋を伸ばして自分が誰よりも魅力的だと信じなさい!
女の美しさはね、髪や瞳の色だけで決まるものではないわ。5年かけて貴女を誰にも負けないほどの美女にしてあげる。男がすべてひざまづくようなね?」
「えっと、私は男性みんなにひざまづかれたいんじゃありません。私だけを愛してくれる誠実な素敵な男性一人にひざまづいてほしいんです」
「うふ、乙女ねぇー。いいわ、あなただけを見つめてくれる最高の男にひざまづかせるようにしてあげましょう?覚悟はよくて?この学園の授業は厳しいわよ?」
「望むところです!だって、私、猫から人間の女性になりたいのですもの!」
「猫ねぇ?まぁ、猫でもいいのよ。極上の毛並みのつやつやのお利口な猫ちゃんになりましょう」
☆
五カ国語の授業に、各国の歴史、経済学に政治学。
ダンスに社交術、女性同士の嫌みの流し方、圧倒的な存在感をだすための会話の間の取り方。
美容には特に多くの時間が使われた。
まずは規則正しい食事、水分の適切な取り方、毎日のトレーニングと一流の講師たちから教わるお肌と髪の手入れ。
毎日、行われる全身のマッサージと全身美白パック、髪は真珠の粉とオリーブ油でパックされ、一日おきに睫毛には育毛剤がぬられた。
爪には常に桜色になる花の色素が溶け出した香油を塗ると、徐々に染まっていき手を洗っても爪にはピンクのつやつやした光沢が残った。
お化粧の仕方も、私に最もあうやり方で‥‥すべてが私のために‥‥
同級生と会うことも在学生とも会うこともない3年間はひたすら自分磨きの日々だった。
ドレスは私の背の高さをより強調するかのようなシンプルな身体の線にそったデザインが選ばれた。
常に背筋は伸ばし、高慢なほど顎はツンとあげなさい!と言われた。
あんなに色あせた灰色の、ぱさついていた髪が今では、キラキラ光るまっすぐな濃いシルバーにしかみえない、しかもきらきらと輝いている。
睫毛は長く、瞳の色は灰色ではなく、今や髪の色と同じく進化を遂げたようだ。濃い銀色の瞳になり、少し青みがかっていて神秘的な色合いになっていた。
体つきは、女性らしく胸は豊かに、腰は細く、手足はすんなりと長く背が高くゴージャスで気品さえ漂わせる。
学園長は私に満足そうにほほえんだ。
「どう?すばらしい美女になったでしょ?これが本来の貴女。猫扱いする男を捨てる準備ができたわね?」
私は、口元に微笑をうかべた。
☆
残りの2年間はこの学園の生徒たちと初めて顔をあわせて社交術の実践訓練!
これがけっこう楽しかったの!
隣国のカロリーネ王女とそのまた隣の国の大富豪のリリアン皇女とは大親友になったし、海を挟んだお向かいの国のアレクシス王女とも仲はいいし、いろいろな国の言葉でおしゃべりしたり喧嘩したりで刺激的だった。
そして私達はさらに容姿を磨いていった。
髪はさらにきらめくように、瞳はさらに深く澄むように、胸はさらに豊かになるように腰はさらにくびれるように‥‥
私は胸がぺっちゃんこだったから、ここまで豊かになるなんて魔法だと思っている。
私は一度、学園長に聞いてみたことがある。
これって、魔法の力が働いていませんか?って
学園長はこうおっしゃった。
「魔法は、はるか昔に滅んだけれど、今でも私たちのなかに潜んでいると思うわ。努力しだいで自分が望んだ者になれるという魔法よ?素敵なことね?」
そうなのかなぁ?
噂だとこの学園長はこの世に生き残った最後の魔女って異名があるけど‥‥
でも、私は精一杯がんばった!
ご褒美は今の私だ。
もうけっして灰かぶり姫なんて言われない。
☆
合計5年間の私の留学は穏やかに豊かに優雅に王女たちとの友情を育みながら終わったのだった。
特に仲の良かったカロリーヌ王女やリリアン皇女には必ず遊びに来るようにと言われ、夫のことを話したら、そんなバカは捨てて自分の国にくるようにと執拗に勧められた。
なんで、旦那様がバカ呼ばわりされているのかって?
それは毎月私に届いていた手紙が原因なの。
素敵な愛人ができました、とか、かわいい恋人ができました、とか
猫のミミである私にいちいち報告してきて最後のしめくくりがこの言葉だったわ。
でも、君は大事な僕の猫だから絶対捨てないよ?
正妻の公爵夫人として、ずっと飼っていてあげるから安心して?
こんな手紙が毎月1通だけ届いた。
最初は悲しかったけれど、5年もこの内容だと途中からはあきれ果ててなにも感じなくなっていた。
毎月変わる恋人たち。
それとも同時並行なのかな?
だとしたら、私の旦那様にはすごい数の愛人と恋人がいることになる。
あれだけ、背も高く筋肉質な身体に美しい顔の男性だもの、まして筆頭公爵家で大富豪。
モテないほうがおかしいものね?
旦那様はきっと愛人をいっぱいお屋敷に住まわせているに違いない。
9
お気に入りに追加
999
あなたにおすすめの小説
王太子殿下の想い人が騎士団長だと知った私は、張り切って王太子殿下と婚約することにしました!
奏音 美都
恋愛
ソリティア男爵令嬢である私、イリアは舞踏会場を離れてバルコニーで涼んでいると、そこに王太子殿下の逢引き現場を目撃してしまいました。
そのお相手は……ロワール騎士団長様でした。
あぁ、なんてことでしょう……
こんな、こんなのって……尊すぎますわ!!
腹黒王子は、食べ頃を待っている
月密
恋愛
侯爵令嬢のアリシア・ヴェルネがまだ五歳の時、自国の王太子であるリーンハルトと出会った。そしてその僅か一秒後ーー彼から跪かれ結婚を申し込まれる。幼いアリシアは思わず頷いてしまい、それから十三年間彼からの溺愛ならぬ執愛が止まらない。「ハンカチを拾って頂いただけなんです!」それなのに浮気だと言われてしまいーー「悪い子にはお仕置きをしないとね」また今日も彼から淫らなお仕置きをされてーー……。
【完結】傷物令嬢は近衛騎士団長に同情されて……溺愛されすぎです。
早稲 アカ
恋愛
王太子殿下との婚約から洩れてしまった伯爵令嬢のセーリーヌ。
宮廷の大広間で突然現れた賊に襲われた彼女は、殿下をかばって大けがを負ってしまう。
彼女に同情した近衛騎士団長のアドニス侯爵は熱心にお見舞いをしてくれるのだが、その熱意がセーリーヌの折れそうな心まで癒していく。
加えて、セーリーヌを振ったはずの王太子殿下が、親密な二人に絡んできて、ややこしい展開になり……。
果たして、セーリーヌとアドニス侯爵の関係はどうなるのでしょう?
【R18】殿下!そこは舐めてイイところじゃありません! 〜悪役令嬢に転生したけど元潔癖症の王子に溺愛されてます〜
茅野ガク
恋愛
予想外に起きたイベントでなんとか王太子を救おうとしたら、彼に執着されることになった悪役令嬢の話。
☆他サイトにも投稿しています
【R18】ヤンデレ侯爵は婚約者を愛し過ぎている
京佳
恋愛
非の打ち所がない完璧な婚約者クリスに劣等感を抱くラミカ。クリスに淡い恋心を抱いてはいるものの素直になれないラミカはクリスを避けていた。しかし当のクリスはラミカを異常な程に愛していて絶対に手放すつもりは無い。「僕がどれだけラミカを愛しているのか君の身体に教えてあげるね?」
完璧ヤンデレ美形侯爵
捕食される無自覚美少女
ゆるゆる設定
【R18】悪役令嬢を犯して罪を償わせ性奴隷にしたが、それは冤罪でヒロインが黒幕なので犯して改心させることにした。
白濁壺
恋愛
悪役令嬢であるベラロルカの数々の悪行の罪を償わせようとロミリオは単身公爵家にむかう。警備の目を潜り抜け、寝室に入ったロミリオはベラロルカを犯すが……。
悪役令嬢は王太子の妻~毎日溺愛と狂愛の狭間で~
一ノ瀬 彩音
恋愛
悪役令嬢は王太子の妻になると毎日溺愛と狂愛を捧げられ、
快楽漬けの日々を過ごすことになる!
そしてその快感が忘れられなくなった彼女は自ら夫を求めるようになり……!?
※この物語はフィクションです。
R18作品ですので性描写など苦手なお方や未成年のお方はご遠慮下さい。
《R18短編》優しい婚約者の素顔
あみにあ
恋愛
私の婚約者は、ずっと昔からお兄様と慕っていた彼。
優しくて、面白くて、頼りになって、甘えさせてくれるお兄様が好き。
それに文武両道、品行方正、眉目秀麗、令嬢たちのあこがれの存在。
そんなお兄様と婚約出来て、不平不満なんてあるはずない。
そうわかっているはずなのに、結婚が近づくにつれて何だか胸がモヤモヤするの。
そんな暗い気持ちの正体を教えてくれたのは―――――。
※6000字程度で、サクサクと読める短編小説です。
※無理矢理な描写がございます、苦手な方はご注意下さい。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる