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レイラは人間になりたい!
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私はレイラ・サラマンダ男爵令嬢で、貧弱な身体と灰色の髪と灰色の瞳の冴えない少女だ。
生まれた時から両親には、容姿のことで諦められていた。
この国でもてはやされるのは、金髪で蒼い瞳と、銀髪でアメジストの瞳をもつ美男美女だけよ。
私は顔立ちはそこそこ整っていたが、くすんだような灰色の髪と陰気な灰色の瞳で少しも綺麗に見えなかった。
身体つきも、背ばかりヒョロヒョロ伸びて痩せぎすで、およそこの国の美の基準とはかけ離れていた。
「レイラ、うちはそれほど裕福でないし、貴女の器量でまともな貴族に嫁ぐのは無理だわ。とにかく勉強なさい!優秀であればいい家柄の子女の家庭教師として生きていけるわ」
お母様は私に冷たく言った。
「お母様、わかりました。努力します」
だから、結婚は諦めていて、勉強ばかりしていた。
☆
13歳になったときに、金髪のキラキラした男性がサラマンダ男爵家にやってきた。
「やっと、見つけたよ!ミミ、こんな少女に生まれ変わっていたなんて。気がついてあげれなくてごめん」
私は急に抱きつかれそのまま両親の前でお姫様抱っこされて、あっという間に彼の妻になっていた!
「お母様、私はレイモンド公爵様の昔飼っていた猫のミミじゃないと思います。いくら痩せぎすで灰色のシャム猫に似ているからって‥‥猫のかわりに結婚するなんてあんまりです!」
「しっ!お黙りなさい。あなたのように勉強しか取り柄がない子が公爵夫人になれるのよ。猫のふりでも犬のふりでも喜んでしなさい!没落寸前だったサラマンダ男爵家もこれで安泰というものだわ。いいこと?絶対に公爵様には逆らってはダメよ?」
もちろん逆らえるはずもない。
レイモンド様は私より5歳も年上だし、まだ若いのに宰相様の地位を約束されているやり手の優秀な貴公子だった。
猫のミミか‥‥猫に対する罪滅ぼしなら他でやってくれればいいのに‥‥
飼い猫に似ている女性を探して結婚するなんて意味不明だし変な人だ‥‥
私、もしかしたら首輪をつけられて、おまけに鈴までつけられてキャットフードを食べさせられるのかも!
絶望しか感じなかった‥‥
☆
13歳で18歳のまばゆいぐらい美しい貴公子の妻になった私は社交界の女性たちのかっこうの餌食だった。
舞踏会に行けば、不釣り合いだと失笑され、ばかにされ、嫌みを言われた。
レイモンド様がいるときは、にこやかなご婦人たちが、いなくなると途端に意地悪を言い始めるのが辛かった。
「ねぇ、レイラ様。あなた、猫に似てるからってプロポーズされたって本当なの?冗談でしょう?そんなふざけた理由で結婚する男性なんていやしないわ。子供のくせに一体どんな手をつかったのかしらぁーーー」
「猫って!そもそもなんで猫なのかしら?レイモンド公爵は猫好きなのかしら?なら私の銀髪で猫のような大きな瞳ならわかるけれど‥‥ただの灰かぶり姫じゃぁねぇーー」
特にケイリー・ワイアット侯爵令嬢はいつも辛辣な言葉を私に投げつける。
なんとでも言ってよ。私だってわからないよ。
なんで公爵夫人に私がなってるのかなんて!
☆
つまり、私は社交界きっての美男子レイモンド・ミラー公爵の妻になり、すごく幸せじゃぁない!
人って身の丈に合った幸せってあるはずでしょ?
こんなみすぼらしい私があんな美丈夫と一緒になっていいわけはないのは自分でも自覚していた。
だって、私、全然女性としては愛されていないのに‥‥
舞踏会の帰りの馬車で物思いにふけっているとレイモンド様が深みのある優しい声で聞いてきた。
「レイラ?どうした?気分でも悪いのか?」
「いいえ。なんでもないんです」
上目遣いで旦那様を見つめるとにっこりと笑い返される。
「大丈夫だよ。ミミちゃん!こっちにおいで。喉を撫でてあげるから」
ほら、きた!
ミミっていうのは、旦那様が幼い頃に飼っていた猫だ。
シャム猫のミミは旦那様の不注意で事故にあい亡くなったらしい。
灰色の毛並みのスレンダーな猫は私にそっくりだったと旦那様はいつもおっしゃる。
「君は絶対、ミミの生まれ変わりだよ。間違いない!」
そんなわけないでしょ?この人、絶対ばかなんだ!
誰彼かまわず、そんなことを言うものだから、美貌の次期宰相様の妻はシャム猫に似た灰かぶり姫、そんな中傷が大っぴらに噂されて私はいたたまれなかった。
この方にはデリカシーってものがないのだわ。
というより、私はどうせ愛されていないから‥‥
☆
でも、レイモンド公爵様の私への扱いはとても優しいものだった。
私は食事どきはいつも、レイモンド様の膝の上に抱っこされた。
そして、お肉を一口ずつ切ってくれてあーーんされるんだ!
なんの拷問なの?これは?
「ほら、ミミの大好きお肉だよ?お口を開けて?あーーん」
「ほら、ミミ。好き嫌いはいけないよ。野菜もちゃんと食べて?あーーん」
「う‥‥は、はい。あーーーん」
「あの‥‥旦那様、私一人で食べられますから」
「いや、無理でしょ?だって、君は猫だったじゃない?フォークもちゃんと持てるか怪しい」
はっつ!!もぉ、こんな理由で抱っこされて、あーーんなんて、ほんとにやめてほしい!!
こんな綺麗な夫に抱っこされても、私は子供だし、まして猫扱いだから惨めになってきちゃう‥‥
「レイモンド様、お願いがあります。私、ミミちゃんは猫だったので、もっといろいろな世界がみたいです。隣国にある寄宿舎付きの女子学園は行儀作法から語学、乗馬、ダンス、超一流の女性になるための教育がなされると聞いたことがあります。そこに、5年間行かせてください。ミミは猫から立派なレディになってレイモンド様のもとに帰ってきますから!」
「な、なんてけなげな心がけだ!いいだろう。18歳になったら帰ってくるんだね?その間、手紙は必ず書くんだよ?僕も手紙をだすからね!」
「はい、ありがとうございます!」
私、とにかく、猫のミミから人間の女性になれるようがんばるわ!!
生まれた時から両親には、容姿のことで諦められていた。
この国でもてはやされるのは、金髪で蒼い瞳と、銀髪でアメジストの瞳をもつ美男美女だけよ。
私は顔立ちはそこそこ整っていたが、くすんだような灰色の髪と陰気な灰色の瞳で少しも綺麗に見えなかった。
身体つきも、背ばかりヒョロヒョロ伸びて痩せぎすで、およそこの国の美の基準とはかけ離れていた。
「レイラ、うちはそれほど裕福でないし、貴女の器量でまともな貴族に嫁ぐのは無理だわ。とにかく勉強なさい!優秀であればいい家柄の子女の家庭教師として生きていけるわ」
お母様は私に冷たく言った。
「お母様、わかりました。努力します」
だから、結婚は諦めていて、勉強ばかりしていた。
☆
13歳になったときに、金髪のキラキラした男性がサラマンダ男爵家にやってきた。
「やっと、見つけたよ!ミミ、こんな少女に生まれ変わっていたなんて。気がついてあげれなくてごめん」
私は急に抱きつかれそのまま両親の前でお姫様抱っこされて、あっという間に彼の妻になっていた!
「お母様、私はレイモンド公爵様の昔飼っていた猫のミミじゃないと思います。いくら痩せぎすで灰色のシャム猫に似ているからって‥‥猫のかわりに結婚するなんてあんまりです!」
「しっ!お黙りなさい。あなたのように勉強しか取り柄がない子が公爵夫人になれるのよ。猫のふりでも犬のふりでも喜んでしなさい!没落寸前だったサラマンダ男爵家もこれで安泰というものだわ。いいこと?絶対に公爵様には逆らってはダメよ?」
もちろん逆らえるはずもない。
レイモンド様は私より5歳も年上だし、まだ若いのに宰相様の地位を約束されているやり手の優秀な貴公子だった。
猫のミミか‥‥猫に対する罪滅ぼしなら他でやってくれればいいのに‥‥
飼い猫に似ている女性を探して結婚するなんて意味不明だし変な人だ‥‥
私、もしかしたら首輪をつけられて、おまけに鈴までつけられてキャットフードを食べさせられるのかも!
絶望しか感じなかった‥‥
☆
13歳で18歳のまばゆいぐらい美しい貴公子の妻になった私は社交界の女性たちのかっこうの餌食だった。
舞踏会に行けば、不釣り合いだと失笑され、ばかにされ、嫌みを言われた。
レイモンド様がいるときは、にこやかなご婦人たちが、いなくなると途端に意地悪を言い始めるのが辛かった。
「ねぇ、レイラ様。あなた、猫に似てるからってプロポーズされたって本当なの?冗談でしょう?そんなふざけた理由で結婚する男性なんていやしないわ。子供のくせに一体どんな手をつかったのかしらぁーーー」
「猫って!そもそもなんで猫なのかしら?レイモンド公爵は猫好きなのかしら?なら私の銀髪で猫のような大きな瞳ならわかるけれど‥‥ただの灰かぶり姫じゃぁねぇーー」
特にケイリー・ワイアット侯爵令嬢はいつも辛辣な言葉を私に投げつける。
なんとでも言ってよ。私だってわからないよ。
なんで公爵夫人に私がなってるのかなんて!
☆
つまり、私は社交界きっての美男子レイモンド・ミラー公爵の妻になり、すごく幸せじゃぁない!
人って身の丈に合った幸せってあるはずでしょ?
こんなみすぼらしい私があんな美丈夫と一緒になっていいわけはないのは自分でも自覚していた。
だって、私、全然女性としては愛されていないのに‥‥
舞踏会の帰りの馬車で物思いにふけっているとレイモンド様が深みのある優しい声で聞いてきた。
「レイラ?どうした?気分でも悪いのか?」
「いいえ。なんでもないんです」
上目遣いで旦那様を見つめるとにっこりと笑い返される。
「大丈夫だよ。ミミちゃん!こっちにおいで。喉を撫でてあげるから」
ほら、きた!
ミミっていうのは、旦那様が幼い頃に飼っていた猫だ。
シャム猫のミミは旦那様の不注意で事故にあい亡くなったらしい。
灰色の毛並みのスレンダーな猫は私にそっくりだったと旦那様はいつもおっしゃる。
「君は絶対、ミミの生まれ変わりだよ。間違いない!」
そんなわけないでしょ?この人、絶対ばかなんだ!
誰彼かまわず、そんなことを言うものだから、美貌の次期宰相様の妻はシャム猫に似た灰かぶり姫、そんな中傷が大っぴらに噂されて私はいたたまれなかった。
この方にはデリカシーってものがないのだわ。
というより、私はどうせ愛されていないから‥‥
☆
でも、レイモンド公爵様の私への扱いはとても優しいものだった。
私は食事どきはいつも、レイモンド様の膝の上に抱っこされた。
そして、お肉を一口ずつ切ってくれてあーーんされるんだ!
なんの拷問なの?これは?
「ほら、ミミの大好きお肉だよ?お口を開けて?あーーん」
「ほら、ミミ。好き嫌いはいけないよ。野菜もちゃんと食べて?あーーん」
「う‥‥は、はい。あーーーん」
「あの‥‥旦那様、私一人で食べられますから」
「いや、無理でしょ?だって、君は猫だったじゃない?フォークもちゃんと持てるか怪しい」
はっつ!!もぉ、こんな理由で抱っこされて、あーーんなんて、ほんとにやめてほしい!!
こんな綺麗な夫に抱っこされても、私は子供だし、まして猫扱いだから惨めになってきちゃう‥‥
「レイモンド様、お願いがあります。私、ミミちゃんは猫だったので、もっといろいろな世界がみたいです。隣国にある寄宿舎付きの女子学園は行儀作法から語学、乗馬、ダンス、超一流の女性になるための教育がなされると聞いたことがあります。そこに、5年間行かせてください。ミミは猫から立派なレディになってレイモンド様のもとに帰ってきますから!」
「な、なんてけなげな心がけだ!いいだろう。18歳になったら帰ってくるんだね?その間、手紙は必ず書くんだよ?僕も手紙をだすからね!」
「はい、ありがとうございます!」
私、とにかく、猫のミミから人間の女性になれるようがんばるわ!!
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