上 下
37 / 37

37 オーウェン様のプロポーズ 最終話  

しおりを挟む
 夕日が西の地平線に沈む頃、ベンジャミン家の所有する豪華な遊覧船は静かに波を切って進んでいた。この船は白と金色の装飾で飾られており、夜空の下で優雅に航行している様子は、まるで海に浮かぶ宮殿のようだった。デッキは高価な木材と美しい彫刻で飾られ、贅沢な家具が置かれ、輝くシャンデリアが周囲を照らしていた。

 今夜はお父様とお母様の結婚記念日を祝うため、家族や親しい友人たちが集まっていた。特別なゲストとして招待されたオーウェン王子殿下はあの事件から王太子に決まった。

 彼が船に足を踏み入れた時、私の心は高鳴った。私は淡いブルーのシルクドレスを着て、ブルーサファイアのアクセサリーで首元を飾っていた。このドレスはわたしの体形を美しく見せるし、オーウェン様からのプレゼントだった。彼の色に包まれた私はそれだけで嬉しかった。

 甲板では穏やかな海風が私たちを迎え、柔らかな音楽が流れていた。オーウェン様はお父様とお母様に敬意を表し、二人の永遠の愛を祝福してくれた。そして、お父様とお母様がダンスを始めた時、オーウェン様は私の手を取り、甲板の端に連れて行ってくれた。星々が瞬く中で、彼は私に向き直った。

「オリビア、君は私の生活に喜びと意味をもたらしてくれた。君と一緒にいる時、私は全てが完全に感じられる。君がいる未来を共に歩みたい。オリビア、私とともに人生の次の章を歩んでくれるかい?」

 愛を込めた言葉でプロポーズしてくれたの。その瞬間、船はまるで私たち二人のために存在しているかのようだった。もちろん私の答えは、オーウェン様を受け入れる言葉しかない。

 「はい」という私の言葉を聞いた瞬間、オーウェン様の目には嬉しさが溢れた。彼は私の手をそっと引き寄せ、一歩踏み出して私に優しいキスをした。そのキスはまるで夢のように甘く、オーウェン様の愛の深さを感じさせてくれた。私の目からは感動の涙がこぼれ、心は愛で満ち溢れたわ。

 私たちが抱き合う姿に気づいた両親は、温かい笑顔を浮かべながら、こちらに向かってきた。
「オリビア、あなたが選んだ道に私たちは心から祝福するわ。王太子妃としての責任もあるけれど、一番はあなたの幸せよ」

「我が家の娘が国を代表する女性になるなんて誇らしい。だが、何よりもオリビアの笑顔が見たいんだ」
 
 私は両親に愛されている。心のこもった言葉にさらに涙が流れた。

 
 
 オーウェン様は私からゆっくり離れ、私の目をじっと見つめながら、「私たちの未来は明るい、オリビア。君とならどんなことでも乗り越えられる」と優しくおっしゃった。国王陛下が国外追放された今、オーウェン様が国王になる日は近い。

「はい。私はしっかりオーウェン様をお支えします」
 彼の手をしっかりと握り、私は心からの微笑みを返した。

 オーウェンからの指輪を受け取った後、私はエマの方を見つめた。彼女は姉のように温かく微笑み「オリビア様、あなたが選んだ人生を私は全力でサポートします。いつもあなたのそばで、あなたの幸せを見守りますよ」と言ってくれた。エマらしい言葉だった。

 ラナは私たちの方へ小走りに駆け寄った。彼女のピンクの髪は優しく揺れ、童顔の愛らしい顔には大きな笑顔が広がっていた。彼女は小柄ながらも存在感があり、その明るさが周りを照らしているようだった。

「わぁ、オリビア様は王太子妃様になるんだーー。大変なこともあると思うけど、私たちがいるから心配ないわよーー」
 ラナは目をキラキラと輝かせながら、私の手を取りぎゅっと握ってくれた。その温もりが私の不安を和らげてくれる。 

 ゾーイは大きな歩幅で私たちの方へ近づいてきた。彼女がかけている眼鏡の奥の瞳は輝いており、その男勝りな態度とは裏腹に、目には喜びが溢れていた。

「オーウェン王太子殿下は強い魔力を持ち、あの忌まわしい毒からオリビア様を救ってくれた。この組み合わせ、最高だ! 王子や王女が生まれたら、私の知識を全て教えてやろう」

「ゾーイの知識は教えなくて良いです。おかしな発明ばかりですからね」
「なんでだよ、エマ? 私の薬草の知識や毒の生成方法は・・・・・・」
 ゾーイが言いかけた言葉を、エマがひと睨みで黙らせた。

「エマ、ゾーイを止めるな。ゾーイの自白飴があったから、事件が容易に片づいた。彼女の変わった研究は貴重だよ。今後も、たくさんの便利なものを開発してほしい」

「やった! ありがとうございます! さすがはオーウェン王太子殿下だ」

 ゾーイは三人の侍女のなかで、一番オーウェン様を信頼している。私をあの毒から救ってくださったオーウェン様の実力と愛に感心したのよ。あの時、「こんなことは、大魔導士様でも無理だ」なんてつぶやいていたもの。

 こうして、私は周りの人々全てに祝福され、今度こそ幸せになれるのだと確信した。私たちは優雅に進む遊覧船の甲板で、星々が輝やくなか、新しい人生の旅立ちを祝った。

 この瞬間は、私の人生で最も幸せな瞬間の一つとして心に刻まれたのだった。私の新しい人生がこれから始まる!


୨୧⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒୨୧
※オーウェンとオリビアのAIイラストはインスタ:bluesky77_77で見ることができます。



(完) 
しおりを挟む

この作品は感想を受け付けておりません。

あなたにおすすめの小説

〖完結〗拝啓、愛する婚約者様。私は陛下の側室になります。

藍川みいな
恋愛
侯爵令嬢のリサには、愛する婚約者がいた。ある日、婚約者のカイトが戦地で亡くなったと報せが届いた。 1年後、他国の王が、リサを側室に迎えたいと言ってきた。その話を断る為に、リサはこの国の王ロベルトの側室になる事に…… 側室になったリサだったが、王妃とほかの側室達に虐げられる毎日。 そんなある日、リサは命を狙われ、意識不明に…… 設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。 残酷な描写があるので、R15になっています。 全15話で完結になります。

アルバートの屈辱

プラネットプラント
恋愛
妻の姉に恋をして妻を蔑ろにするアルバートとそんな夫を愛するのを諦めてしまった妻の話。 『詰んでる不憫系悪役令嬢はチャラ男騎士として生活しています』の10年ほど前の話ですが、ほぼ無関係なので単体で読めます。

(完)妹の子供を養女にしたら・・・・・・

青空一夏
恋愛
私はダーシー・オークリー女伯爵。愛する夫との間に子供はいない。なんとかできるように努力はしてきたがどうやら私の身体に原因があるようだった。 「養女を迎えようと思うわ・・・・・・」 私の言葉に夫は私の妹のアイリスのお腹の子どもがいいと言う。私達はその産まれてきた子供を養女に迎えたが・・・・・・ 異世界中世ヨーロッパ風のゆるふわ設定。ざまぁ。魔獣がいる世界。

跡継ぎが産めなければ私は用なし!? でしたらあなたの前から消えて差し上げます。どうぞ愛妾とお幸せに。

Kouei
恋愛
私リサーリア・ウォルトマンは、父の命令でグリフォンド伯爵令息であるモートンの妻になった。 政略結婚だったけれど、お互いに思い合い、幸せに暮らしていた。 しかし結婚して1年経っても子宝に恵まれなかった事で、義父母に愛妾を薦められた夫。 「承知致しました」 夫は二つ返事で承諾した。 私を裏切らないと言ったのに、こんな簡単に受け入れるなんて…! 貴方がそのつもりなら、私は喜んで消えて差し上げますわ。 私は切岸に立って、夕日を見ながら夫に別れを告げた―――… ※この作品は、他サイトにも投稿しています。

【完結】愛されていた。手遅れな程に・・・

月白ヤトヒコ
恋愛
婚約してから長年彼女に酷い態度を取り続けていた。 けれどある日、婚約者の魅力に気付いてから、俺は心を入れ替えた。 謝罪をし、婚約者への態度を改めると誓った。そんな俺に婚約者は怒るでもなく、 「ああ……こんな日が来るだなんてっ……」 謝罪を受け入れた後、涙を浮かべて喜んでくれた。 それからは婚約者を溺愛し、順調に交際を重ね―――― 昨日、式を挙げた。 なのに・・・妻は昨夜。夫婦の寝室に来なかった。 初夜をすっぽかした妻の許へ向かうと、 「王太子殿下と寝所を共にするだなんておぞましい」 という声が聞こえた。 やはり、妻は婚約者時代のことを許してはいなかったのだと思ったが・・・ 「殿下のことを愛していますわ」と言った口で、「殿下と夫婦になるのは無理です」と言う。 なぜだと問い質す俺に、彼女は笑顔で答えてとどめを刺した。 愛されていた。手遅れな程に・・・という、後悔する王太子の話。 シリアス……に見せ掛けて、後半は多分コメディー。 設定はふわっと。

元婚約者は戻らない

基本二度寝
恋愛
侯爵家の子息カルバンは実行した。 人前で伯爵令嬢ナユリーナに、婚約破棄を告げてやった。 カルバンから破棄した婚約は、ナユリーナに瑕疵がつく。 そうなれば、彼女はもうまともな縁談は望めない。 見目は良いが気の強いナユリーナ。 彼女を愛人として拾ってやれば、カルバンに感謝して大人しい女になるはずだと考えた。 二話完結+余談

旦那様、離婚しましょう

榎夜
恋愛
私と旦那は、いわゆる『白い結婚』というやつだ。 手を繋いだどころか、夜を共にしたこともありません。 ですが、とある時に浮気相手が懐妊した、との報告がありました。 なので邪魔者は消えさせてもらいますね *『旦那様、離婚しましょう~私は冒険者になるのでお構いなく!~』と登場人物は同じ 本当はこんな感じにしたかったのに主が詰め込みすぎて......

前略、旦那様……幼馴染と幸せにお過ごし下さい【完結】

迷い人
恋愛
私、シア・エムリスは英知の塔で知識を蓄えた、賢者。 ある日、賢者の天敵に襲われたところを、人獣族のランディに救われ一目惚れ。 自らの有能さを盾に婚姻をしたのだけど……夫であるはずのランディは、私よりも幼馴染が大切らしい。 「だから、王様!! この婚姻無効にしてください!!」 「My天使の願いなら仕方ないなぁ~(*´ω`*)」  ※表現には実際と違う場合があります。  そうして、私は婚姻が完全に成立する前に、離婚を成立させたのだったのだけど……。  私を可愛がる国王夫婦は、私を妻に迎えた者に国を譲ると言い出すのだった。  ※AIイラスト、キャラ紹介、裏設定を『作品のオマケ』で掲載しています。  ※私の我儘で、イチャイチャどまりのR18→R15への変更になりました。 ごめんなさい。

処理中です...