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偽りの結婚と新たな愛妾
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「俺はこのオーブリー王女を正妃とする。」
ハンター皇帝は臣下達に宣言した。
豪勢な結婚式が行われて貴族たちや民がお祝いの声をあげるけれど、これって騙してる気がして落ち着かなかった。
でも私はにこやかに彼と並んで微笑んで余裕のふりをしていた。
☆
こうして食事も寝室も一緒の奇妙な皇帝との生活が始まった。
食事のときには以前は、離れて別々に座っていたのに今は仲良く椅子が並べられて薔薇園を二人で眺めるような配置で食事をしている。
「ほら、このお肉、おいしいだろ?」
「えぇ、ハンター様もお野菜をいっぱい食べてくださいね?」
などと仲睦まじく食べるふりをする。
彼はたまに手を絡ませて私の頬にキスをする。
リンダはニコニコしているし、たまにやってくる宰相も顔を輝かせている。
でも、私達は子供なんかできない。
だって、クイーンサイズのベッドの端っこと端っこで寝ている私達はキスもしたことがないのだから‥‥
☆
それにしても、皇帝は私とばかり時間を過ごすから、側室たちの私へのやっかみがすごい。
私を交えた側室達とのお茶会は週に一度開かれる。
「さすが卑しい姫は違いますわね!皇帝をずっと独占なさってる。ですが、嫉妬で皇帝を束縛するのはやめていただけませんか?」
「どういうことかしら?」
「だから!皇帝の愛を独占するなと申し上げているのです」
「そうですわ!王女とはいえ、トワイライト王国ではメイド並みの扱いだったと、トワイライト王国に詳しい者が申しておりましたよ。踊り子の娘とか!血筋の悪さはやはり隠せませんわね」
そっか、ここでもそんな噂が広まりはじめたんだな、と私は感心したの。
嫌な噂って広まるのがとても早いのね?
「私の正妃をばかにするのか?」
背後から皇帝の低い声が聞こえて私達はあわてて膝をついた。
「あぁ、オーブリー王女は膝をつかなくて良い。俺の大事な正妃だからね。それより、そこのお前、今、なんと言った?」
「わ、私はなにも‥‥」
「オーブリー様は踊り子の卑しい血筋だと言っただけでしょう」
一番、年かさの側室が薄笑いをうかべてそう言った。
「ほぉーー俺は娼婦の子だぞ!知らないのか?俺も卑しい血が流れている」
側室達が一斉に顔を青ざめさせた。
「マリーベルン帝国の皇帝は子供ができにくい。よって、父上はどんな女も側室にした。娼婦も踊り子もメイドもな。お前達は由緒ある貴族の娘たちだったな?ちょうどいい機会だ。暇をだそう。実家に帰れ。こんな血筋の悪い俺とはいたくないだろう?」
晴れ晴れとした笑顔で言った王は、さっさとその場をあとにした。
「正妃様、どうぞ、おとりなしを!」
「正妃様、どうぞ、皇帝の機嫌を直してくださいませ!実家に戻ったらお父様に勘当されます」
なんていうか、勝手な女性たちだ。さっきまで、私を蔑んでいたと思うのだけれど‥‥
☆
「ハンター様、側妃たちを実家に帰すのはやめてください」
「なぜだ?お前を愚弄したのだぞ?」
「あんなの、なんでもありません。いつもお姉様達に言われていたことですもの!頬をたたかれたり指をピンでさされたり‥‥踊り子の娘なのは事実ですから、いちいち怒っていたらきりがありません」
「そうか‥‥俺は娼婦の子だ。そう言って愚弄した奴は一人残らず八つ裂きにした」
「いちいち殺していては、周りは刃向かわない者だけになってしまうのでは?皇帝にそんな口をきけたら、かえって見所がある勇気ある人かもしれませんよ?」
私は、そんなことを言いながら薔薇を愛でていた。
「ちょっと膝を貸せ!俺は眠くなった」
薔薇の庭園で私の膝の上で眠る若く美しい皇帝を精霊たちが嬉しそうに見ていた。
「姫の旦那様ですね!」
「素敵!」
「ラブラブですわ!」
精霊たちは口々に言うけれど、私は首を振った。
「私達はまやかしなのよ。仲のいいふりをしているの」
この女好きな皇帝と仲良くなるつもりなんて1ミリもない。
先日、宰相から新たに30人の愛妾がくることを聞かされたばかりの私は冷たい目で皇帝をみてしまう。
膝枕なんてこれからやってくる女性にやってもらえばいいのに‥‥
☆
「オーブリー様、皇帝は20人の側妃に飽きられたようです。それで、新たに30人の愛妾を集めることになりました。ご了承くださいませ」
宰相が書類を持ってきて私に見せたのがつい先日のことだ。
元メイドから町娘から高級娼婦まで多彩だったから、かえって生々しいかんじがしたの。
ハーレムというやつか。
「これって、ハンター様もお望みのことなのでしょう?」
「もちろんですとも!」
「‥‥」
☆-・-・-・-・-・-
「新たに30人の愛妾を用意しました。身分は低いですが美しい者ばかりです」
「なぜ、そんなことをした?」
皇帝は不機嫌そうに顔をしかめた。
「正妃様のためです!今後、正妃様が身ごもらなければ正妃様だけが責められます。でも新たにいれた愛妾たちも身ごもらないとなれば正妃様もそれほど責められますまい」
「なるほどな。目くらましか!ならばよいだろう。30人といわず50人いれよ。それが正妃のためならば」
皇帝はオーブリーの顔を思い浮かべると心がほわんと温かくなる気がした。
あいつといると落ち着くからな。
☆-・-・-・-・-・-
翌日、私のもとに変更が知らされた。
「皇帝の希望により愛妾が50人に変更になりました」
前からいる側室とあわせたら80人にもなる。
そんなに女性が好きなんだ‥‥
ハンター皇帝は臣下達に宣言した。
豪勢な結婚式が行われて貴族たちや民がお祝いの声をあげるけれど、これって騙してる気がして落ち着かなかった。
でも私はにこやかに彼と並んで微笑んで余裕のふりをしていた。
☆
こうして食事も寝室も一緒の奇妙な皇帝との生活が始まった。
食事のときには以前は、離れて別々に座っていたのに今は仲良く椅子が並べられて薔薇園を二人で眺めるような配置で食事をしている。
「ほら、このお肉、おいしいだろ?」
「えぇ、ハンター様もお野菜をいっぱい食べてくださいね?」
などと仲睦まじく食べるふりをする。
彼はたまに手を絡ませて私の頬にキスをする。
リンダはニコニコしているし、たまにやってくる宰相も顔を輝かせている。
でも、私達は子供なんかできない。
だって、クイーンサイズのベッドの端っこと端っこで寝ている私達はキスもしたことがないのだから‥‥
☆
それにしても、皇帝は私とばかり時間を過ごすから、側室たちの私へのやっかみがすごい。
私を交えた側室達とのお茶会は週に一度開かれる。
「さすが卑しい姫は違いますわね!皇帝をずっと独占なさってる。ですが、嫉妬で皇帝を束縛するのはやめていただけませんか?」
「どういうことかしら?」
「だから!皇帝の愛を独占するなと申し上げているのです」
「そうですわ!王女とはいえ、トワイライト王国ではメイド並みの扱いだったと、トワイライト王国に詳しい者が申しておりましたよ。踊り子の娘とか!血筋の悪さはやはり隠せませんわね」
そっか、ここでもそんな噂が広まりはじめたんだな、と私は感心したの。
嫌な噂って広まるのがとても早いのね?
「私の正妃をばかにするのか?」
背後から皇帝の低い声が聞こえて私達はあわてて膝をついた。
「あぁ、オーブリー王女は膝をつかなくて良い。俺の大事な正妃だからね。それより、そこのお前、今、なんと言った?」
「わ、私はなにも‥‥」
「オーブリー様は踊り子の卑しい血筋だと言っただけでしょう」
一番、年かさの側室が薄笑いをうかべてそう言った。
「ほぉーー俺は娼婦の子だぞ!知らないのか?俺も卑しい血が流れている」
側室達が一斉に顔を青ざめさせた。
「マリーベルン帝国の皇帝は子供ができにくい。よって、父上はどんな女も側室にした。娼婦も踊り子もメイドもな。お前達は由緒ある貴族の娘たちだったな?ちょうどいい機会だ。暇をだそう。実家に帰れ。こんな血筋の悪い俺とはいたくないだろう?」
晴れ晴れとした笑顔で言った王は、さっさとその場をあとにした。
「正妃様、どうぞ、おとりなしを!」
「正妃様、どうぞ、皇帝の機嫌を直してくださいませ!実家に戻ったらお父様に勘当されます」
なんていうか、勝手な女性たちだ。さっきまで、私を蔑んでいたと思うのだけれど‥‥
☆
「ハンター様、側妃たちを実家に帰すのはやめてください」
「なぜだ?お前を愚弄したのだぞ?」
「あんなの、なんでもありません。いつもお姉様達に言われていたことですもの!頬をたたかれたり指をピンでさされたり‥‥踊り子の娘なのは事実ですから、いちいち怒っていたらきりがありません」
「そうか‥‥俺は娼婦の子だ。そう言って愚弄した奴は一人残らず八つ裂きにした」
「いちいち殺していては、周りは刃向かわない者だけになってしまうのでは?皇帝にそんな口をきけたら、かえって見所がある勇気ある人かもしれませんよ?」
私は、そんなことを言いながら薔薇を愛でていた。
「ちょっと膝を貸せ!俺は眠くなった」
薔薇の庭園で私の膝の上で眠る若く美しい皇帝を精霊たちが嬉しそうに見ていた。
「姫の旦那様ですね!」
「素敵!」
「ラブラブですわ!」
精霊たちは口々に言うけれど、私は首を振った。
「私達はまやかしなのよ。仲のいいふりをしているの」
この女好きな皇帝と仲良くなるつもりなんて1ミリもない。
先日、宰相から新たに30人の愛妾がくることを聞かされたばかりの私は冷たい目で皇帝をみてしまう。
膝枕なんてこれからやってくる女性にやってもらえばいいのに‥‥
☆
「オーブリー様、皇帝は20人の側妃に飽きられたようです。それで、新たに30人の愛妾を集めることになりました。ご了承くださいませ」
宰相が書類を持ってきて私に見せたのがつい先日のことだ。
元メイドから町娘から高級娼婦まで多彩だったから、かえって生々しいかんじがしたの。
ハーレムというやつか。
「これって、ハンター様もお望みのことなのでしょう?」
「もちろんですとも!」
「‥‥」
☆-・-・-・-・-・-
「新たに30人の愛妾を用意しました。身分は低いですが美しい者ばかりです」
「なぜ、そんなことをした?」
皇帝は不機嫌そうに顔をしかめた。
「正妃様のためです!今後、正妃様が身ごもらなければ正妃様だけが責められます。でも新たにいれた愛妾たちも身ごもらないとなれば正妃様もそれほど責められますまい」
「なるほどな。目くらましか!ならばよいだろう。30人といわず50人いれよ。それが正妃のためならば」
皇帝はオーブリーの顔を思い浮かべると心がほわんと温かくなる気がした。
あいつといると落ち着くからな。
☆-・-・-・-・-・-
翌日、私のもとに変更が知らされた。
「皇帝の希望により愛妾が50人に変更になりました」
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