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女たらしの皇帝の正妃のふりの始まり
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マリーベルン帝国に着いたとき、皇帝が自らお出迎えをしてくれた。
宮殿の庭園には薔薇がいっぱいだったから私はすぐ嬉しくなった。
薔薇の精霊たちが喜んでくれているのがすぐわかったから。
でも、皇帝は微妙な顔をされていた。
薔薇の精霊が皇帝には見えないからしょうがないけれど。
☆
私に与えられた部屋は上等な絨毯がひかれ、高そうな家具がおかれていた。
こんないい部屋って人質にはもったいないなぁーって思っていたら
宰相と名のる男性は私の部屋に突然あらわれて、私の姿を上から下まで見つめた。
「これは、これは、とても極上の姫君ですね!」
嬉しそうに言ってきて私の手を握る。
「いいですか?貴女は皇帝の気を惹くことだけを考えてください!ぜひお世継ぎを産んでくださいね!」
これって、やっぱり性奴隷なの?
お姉様たちが言っていた身体を売るってこういうことなのかな?
☆
私がその夜、皇帝と夕食をとっていると
女性が三人、いきなり飛び込んできて怒りで顔を赤くしていた。
「今度は隣国の王女ですか?私にもう一度チャンスをください。絶対に身ごもってみせます」
「いいえ、私こそ!」
「何を言うの!私が先よ」
私は、この皇帝がすごく女好きなんだってわかって思わず顔をしかめた。
ー最低!私のお父様と一緒だわ。たくさんの側妃がいて移り気、自分勝手で残酷な男性なのね。
おそるおそる皇帝の顔を見ると皇帝はびっくりするほどのいい笑顔で私に言った。
「今夜はこの姫と約束している。なぁ、姫?そうだろう?」
「いいえ、約束などしていません!」
綺麗な男性なのに残念な人だと思いながらきっぱりと言い切った。
人質なのに、皇帝に反抗して良かったのかな?ってあとで反省したけれど‥‥
☆
「皇帝には20人の側室がいらっしゃいます」
リンダが満面の笑みで言うと、私は絶望の声をあげた。
「もしかして、その側室に私もなるとか?」
「いいえ。そのようなことは聞いておりませんよ。これ以上増やしたくない、といつもおっしゃっていますもの!だって、皇帝は女嫌いですから」
え?女嫌いなのに側室が20人なの?
全く理解できなかった。
☆
ここに来てもうかれこれ2週間になるけれど、全くやることがない。
皇帝にはなにもするな!って言われたけれど‥‥
とうとう我慢ができなくなってリンダに言ってメイドの服を借りてパンを焼いた。
皇帝は私を避けているから、だんだんやりたい放題になってきた。
掃除をしたり、スープを作ったり、庭園でお昼寝したり、メイドたちと輪になって歌を歌ったり。
そんなふうに過ごしていると、皇帝が女性を連れて私のところにやってきた。
「この王女を愛しているから、君を側室にはできない!」
私の肩を抱いて、その女性に冷たく宣言した。
「その方は隣国の人質でしょう?人質ごときが‥‥」
「いや、これは私の正妃になる女性だ。断じて人質ではない!」
女性が泣いて走り去っていくのを黙って見ていた私は呆然とするしかない。
「君はなにかしたい、とずっと言っていただろう?だから、俺は君に仕事を与えようと思う。正妃のふりをしろ!わかったか?それが人質の仕事だ」
「は?」
「正妃?私はダンスも語学もできませんよ。マナーも教わっていませんもの」
「頭が弱いからか?」
「?頭は正常だと思います。少なくとも、あなたよりはね!私は王女だけれど自国ではメイドとして暮らしていました。だから、教育もうけず、掃除と料理、雑用しかできません。笑いたければ笑ってください。」
私は自分で言いながら悲しくなってしまった。
自分が虐げられていたなんて話すのは惨めで嫌だった。
というか、頭が弱いってどういう意味よ?
☆
そして、正妃のふりをした私の奇妙な生活がこれから始まるのだった。
人質ってこんなこともするんだね‥‥
宮殿の庭園には薔薇がいっぱいだったから私はすぐ嬉しくなった。
薔薇の精霊たちが喜んでくれているのがすぐわかったから。
でも、皇帝は微妙な顔をされていた。
薔薇の精霊が皇帝には見えないからしょうがないけれど。
☆
私に与えられた部屋は上等な絨毯がひかれ、高そうな家具がおかれていた。
こんないい部屋って人質にはもったいないなぁーって思っていたら
宰相と名のる男性は私の部屋に突然あらわれて、私の姿を上から下まで見つめた。
「これは、これは、とても極上の姫君ですね!」
嬉しそうに言ってきて私の手を握る。
「いいですか?貴女は皇帝の気を惹くことだけを考えてください!ぜひお世継ぎを産んでくださいね!」
これって、やっぱり性奴隷なの?
お姉様たちが言っていた身体を売るってこういうことなのかな?
☆
私がその夜、皇帝と夕食をとっていると
女性が三人、いきなり飛び込んできて怒りで顔を赤くしていた。
「今度は隣国の王女ですか?私にもう一度チャンスをください。絶対に身ごもってみせます」
「いいえ、私こそ!」
「何を言うの!私が先よ」
私は、この皇帝がすごく女好きなんだってわかって思わず顔をしかめた。
ー最低!私のお父様と一緒だわ。たくさんの側妃がいて移り気、自分勝手で残酷な男性なのね。
おそるおそる皇帝の顔を見ると皇帝はびっくりするほどのいい笑顔で私に言った。
「今夜はこの姫と約束している。なぁ、姫?そうだろう?」
「いいえ、約束などしていません!」
綺麗な男性なのに残念な人だと思いながらきっぱりと言い切った。
人質なのに、皇帝に反抗して良かったのかな?ってあとで反省したけれど‥‥
☆
「皇帝には20人の側室がいらっしゃいます」
リンダが満面の笑みで言うと、私は絶望の声をあげた。
「もしかして、その側室に私もなるとか?」
「いいえ。そのようなことは聞いておりませんよ。これ以上増やしたくない、といつもおっしゃっていますもの!だって、皇帝は女嫌いですから」
え?女嫌いなのに側室が20人なの?
全く理解できなかった。
☆
ここに来てもうかれこれ2週間になるけれど、全くやることがない。
皇帝にはなにもするな!って言われたけれど‥‥
とうとう我慢ができなくなってリンダに言ってメイドの服を借りてパンを焼いた。
皇帝は私を避けているから、だんだんやりたい放題になってきた。
掃除をしたり、スープを作ったり、庭園でお昼寝したり、メイドたちと輪になって歌を歌ったり。
そんなふうに過ごしていると、皇帝が女性を連れて私のところにやってきた。
「この王女を愛しているから、君を側室にはできない!」
私の肩を抱いて、その女性に冷たく宣言した。
「その方は隣国の人質でしょう?人質ごときが‥‥」
「いや、これは私の正妃になる女性だ。断じて人質ではない!」
女性が泣いて走り去っていくのを黙って見ていた私は呆然とするしかない。
「君はなにかしたい、とずっと言っていただろう?だから、俺は君に仕事を与えようと思う。正妃のふりをしろ!わかったか?それが人質の仕事だ」
「は?」
「正妃?私はダンスも語学もできませんよ。マナーも教わっていませんもの」
「頭が弱いからか?」
「?頭は正常だと思います。少なくとも、あなたよりはね!私は王女だけれど自国ではメイドとして暮らしていました。だから、教育もうけず、掃除と料理、雑用しかできません。笑いたければ笑ってください。」
私は自分で言いながら悲しくなってしまった。
自分が虐げられていたなんて話すのは惨めで嫌だった。
というか、頭が弱いってどういう意味よ?
☆
そして、正妃のふりをした私の奇妙な生活がこれから始まるのだった。
人質ってこんなこともするんだね‥‥
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