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マリアンヌと僕
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これは、絶対にお母様だ。僕は確信した。お顔は、随分変わっていたけれど、オレンジの髪と右目の下と口元にホクロがあるのは変わっていない。
血だまりのなかで、『ごめんよ』最期に口元だけが動いた。あぁ、これはママだ。
可愛がってもらった記憶は、あまりない冷たい人だったはずなのに。たった今、僕を助ける為にナイフで刺された。
ただ、ただ、とても悲しかった。僕とクリストファーは愛されていないと思っていたのに・・・・・・
「ミランダは、結果的にはメイソンとマリアンヌの命を救いましたね。経緯はどうであれ、これは、感謝すべきことですよ。ちゃんと、供養してあげましょう」
お婆様は、そう言ってママの目を閉じさせた。
*:.。 。.:*・゚✽.。.:*・゚ ✽.。.:*・゚ ✽.。.:*・゚ ✽.。.:*・゚ ✽.。.:*
僕は市井の学校を卒業し、学者養成学校にすすんだ。ジョナサンは騎士養成学校だ。寄宿舎がある学校だったから、たまにしか公爵家に戻ってこれなかった。ジョナサンは、相変わらず僕の家来になると張り切っていた。
マリアンヌは、戻ってくる度に喜んで僕の後をくっついて離れなかった。私(メイソンは大人になっていますので僕ではなくなりました)は、学者養成学校の6年間を主席で卒業し王家のお抱え学者になった。王宮の中に研究室も与えられて、自室も用意された。
「王宮で生活しなくても、トマス公爵家から通いなさい」
お婆様もマーガレットおばさんもトマス公爵も、そう言ったが私は王宮で暮らすことを選んだ。
マリアンヌには、専属騎士が5人もついたから安全なはずだし、私はあの事件以来、トマス公爵家の庭園を見るのは辛かったからだ。
ジョナサンも、優秀な成績で騎士学校を卒業し、王家の騎士になった。
「メイソン様。専属の護衛騎士をお連れしました」
王家の侍従の後に研究室に入ってきたのがジョナサンだった。
「よぉ、約束通り、お前を守りにきたよ」
こいつは、言ったことは必ずやる男だ。呆れたけれど、嬉しかった。
*:.。 。.:*・゚✽.。.:*・゚ ✽.。.:*・゚ ✽.。.:*・゚ ✽.。.:*・゚ ✽.。.:*
「週末には、必ず帰るようにね。ここは、貴方たちの家なのよ? 私とカトレーネ・トマス前公爵夫人が、元気でここを守っている間は、ここは貴方達の実家ですからね!」
マーガレットおばさんが、私と王家の騎士になったクリストファーに必ず言う言葉だ。
「メイソンも、お嫁さんを迎えないとね! いくつかの伯爵家のご令嬢から縁談がきていますよ。婿養子の話まできているわねぇ。あぁ、ここなら、トマス公爵家から近いし・・・・・・」
トマス公爵家に戻る度に、縁談を進めてくるお婆様に、私は曖昧に微笑んだ。
いつ頃からか、その話がでると、マリアンヌが私の手を軽く叩くようになった。
「どうしたの? マリアンヌ?」
まだ7歳のマリアンヌを抱き上げると、真っ赤な顔になってこう言ったのだった。
「お婆様! メイソンお兄様はそのような伯爵令嬢には、差し上げられません! だって、私のものですから!」
血だまりのなかで、『ごめんよ』最期に口元だけが動いた。あぁ、これはママだ。
可愛がってもらった記憶は、あまりない冷たい人だったはずなのに。たった今、僕を助ける為にナイフで刺された。
ただ、ただ、とても悲しかった。僕とクリストファーは愛されていないと思っていたのに・・・・・・
「ミランダは、結果的にはメイソンとマリアンヌの命を救いましたね。経緯はどうであれ、これは、感謝すべきことですよ。ちゃんと、供養してあげましょう」
お婆様は、そう言ってママの目を閉じさせた。
*:.。 。.:*・゚✽.。.:*・゚ ✽.。.:*・゚ ✽.。.:*・゚ ✽.。.:*・゚ ✽.。.:*
僕は市井の学校を卒業し、学者養成学校にすすんだ。ジョナサンは騎士養成学校だ。寄宿舎がある学校だったから、たまにしか公爵家に戻ってこれなかった。ジョナサンは、相変わらず僕の家来になると張り切っていた。
マリアンヌは、戻ってくる度に喜んで僕の後をくっついて離れなかった。私(メイソンは大人になっていますので僕ではなくなりました)は、学者養成学校の6年間を主席で卒業し王家のお抱え学者になった。王宮の中に研究室も与えられて、自室も用意された。
「王宮で生活しなくても、トマス公爵家から通いなさい」
お婆様もマーガレットおばさんもトマス公爵も、そう言ったが私は王宮で暮らすことを選んだ。
マリアンヌには、専属騎士が5人もついたから安全なはずだし、私はあの事件以来、トマス公爵家の庭園を見るのは辛かったからだ。
ジョナサンも、優秀な成績で騎士学校を卒業し、王家の騎士になった。
「メイソン様。専属の護衛騎士をお連れしました」
王家の侍従の後に研究室に入ってきたのがジョナサンだった。
「よぉ、約束通り、お前を守りにきたよ」
こいつは、言ったことは必ずやる男だ。呆れたけれど、嬉しかった。
*:.。 。.:*・゚✽.。.:*・゚ ✽.。.:*・゚ ✽.。.:*・゚ ✽.。.:*・゚ ✽.。.:*
「週末には、必ず帰るようにね。ここは、貴方たちの家なのよ? 私とカトレーネ・トマス前公爵夫人が、元気でここを守っている間は、ここは貴方達の実家ですからね!」
マーガレットおばさんが、私と王家の騎士になったクリストファーに必ず言う言葉だ。
「メイソンも、お嫁さんを迎えないとね! いくつかの伯爵家のご令嬢から縁談がきていますよ。婿養子の話まできているわねぇ。あぁ、ここなら、トマス公爵家から近いし・・・・・・」
トマス公爵家に戻る度に、縁談を進めてくるお婆様に、私は曖昧に微笑んだ。
いつ頃からか、その話がでると、マリアンヌが私の手を軽く叩くようになった。
「どうしたの? マリアンヌ?」
まだ7歳のマリアンヌを抱き上げると、真っ赤な顔になってこう言ったのだった。
「お婆様! メイソンお兄様はそのような伯爵令嬢には、差し上げられません! だって、私のものですから!」
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