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復讐を誓う私は男装の麗人になった
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「マーガレット!ミランダのお願いをなぜ、きけないんだ? マーガレットには、子供もいなければ、両親も他界していないだろう? ミランダの苦労をわかれ、というのは所詮無理があるかもしれないが、親友が困っているんだ。それを助けてあげようという優しい気持ちが少しでもあれば、快諾するはずだろう? マーガレットは、ミランダのように美しくないし子供も産めないが、その優しさが私は好きなのだよ」
ジェームズは私に、激しい口調で言った。このセリフのなんと滑稽なことだろう? この男は、どこまでクズなのだろうか? しかも、私に子供も産めないなどと蔑むような言葉を投げつけた。
子供好きな私は、子供が心底欲しかった。けれど、子宝には恵まれなかった。ジェームズは今までは私にこう言っていたのだ。
「子供に恵まれなくても、私たちには大事な親友ミランダの二人の子供がいる。これは、神の思し召しだ。ミランダの子供を私達の子供としてかわいがろう!」
その言葉に救われ、ミランダとジェームズに感謝した私は、とんだピエロだ。この二人は、きっと感謝の言葉を口にした私を陰で笑っていたのだろう。馬鹿でお人好しな優しいだけが取り柄の女だと・・・・・・
けれど、もうそんなことはさせないわ。私を散々、コケにしたこの二人の裏切りに情状酌量の余地はない!
「そうね。ごめんなさい、ジェームズ。貴方の言うとおりだわ。私が悪かったわ。ミランダの子供を預かるわ」
「うん、それでこそ、私の愛するやさしいマーガレットだよ。ミランダを一緒にこれからも支えていこう!」
ジェームズは、満面の笑みを浮かべて、ミランダも朗らかに微笑んだのだった。
☆
「これから、ちょっと出かけてきます。ミランダの子供の相手をしてあげてちょうだい」
私は、その日、完璧な変装をして夫のあとをつけることにした。黒の長い髪は、まとめ上げてショートカットの金髪のカツラをかぶり、男物の服を着た。私は、女性にしては背が高く、体も華奢ではなかった。女性としてのコンプレックスが、こんな場面でいい方に影響するとは、本当に人生とはわからないものだ。
「奥様! どうなさったのです? その格好は?」
「うわぁ、男装の麗人ですねぇーー。素敵ですわ。あ、わかった。劇に参加されるのでしょう?趣味で皆様、変装して劇に興じるのが流行していると聞いたことがありますわ」
侍女達が騒ぐので、私は苦笑した。女性でいるより、男装したほうが、私は見栄えがいいらしい。
「まぁ、そんなところね。やっと、私にもやるべきことが見つかったのよ。でも、旦那様には内緒にしてくれる?こんな趣味がばれたら、止められそうだもの」
「えぇ。もちろん、しゃべりませんとも。旦那様は奥様を愛するあまり過保護ですからねぇ。奥様を家に閉じ込めたがる。良くないことだと思っていました。もっと趣味をもって、お外にもお出かけになればいいのです。ミランダ様の子供のお守りだけが奥様の趣味だなんて寂しすぎます。どうぞ、ゆっくり劇に参加なさってきてください」
侍女長のクレアは、私がメディチ家に嫁いだ時に連れてきた専属侍女だった。クレアは、私に趣味ができたことを素直に喜んでくれた。クレアにも、今は本当のことは言えない。
☆
ジェームズは王宮にまだいるはずだった。そこから、多分、外回りの仕事をするふりをしてミランダに会うはず。
あの手帳には、そんなことまで、細かく書いてあったから助かった。メモ魔の夫で良かった。
夫の馬車が王宮から出てくるのを、メディチ家の馬車ではない借り物の馬車で待ち構えた。
予想通りに夫を乗せた馬車が王宮から出てきたのが確認できると、私はほの暗い嬉しさに頬を緩めたのだった。
ジェームズは私に、激しい口調で言った。このセリフのなんと滑稽なことだろう? この男は、どこまでクズなのだろうか? しかも、私に子供も産めないなどと蔑むような言葉を投げつけた。
子供好きな私は、子供が心底欲しかった。けれど、子宝には恵まれなかった。ジェームズは今までは私にこう言っていたのだ。
「子供に恵まれなくても、私たちには大事な親友ミランダの二人の子供がいる。これは、神の思し召しだ。ミランダの子供を私達の子供としてかわいがろう!」
その言葉に救われ、ミランダとジェームズに感謝した私は、とんだピエロだ。この二人は、きっと感謝の言葉を口にした私を陰で笑っていたのだろう。馬鹿でお人好しな優しいだけが取り柄の女だと・・・・・・
けれど、もうそんなことはさせないわ。私を散々、コケにしたこの二人の裏切りに情状酌量の余地はない!
「そうね。ごめんなさい、ジェームズ。貴方の言うとおりだわ。私が悪かったわ。ミランダの子供を預かるわ」
「うん、それでこそ、私の愛するやさしいマーガレットだよ。ミランダを一緒にこれからも支えていこう!」
ジェームズは、満面の笑みを浮かべて、ミランダも朗らかに微笑んだのだった。
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「これから、ちょっと出かけてきます。ミランダの子供の相手をしてあげてちょうだい」
私は、その日、完璧な変装をして夫のあとをつけることにした。黒の長い髪は、まとめ上げてショートカットの金髪のカツラをかぶり、男物の服を着た。私は、女性にしては背が高く、体も華奢ではなかった。女性としてのコンプレックスが、こんな場面でいい方に影響するとは、本当に人生とはわからないものだ。
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「うわぁ、男装の麗人ですねぇーー。素敵ですわ。あ、わかった。劇に参加されるのでしょう?趣味で皆様、変装して劇に興じるのが流行していると聞いたことがありますわ」
侍女達が騒ぐので、私は苦笑した。女性でいるより、男装したほうが、私は見栄えがいいらしい。
「まぁ、そんなところね。やっと、私にもやるべきことが見つかったのよ。でも、旦那様には内緒にしてくれる?こんな趣味がばれたら、止められそうだもの」
「えぇ。もちろん、しゃべりませんとも。旦那様は奥様を愛するあまり過保護ですからねぇ。奥様を家に閉じ込めたがる。良くないことだと思っていました。もっと趣味をもって、お外にもお出かけになればいいのです。ミランダ様の子供のお守りだけが奥様の趣味だなんて寂しすぎます。どうぞ、ゆっくり劇に参加なさってきてください」
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☆
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あの手帳には、そんなことまで、細かく書いてあったから助かった。メモ魔の夫で良かった。
夫の馬車が王宮から出てくるのを、メディチ家の馬車ではない借り物の馬車で待ち構えた。
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