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12 『恋人その2様』はどうしたのかしら?
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ここは私とカイド様が慌ただしく結婚式を挙げた十日後のお披露目の会場です。ザヘリー公爵邸の大広間で、高位貴族の貴婦人達に囲まれてお祝いの言葉を頂いていました。
「あらぁーー。カイドの奥様って貴女なの? ふーーん。思っていたより綺麗なのね?」
そこに姿を現したのは、キャサリン・ライダー子爵令嬢でした。どうやら、この方はカイド様の『恋人その1様』のようですね。
「借金だらけの貧弱な男爵令嬢だった方がずいぶんと出世なさったのね? 浅ましいことですわ。どうせ、お金で買われたのでしょう?」
キャサリン様はニヤニヤしながらその大きな胸の谷間を、わざと私に見せつけてきました。さらにこちらに近づいてきた別の女性は、丁寧に私に挨拶をしてくださいます。
「初めまして。あたくしはアイリーン・イヴェット男爵令嬢ですわ。以後、お見知りおきくださいませ」
アイリーン様はきっちりと自己紹介をし、優雅にカーテシーをして見せたのです。確かに、今の私はカイド様の妻なので、身分は上になるのだと思います。
「まぁ、ご丁寧に、ありがとうございます。私はカイド様の妻のアイビーです。仲良くできると嬉しいですわ」
私のその言葉を、アイリーン様は鼻でお笑いになります。
「あいにくですが、仲良くなれるとは思えませんわ。だって、あたくしは・・・・・・」
「あぁ、お待ちになって。みなまでおっしゃらなくてもわかります。えぇっと、アイリーン様は『恋人その2様』でございましょう? それと、こちらのキャサリン様は『恋人その1』様ですね。ところで、アイリーン様はとてもスラリとした素晴らしい美貌ですねぇ。舞台女優やモデルさんのようです」
「へ? まっ、まぁ、確かに私ほど美しい女はそうはいませんわ。ですから、私こそはカイド様に相応しいと思いますわ」
アイリーン様は得意そうにおっしゃいます。
「カイド様に相応しいねぇ。ちょっと、お二人で並んでいただけますか? うーーん、確かに美男美女で素晴らしいバランスです! よろしいんじゃないでしょうか? お似合いですね」
カイド様の銀髪とアイリーン様の金髪の対比が絶妙で、同じく美しいアメジストの瞳を持っています。まるでひと組のお人形さんのように見えるのでした。素晴らしい芸術品だと思います。
「でしたら、カイド様の妻の座を代わっていただけませんこと?」
これはお仕事なのです。妻の座には私の大事なお給料がかかっていますので、簡単に引き下がるわけにはまいりません。
「それは困ります。ですが、アイリーン様の存在は認めてさしあげます。もし、カイド様のお子様を懐妊なさったら私たちの養子にしたいです。きっと、見目麗しい子どもができますわね? 美男美女ですもの! とても楽しみにしていますわ」
私はカイド様の子供を妊娠することはありません。なので、代わりに生んでくださればとても好都合です。そう考えると、ついアイリーン様を応援したくなりました。
「アイリーン様! 恋人は他に4人いましてよ? ぜひ、頑張って勝ち抜いて、元気な赤ちゃんを生んでくださいねっ!」
「うっ・・・・・・うわぁぁぁーーん」
涙目になったアイリーン様は、泣きながら大広間から走り去ってしまいました。
(いったい、どうされたのでしょうか? 夫人方が愉快そうに笑うのはなぜでしょう?)
すっかり高位貴族の奥方様たちに気に入られた私なのでした。
「あらぁーー。カイドの奥様って貴女なの? ふーーん。思っていたより綺麗なのね?」
そこに姿を現したのは、キャサリン・ライダー子爵令嬢でした。どうやら、この方はカイド様の『恋人その1様』のようですね。
「借金だらけの貧弱な男爵令嬢だった方がずいぶんと出世なさったのね? 浅ましいことですわ。どうせ、お金で買われたのでしょう?」
キャサリン様はニヤニヤしながらその大きな胸の谷間を、わざと私に見せつけてきました。さらにこちらに近づいてきた別の女性は、丁寧に私に挨拶をしてくださいます。
「初めまして。あたくしはアイリーン・イヴェット男爵令嬢ですわ。以後、お見知りおきくださいませ」
アイリーン様はきっちりと自己紹介をし、優雅にカーテシーをして見せたのです。確かに、今の私はカイド様の妻なので、身分は上になるのだと思います。
「まぁ、ご丁寧に、ありがとうございます。私はカイド様の妻のアイビーです。仲良くできると嬉しいですわ」
私のその言葉を、アイリーン様は鼻でお笑いになります。
「あいにくですが、仲良くなれるとは思えませんわ。だって、あたくしは・・・・・・」
「あぁ、お待ちになって。みなまでおっしゃらなくてもわかります。えぇっと、アイリーン様は『恋人その2様』でございましょう? それと、こちらのキャサリン様は『恋人その1』様ですね。ところで、アイリーン様はとてもスラリとした素晴らしい美貌ですねぇ。舞台女優やモデルさんのようです」
「へ? まっ、まぁ、確かに私ほど美しい女はそうはいませんわ。ですから、私こそはカイド様に相応しいと思いますわ」
アイリーン様は得意そうにおっしゃいます。
「カイド様に相応しいねぇ。ちょっと、お二人で並んでいただけますか? うーーん、確かに美男美女で素晴らしいバランスです! よろしいんじゃないでしょうか? お似合いですね」
カイド様の銀髪とアイリーン様の金髪の対比が絶妙で、同じく美しいアメジストの瞳を持っています。まるでひと組のお人形さんのように見えるのでした。素晴らしい芸術品だと思います。
「でしたら、カイド様の妻の座を代わっていただけませんこと?」
これはお仕事なのです。妻の座には私の大事なお給料がかかっていますので、簡単に引き下がるわけにはまいりません。
「それは困ります。ですが、アイリーン様の存在は認めてさしあげます。もし、カイド様のお子様を懐妊なさったら私たちの養子にしたいです。きっと、見目麗しい子どもができますわね? 美男美女ですもの! とても楽しみにしていますわ」
私はカイド様の子供を妊娠することはありません。なので、代わりに生んでくださればとても好都合です。そう考えると、ついアイリーン様を応援したくなりました。
「アイリーン様! 恋人は他に4人いましてよ? ぜひ、頑張って勝ち抜いて、元気な赤ちゃんを生んでくださいねっ!」
「うっ・・・・・・うわぁぁぁーーん」
涙目になったアイリーン様は、泣きながら大広間から走り去ってしまいました。
(いったい、どうされたのでしょうか? 夫人方が愉快そうに笑うのはなぜでしょう?)
すっかり高位貴族の奥方様たちに気に入られた私なのでした。
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