7 / 20
6-2 R15?ジェイコブ・パーシーの末路(ジェイコブ視点)※ 死があります。閲覧注意。残酷ではない。
しおりを挟む
※ジェイコブ一家の死があります。残酷ではない(と思います)が閲覧注意。人が死ぬ場面は見たくない方は注意してください。ただ倒れて死ぬだけですが。
この氷と雪の空間から逃げ出したい……僕はこっそりこの地からの逃亡を企てた。
「父上、母上! ここはとてもじゃないが人の住むところじゃないよ。どこか暖かい地方に逃げよう! こんな所で一生終えるのはごめんだよ」
「そうだな、ここは酷く寒い。ワシらにはこんな暗く寒い場所は合わないぞ!」
父上もここの外気の寒さには我慢がならないようだった。
「そうよ! ノースリーブのドレスも楽しめないなんて最悪だわ。顔も洗えないし、まつげまで凍るじゃない!」
いつも厚化粧だった母上は、今では日が当たらない日々のお陰か色白でシミひとつない。これはプラスの作用だと思うのに、高級な白粉が手に入らないとぼやいていた。
まぁ、とにかくこのような状況で僕達はそれぞれが不満を抱えていたんだ。
ꕤ୭*
馬車に乗り込み極寒の地を去ろうと僕らは馬車を走らせた。やっとどうにかその最北端の地をぬけ出せたかと思うと、その先に見慣れない迫力ある大男が待っていた。周りにはたくさんの騎士達を従えてにこやかに微笑んでいるが目は少しも笑っていない。
「なんですか? あなた方は?」
僕は嫌な予感がして冷や汗が背中をつたう。
「私はスワンの伯父だ! つまりはドラモンド大帝国の皇帝だ。お前らの行動は逐一部下に見張らせていた。そろそろ逃亡する時期だと思っていたよ」
「ひっ!!」
僕達3人は恐怖の声をあげた。賢王と名高いが刃向かう者には容赦ない冷血な皇帝で有名だ。
「大公はなぁ、ああ見えて大層優しいのだよ。だってあの地は最高じゃないか? 雪熊と戯れて(そんなことをしたら死にます)、空には七色のカーテン。一日中太陽がでない日には寝放題だよ。しかもあそこの酒は天然氷を利用して造ってるから最高にうまいだろう? まさに天国! 寒いのが苦手な奴にはキツいがその分、家の中は暖炉が燃え上がっており暖かい。あれは罰ではなく褒美に近い。お前達の頭を本当に冷やさせるだけの場所だったのだよ?」
「え! あれがご褒美……あんな雪と氷だけの世界が?」
そう愚痴った僕は、その後の皇帝の言葉に自分の迂闊さを呪った。
「寒い場所がそれほどお気に召さないのなら、今度は私の領土の一番暑い地に招待しよう。砂漠で野垂れ死ぬかラクダ使いにでもなるんだな。私としては釜ゆでの刑にしたいのだが生憎スワンに『残酷な死刑はだめ』と言われてなぁ。直接殺すことはできないが、まぁ、結果的に死ぬぶんにはいいだろう。人はいずれ死ぬものだからなぁ。文句は言われまい。なにしろ、ほら? スワンは私の溺愛する妹が産んだ一人娘だ。ゆえにスワンはこの世の宝! それに少しでも傷をつけた! これは本来万死に値する」
ーーか、釜ゆでの刑だとぉ? なんでこうも恐ろしいことばかり言うんだよぉ~~!!
そして、今……僕らは灼熱地獄の砂漠にいる。熱いというより皮膚が痛い。見渡す限り木もなく人家もなくひたすら砂漠が広がり続ける場所に放り出されて、死にそうになっている。
あぁ、なんであの七色のカーテンの見えた氷の世界を逃げ出したんだろう? あそこでの生活は外気が寒くて熊がいるだけで、生活そのものは楽だったのかもしれない。父上とともに牧師として働き、それなりに知り合いもいて、酒だって飲めたし食べ物も美味しいサーモンが楽しめた。
なぜ、それを幸せと思えなかったのだろう……今は悔やむしかない。この砂漠で野垂れ死ぬ自分の運命をただ客観的にとらえていた。もっと早くにこのような心境になっていれば……
「私はもぉダメよぉ……」
そう言いながら倒れた母上。
無言で仰向けにひっくり返り泡を吹いて倒れた父上。
僕だけが生き残り……やがて僕も力が尽きて倒れた。
最期に思い浮かべた映像は、華やかな王都の風景ではなく……なぜか空に浮かぶ神秘的な七色のカーテンだった。
この氷と雪の空間から逃げ出したい……僕はこっそりこの地からの逃亡を企てた。
「父上、母上! ここはとてもじゃないが人の住むところじゃないよ。どこか暖かい地方に逃げよう! こんな所で一生終えるのはごめんだよ」
「そうだな、ここは酷く寒い。ワシらにはこんな暗く寒い場所は合わないぞ!」
父上もここの外気の寒さには我慢がならないようだった。
「そうよ! ノースリーブのドレスも楽しめないなんて最悪だわ。顔も洗えないし、まつげまで凍るじゃない!」
いつも厚化粧だった母上は、今では日が当たらない日々のお陰か色白でシミひとつない。これはプラスの作用だと思うのに、高級な白粉が手に入らないとぼやいていた。
まぁ、とにかくこのような状況で僕達はそれぞれが不満を抱えていたんだ。
ꕤ୭*
馬車に乗り込み極寒の地を去ろうと僕らは馬車を走らせた。やっとどうにかその最北端の地をぬけ出せたかと思うと、その先に見慣れない迫力ある大男が待っていた。周りにはたくさんの騎士達を従えてにこやかに微笑んでいるが目は少しも笑っていない。
「なんですか? あなた方は?」
僕は嫌な予感がして冷や汗が背中をつたう。
「私はスワンの伯父だ! つまりはドラモンド大帝国の皇帝だ。お前らの行動は逐一部下に見張らせていた。そろそろ逃亡する時期だと思っていたよ」
「ひっ!!」
僕達3人は恐怖の声をあげた。賢王と名高いが刃向かう者には容赦ない冷血な皇帝で有名だ。
「大公はなぁ、ああ見えて大層優しいのだよ。だってあの地は最高じゃないか? 雪熊と戯れて(そんなことをしたら死にます)、空には七色のカーテン。一日中太陽がでない日には寝放題だよ。しかもあそこの酒は天然氷を利用して造ってるから最高にうまいだろう? まさに天国! 寒いのが苦手な奴にはキツいがその分、家の中は暖炉が燃え上がっており暖かい。あれは罰ではなく褒美に近い。お前達の頭を本当に冷やさせるだけの場所だったのだよ?」
「え! あれがご褒美……あんな雪と氷だけの世界が?」
そう愚痴った僕は、その後の皇帝の言葉に自分の迂闊さを呪った。
「寒い場所がそれほどお気に召さないのなら、今度は私の領土の一番暑い地に招待しよう。砂漠で野垂れ死ぬかラクダ使いにでもなるんだな。私としては釜ゆでの刑にしたいのだが生憎スワンに『残酷な死刑はだめ』と言われてなぁ。直接殺すことはできないが、まぁ、結果的に死ぬぶんにはいいだろう。人はいずれ死ぬものだからなぁ。文句は言われまい。なにしろ、ほら? スワンは私の溺愛する妹が産んだ一人娘だ。ゆえにスワンはこの世の宝! それに少しでも傷をつけた! これは本来万死に値する」
ーーか、釜ゆでの刑だとぉ? なんでこうも恐ろしいことばかり言うんだよぉ~~!!
そして、今……僕らは灼熱地獄の砂漠にいる。熱いというより皮膚が痛い。見渡す限り木もなく人家もなくひたすら砂漠が広がり続ける場所に放り出されて、死にそうになっている。
あぁ、なんであの七色のカーテンの見えた氷の世界を逃げ出したんだろう? あそこでの生活は外気が寒くて熊がいるだけで、生活そのものは楽だったのかもしれない。父上とともに牧師として働き、それなりに知り合いもいて、酒だって飲めたし食べ物も美味しいサーモンが楽しめた。
なぜ、それを幸せと思えなかったのだろう……今は悔やむしかない。この砂漠で野垂れ死ぬ自分の運命をただ客観的にとらえていた。もっと早くにこのような心境になっていれば……
「私はもぉダメよぉ……」
そう言いながら倒れた母上。
無言で仰向けにひっくり返り泡を吹いて倒れた父上。
僕だけが生き残り……やがて僕も力が尽きて倒れた。
最期に思い浮かべた映像は、華やかな王都の風景ではなく……なぜか空に浮かぶ神秘的な七色のカーテンだった。
6
お気に入りに追加
2,415
あなたにおすすめの小説
【完結】妹ざまぁ小説の主人公に転生した。徹底的にやって差し上げます。
鏑木 うりこ
恋愛
「アンゼリカ・ザザーラン、お前との婚約を破棄させてもらう!」
ええ、わかっていますとも。私はこの瞬間の為にずっと準備をしてきましたから。
私の婚約者であったマルセル王太子に寄り添う義妹のリルファ。何もかも私が読んでいたざまぁ系小説と一緒ね。
内容を知っている私が、ざまぁしてやる側の姉に転生したって言うことはそう言うことよね?私は小説のアンゼリカほど、気弱でも大人しくもないの。
やるからには徹底的にやらせていただきますわ!
HOT1位、恋愛1位、人気1位ありがとうございます!こんなに高順位は私史上初めてでものすごく光栄です!うわーうわー!
文字数45.000ほどで2021年12月頃の完結済み中編小説となります。
許婚と親友は両片思いだったので2人の仲を取り持つことにしました
結城芙由奈
恋愛
<2人の仲を応援するので、どうか私を嫌わないでください>
私には子供のころから決められた許嫁がいた。ある日、久しぶりに再会した親友を紹介した私は次第に2人がお互いを好きになっていく様子に気が付いた。どちらも私にとっては大切な存在。2人から邪魔者と思われ、嫌われたくはないので、私は全力で許嫁と親友の仲を取り持つ事を心に決めた。すると彼の評判が悪くなっていき、それまで冷たかった彼の態度が軟化してきて話は意外な展開に・・・?
※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
私が公爵の本当の娘ではないことを知った婚約者は、騙されたと激怒し婚約破棄を告げました。
Mayoi
恋愛
ウェスリーは婚約者のオリビアの出自を調べ、公爵の実の娘ではないことを知った。
そのようなことは婚約前に伝えられておらず、騙されたと激怒しオリビアに婚約破棄を告げた。
二人の婚約は大公が認めたものであり、一方的に非難し婚約破棄したウェスリーが無事でいられるはずがない。
自分の正しさを信じて疑わないウェスリーは自滅の道を歩む。
ほらやっぱり、結局貴方は彼女を好きになるんでしょう?
望月 或
恋愛
ベラトリクス侯爵家のセイフィーラと、ライオロック王国の第一王子であるユークリットは婚約者同士だ。二人は周りが羨むほどの相思相愛な仲で、通っている学園で日々仲睦まじく過ごしていた。
ある日、セイフィーラは落馬をし、その衝撃で《前世》の記憶を取り戻す。ここはゲームの中の世界で、自分は“悪役令嬢”だということを。
転入生のヒロインにユークリットが一目惚れをしてしまい、セイフィーラは二人の仲に嫉妬してヒロインを虐め、最後は『婚約破棄』をされ修道院に送られる運命であることを――
そのことをユークリットに告げると、「絶対にその彼女に目移りなんてしない。俺がこの世で愛しているのは君だけなんだ」と真剣に言ってくれたのだが……。
その日の朝礼後、ゲームの展開通り、ヒロインのリルカが転入してくる。
――そして、セイフィーラは見てしまった。
目を見開き、頬を紅潮させながらリルカを見つめているユークリットの顔を――
※作者独自の世界設定です。ゆるめなので、突っ込みは心の中でお手柔らかに願います……。
※たまに第三者視点が入ります。(タイトルに記載)
【完結】公爵令嬢に転生したので両親の決めた相手と結婚して幸せになります!
永倉伊織
恋愛
ヘンリー・フォルティエス公爵の二女として生まれたフィオナ(14歳)は、両親が決めた相手
ルーファウス・ブルーム公爵と結婚する事になった。
だがしかし
フィオナには『昭和・平成・令和』の3つの時代を生きた日本人だった前世の記憶があった。
貴族の両親に逆らっても良い事が無いと悟ったフィオナは、前世の記憶を駆使してルーファウスとの幸せな結婚生活を模索する。
もう二度と、愛さない
蜜迦
恋愛
エルベ侯爵家のリリティスは、婚約者であるレティエ皇太子に長年想いを寄せていた。
しかし、彼の側にはいつも伯爵令嬢クロエの姿があった。
クロエを疎ましく思いながらも必死に耐え続ける日々。
そんなある日、クロエから「謝罪がしたい」と記された手紙が届いて──
(完)妹の婚約者を誘惑したと言うけれど、その彼にそんな価値がありますか?
青空一夏
恋愛
私が7歳の頃にお母様は亡くなった。その後すぐにお父様の後妻のオードリーがやって来て、まもなく義理の妹のエラが生まれた。そこから、メイドのような生活をさせられてきたが特に不満はなかった。
けれど、私は、妹の婚約者のライアン様に愛人になれと言われ押し倒される。
横っ面を叩き、急所を蹴り上げたが、妹に見られて義理の母とお父様に勘当された。
「男を誘惑するのが好きならそういう所に行けばいい」と言われ、わずかなお金と仕事の紹介状をもたされた私が着いたのは娼館だった。鬼畜なお父様達には、いつかお返しをしてあげましょう。
追い出された時に渡された手紙には秘密があって・・・・・・そこから、私の人生が大きくかわるのだった。
冷めた大人っぽいヒロインが、無自覚に愛されて幸せになっていくシンデレラストーリー。
残酷と思われるシーンや、気持ち悪く感じるシーンがあるお話には★がついております。
ご注意なさってお読みください。
読者様のリクエストによりエンジェル王太子の結婚を加筆しました。(5/12)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる