（完）婚約破棄と白い子犬

４ グレーのドレスって素敵なの？ （カサンドラ視点）ライザック様のちょっとした意地悪？

私が寮に戻ると、あの子犬がいなくなっていた。内緒で飼っていたので、誰に聞くこともできなかった。
レナル寮長に、それとなく聞こうとしたが、すごく怖い顔をされただけだった。

おかしいな･･････あの怪我では、どこにも行けないはずだけれど。あの犬が、こないだ絨毯の上でおしっこをしてしまったので、つい叩いてしまった。叩き出すと、なぜかやめられなくて、気がついたときにはずいぶんとボロボロになっていた。仕方がないわよね？　あの犬がまぬけなのがいけないのよ･･････

私は、動物なんて大嫌いだ。臭くて、鳴き声もうるさい･･････なぜ、この犬を取り上げたかなんて決まっている！　ただ、マリーアンを泣かせたかっただけなのだ。

マリーアンは、とても美しいし、公爵令嬢の私より上品だった。おまけに、前から目をつけていたライザック様の婚約者にまでおさまった。このまま行けば、私は王太子と結婚して王妃にでもならない限り、マリーアンより下の身分になってしまう。筆頭公爵の嫡男と結婚して公爵夫人になるマリーアンは臣下の立場では最高の身分だ。私は公爵令嬢ではあるが、お兄様が家督を継ぐから、嫁ぎ先によって、私の身分が決まる。

あぁ、むしゃくしゃするわ！　と思って、学園の裏庭を通り抜けて森のほうに行こうとしたら、マリーアンが嬉しそうに子犬を連れて散歩をしていた。意地悪がしたくて、たまらなくなった。ただ、それだけのこと･･････

でも、すぐに後悔したわ。犬の世話って、すごく大変だった。毎日のお散歩は、途中からするのをやめた。そうしたら、ストレスなのか、キャンキャンうるさく無駄吠えするし。ちゃんと、犬用トイレを用意したのにそこにしないし。

マリーアンには、いずれ返そうと思っていたけれど、怪我だらけの子犬を返すのもまずい気がした。そのうち、ライザック様はマリーアンと婚約解消をしたから、嬉しくて話しかけていたら気に入られた。

私の魅力ってすごい！　あのマリーアンを棄てて私が気に入られるなんて最高だわ、と思った。

あぁ、だけど、あの子犬はどうしよう･･････まぁ、いいか･･････逃げちゃったものはしょうがないわ･･････

私は、そんな犬のことより来週ある学園のパーティのことのほうが気になった。

「ライザック様、来週のパーティですけれど、何色のドレスを贈っていただけますかぁ？」

ライザック様に聞きにいくと、ライザック様は、

「そうだね･･････グレーなんていいんじゃないかな？　楽しみにしていてね」

とおっしゃった。グレーのドレスって、流行ってたかしら？･･････