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12 断罪のはじまりー4 オクタビアの醜悪な犯罪

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▹◃┄▸◂┄▹◃┄(オクタビア視点)▸◂┄▹◃┄▸◂┄▹◃


「アーソリンは、あの決断力のある冷静な心を壊したかったのでエンジェルトランペットを用いました。あれは実に優秀な毒なのです。花・葉・樹液の全てに毒があるがとても綺麗な花だ。これは、人を錯乱状態にさせる作用がありましてね。妄想・幻聴・めまい・錯乱が起こっていきます。アーソリンはすっかり気が弱くなり、なぜか私をとても愛していると思い込むようになったようです。脳に毒が回ったんですね・・・・・・なんて哀れで・・・・・・なんて滑稽なんだ! あれは、おかしかったなぁーー。買収した侍女達に命じてアーソリンが食べるもの全てに、毒を薄めたものを垂らさせただけなのですがね。」

「ほぉーー。恩ある上司の家族を次々と殺し、正当な跡継ぎを奴隷として売る! 素晴らしい悪党だ。儂はその毒の効果にとても興味がある。金なら払うから、その侍女が書いた観察日記とやらも売ってくだされ」

 おぉ、こいつはなんにでも金を出す金の卵だな。新たな仲間ができたようで嬉しいぞ。もっと、楽しんでもらおうかな。

 ふと、エイヴリー(ヴァネッサ)の方を見るとお腹いっぱいになって、ウトウトしているところだった。侍女に大切な娘を部屋に連れて行かせるように頼む。私のかわいい娘よ、父はお前の為にたくさんの金と地位を確保してやるよ。だから、安心して夢のなかで微笑んでいればいい。

 妻は毒の話に興味津々で、さきほどからしきりにうなづいていた。私達は科学者っぽいことが大好きだからな。やはり、IQが高い私と妻は気があう。IQなど測ったことはないが、こんな完全犯罪を成し遂げた私が低いわけはないからな。

「ここの侍女や従者は全て貴方のいいなりなのですか?」

 ベールを被った女性の言葉に私は深くうなづいた。

「いいなりですよ。執事のエマーソンの他はみんな薬漬けだ。中毒性のあるものを、私があらかじめ飲ませたんだ。使用人用の飲み水に垂らすだけで、皆がいいなりになった。これも、ある植物から作るのですがね・・・・・・自然とは偉大ですね? 毒はそこかしこに溢れている」

「アーソリンとエイヴリーの飲み水だけは、何も入っていないものにしたのはなぜです?」

 ベールを被った別な女性が私に尋ねた。私は酔っていたし、金も手に入りとても上機嫌だった。なんでも教えてあげたくなるほど、今は楽しい。

「決まってるでしょう? 楽しむ為ですよ? 思いっきり痛めつけるには狂ってしまっては困る。狂うってある意味、ご褒美ですよ? 正常な判断もできず脳が破壊されて狂っていく過程には、心の痛みは伴わない。それじゃ、つまらないでしょう? エイヴリーの場合は、正常な頭の者を迫害して虐めて追い詰める楽しいゲームにしたかった。途中でラベンダーという邪魔がはいりましたが、あなたの部下だから許した」

「あっははは! たいしたワルだなぁーー。実にいい話を聞かせてもらったよ。さてと、儂らはそろそろ帰るとしよう。貴方達には、これから素晴らしいことがおこるだろう。あぁ、一つお願いがある。執事のエマーソンも売ってくれ。私の奴隷と仲良しならばセットで買いたい」

「おぉーー。それは願ってもないことです。どう始末しようかと迷っていたところです」

 コクオはさらに1000万バギーを払ってくれて、私達は親友になった。秘密を打ち明けあうと人間は心が通い合えるようになるのだ。ん? 秘密を話したのは私だけだった気もするが、まぁ金が入ったのだからそこは気にしない。

「名残惜しいですね。もう、すっかり友人のような気がする。また、会えますか?」

 私は是非ともこの金がなる木を手放したくない。定期的に会って、さっきのような楽しい会話をしてご褒美に金をもらえたら最高の友人関係になれる。

「あぁ、もちろん、会えるとも。オクタビアが会いたくなくても、すぐに会うことになるだろう」

 コクオは蕩けるような笑顔でそう言い、私の肩をポンポンと叩いた。なにか、瞬間チクッとしたがすぐに痛みは消えた。

 私は屋敷の外まで行き、その豪奢な7台の馬車を見送った。すごい金づるを捕まえたぞ!


※8台で来た馬車の1台はクラークがエイヴリーを王宮に連れて行ったので7台に減りました。



▹◃┄▸◂┄▹◃国王陛下視点┄▸◂┄▹◃┄▸◂┄▹◃


「これほど邪悪な男だったとは呆れましたね! あの恐ろしい話の前に、エイヴリーをクラークに王宮に連れていかせたことは英断でしたわ! 祖父母や母親が父親に毒殺されていたなど、あの場では聞かせたくないですよ。でも、なぜ、あそこで裁いてしまわなかったのです! 私は終始、イライラしていましたわ」

 王妃が、馬車に乗り込んだ途端に儂を責めるが、これにはわけがある。
 
「王妃よ。ここで、裁いてしまってはオクタビアのように楽しめないではないですか? 少しづつ、不幸の沼にはまるように導いていくのです。あの者は、エイヴリーの祖父母をそのように殺した。私も、あやつらを一気に殺す気はない」
 母上が厳しい声でおっしゃった。私と同じ気持ちだったようだ。

「まさしく、その通りですな、母上様。あの話を聞くまでは、儂もあそこで一気に裁こうと思ったが。毒殺の話をきいたら、あのまま捕らえて極刑では足らない気がしました」

「まぁーー。では、どのようにしますの?」

「そうだな・・・・・・偽エイヴリーをまずは女伯爵にさせてみるか?」

「ふっ。同じ事を考えているようだね?」

 母上の苦笑が漏れたが、ベールに隠された瞳は、おそらくオクタビアへの憤怒に彩られているだろう

 

 
オクタビアを不幸まみれにしてから、極刑にしたい。

 まぁ、今夜のあいつは吐き気と下痢で悩まされるだろうから・・・・・・ささやかな1個目の不幸だな

 あの男の肩を毒針で刺してやった。毒の専門家はこの儂だ。王族はさまざまな刺客に命を狙われるため、毒の研究や解毒剤の開発は必須事項だ。もちろんその開発に人間で実験などしない。実験用の大きな虫は王家の裏庭で飼育されている。

 毒をもつ植物はそこかしこにあふれ、王家の庭園にも植えられている。さっきのは、ごく薄い毒性のもので一晩苦しむだけで済む。

 オクタビアよ。お前には地獄の門が開いたばかりだ・・・・・・


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