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3 あれ? やっぱり追放されちゃった

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 私は微弱な魔力をもつその他大勢の聖女として神殿にいて、力のある聖女様達と祈りを捧げたが当然隅っこのほうで本来の力の一割ほどしか出さずにいた。

 ある日、魔獣が大量発生し神殿を取り囲んだ。前と違う。以前はこんな場面はなかったはずなのに、今や神殿の周りは魔獣が埋め尽くし神官達も聖女も右往左往していた。

 日頃はふんぞりかえっている神官や力があるとされる貴族の聖女達が、こんな時は我先にと逃げようとするのが滑稽だった。

 先頭きって逃げようとしたのはもちろんハニワだった。命を賭けてでも人民を守らなければならない大聖女様が一番に助かろうとする浅ましさ。

「魔獣よ、消えよ! 魔獣よ、消えよ」
 覇気のない声で唱え、泣きながら逃げるハニワ。そんなもので退治できるほどここにいる魔獣達は下等魔獣ではない。





 私は魔獣が神殿に侵入し神官達を襲うのを黙って見ていた。彼らは私を迫害し死に追いやった奴らだ。私が守るべき者達ではない。

 けれど、神官達が襲われるのを見るぶんには見ない振りができた私も、まだ私より年若い下女や、親しい料理人、庭師のおじさん達が襲われるのを見殺しにはできなかった。

 前の人生でも人を助けた結果、追われた。この人生ではそうならないと決めたけれど・・・・・・

「全ての魔獣よ、消滅せよ。全ての邪悪な者は跡形もなく散れ!」叫びながら、心の中で逆さまに唱える。
――レチクナモタカトア・・・・・・レチクナモタカトア――

 言っててほんと面倒なのよね。なぜもっとスマートな呪文じゃないの? 一部分が逆さまに言わないと発動しない聖女の力。

 その呪文とともにパンとシャボン玉がはじけるように姿が消えていく魔獣達。


 泣きながら逃げまどっていたハニワが高笑いをあげた。

「私がさきほどから唱えていた呪文のおかげです。私こそがこの魔獣達を倒したのです!」

 魔獣がすっかりいなくなったところでタイミングよく駆けつけた王太子は、ハニワに結婚を申し込んでいる。
「ハニワこそは私の妃になるのに相応しい最強の魔女だ!」

――あぁ、こういう展開ね? 良いと思う。お幸せにーー

 そんなふうに暢気に思って見ていた私と目が合ったハニワはニヤリと笑った。

「あのアネットはこれ見よがしに呪文を叫び、私の手柄を横取りしようとした悪女ですわ! 追放してくださいませ」

ーーふぇ? やっぱり助けると追放されるのか・・・・・・今回も死ぬのかな・・・・・・


 王太子殿下の冷めた視線が私の容姿をチェックしているかのように上下に動く。

「うん、容姿も下の中。いらんな。追放!」

――ちょ、ちょっと、待ってよぉーー。どんな基準? やっぱ、こんな国滅びてしまえ!





 そして今、前回と同じく森を歩いております。前回は追われて逃げていた。今は1週間ぶんの食料と水とお着替えが詰まったリュックを持たされて、隣国との境の森の手前で馬車から降ろされた。

「その森をまっすぐ行くと隣国だから、元気でなぁーー!」
 にこやかに手を振る王家の騎士に手を振り返した私。

――前回よりちょっとましな展開だよね?

 暗い森でも聖女の力で灯りをともし、持たされたテントを広げてキャンプ。途中で出てきたイノシシ型の魔獣を倒すと火を起こしてジュウジュウと焼くのであった。







ꕤ୭* 隣国の王太子フィリップ視点


 魔獣との戦いの訓練として国境の森に足を踏み入れたものの、あまりに強力な魔獣ばかりがいて苦戦つづきだった。

 この森を甘く見ていた私は、愚かなこの訓練自体を思いっきり後悔していた。怪我をした騎士達の中には死にそうな者もいて・・・・・・なのになんでこんな森の中で鼻歌が聞こえるんだよ?

「いのししよぉーー♪ 焼けておしまい♫こんがりとぉーー♪」

 ちょっと音の外れた可愛らしい声をたどって行くと黒髪の若い女性が、大きな魔獣の串刺しを薪で炙っているのだった。

――え? こんな森に女?
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