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新しい一歩(大将軍の養女になる)

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「スズラン様。これから宮廷に向かいますので、どうぞこの輿に乗ってくださいませ」

「はい、よろしくお願いします」

私は前回とは違い、素直に輿に乗る。ふかふかのクッションが置かれた贅を尽くした輿。私は、ゆったりとした気持ちで身を横たえた。瞼をそっと閉じると、うとうとして眠ってしまったようだ。

「スズラン様。宮廷に着きました。お起き遊ばせ。姫様、姫様。」

亡き皇后様の侍女長が私に呼びかける。起きたばかりの私に微笑みかける侍女長の名はシンイーと言った。シンイーに手をとられて、輿を降りるとそこには荘厳な建物がひろがる。 私は、深く息を吸い込み吐き出す。一歩、一歩、足が震えないように慎重に歩いて行く。



宰相様がいらっしゃる部屋に案内されると、以前と同じような顔ぶれが並んでいた。ここは落ち着いて、ゆっくりと、この方達のお話を聞かなければならないと思った。

「スズランと申します。お初にお目にかかります」

以前は、このような挨拶もしなかったように思う。どういう場合でも挨拶は大事なことなのに‥‥

「おぉ、なんと素晴らしい!まさに皇后様が生き返ったかのようだ!これなら、皇帝もきっと‥‥」

宰相様が嬉しそうにおっしゃるなか、一番背が高く屈強な身体をもった茶色の立派なあごひげを生やした男が近づいてきた。

「私は、この国の大将軍のチェンと言う。私は先だって愛娘を亡くしたばかりだ‥‥養女になって‥‥」

「わかりました!ふつつか者ですが、よろしくお願いいたします」

私は、このチェン大将軍が、あの裁判の時に悲しい眼をしていたのを覚えていた。ここで、生きると決めたからには最良の道を選ばなければならない。前と同じ道は絶対に選ばない‥‥

「そうか?我が妻も喜ぶだろう!宰相!決まりだ!書類を用意しろ。屋敷に連れて帰る」

「はぁ?スズラン様は後宮にすぐにはいらなければなりません!皇帝がお待ちかねです!」

「ばかを申せ!なにも知らない田舎娘をいきなり放り込むなど。オオカミの群れにウサギを放り込むようなものよ!まずは半年、我が屋敷で基礎的な教育を受けさせなければなるまい」

「その通りでございます。私もお手伝いいたしましょう。皇后様に生き写しの方です。どうして、見ないふりなどできましょうか?」

「おぉ、心強いぞ!シンイー殿が付いてくれようとは。では、では、参ろう」

チェン大将軍は、豪快に笑いながら宰相を軽く小突くと、書類をださせて、サインをした。

「私の妻は、少し気難しい。けれど、根はいい女だ。さぁ、参ろうか?我が娘よ!」

私は、私に差し出されたその大きな手の上に自分の手をそっとおいたのだった。

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