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3 ガマ様のお導き! そして戦うガマ様

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なぜエリザベスがこのトイレの情事に気がついたかはガマ様のお導きであるとエリザベスはつくづく思った。


午前中に提出すべき書類がバッグにないことに気づいたエリザベスは、午後からのスケジュールを繰り上げて予定より早めに屋敷に戻ってきた。庭園を横切ったところ、東屋の奥に設置したトイレの前にガマガエル達がずらりと並んでいたのだった。そのなかでもひときわ大きなガマガエルはエリザベスのほうに跳ねながら呼びかけた。それはまるでこちらに来いとでも言うような仕草であった。

エリザベスがそのトイレに近づくと男女の怪しげな声が聞こえて……。それはこのような場所から聞こえてきていい声ではなかった。

トイレの緊急用の外からも開けられる鍵を、屋敷から急いで取ってきたエリザベスがそっとトイレの扉を開けたら……つまりは……アレだ……トイレでこの二人はいちゃついていたのだった。








エリザベスに詰め寄られて一瞬ひるんだハーマンだが、そこはクズらしく開き直る。
「見られてしまったのなら仕方ないな。だが夫婦になったばかりで離婚なんて世間体が悪いからできないよね?」
ハーマンはそう言いながらニヤリとエリザベスに笑いかけてきたのだ。

「ふふふ。私も伯爵家の養女になったばかりで追い出すなんて世間体が悪いですわよね? まして、夫と妹に裏切られた間抜けな姉のレッテルを貼られるなんて屈辱でしょう?」
マギーは楽しそうに笑い声をあげた。

「離婚歴があると女性にとってはどのような理由でも後ろ指を指されるよね? 婚約破棄と違うんだし」とハーマン。
「私は伯爵令嬢にもうなっているはずですわよね? 今日の午前中に書類を提出するっておっしゃっていましたものねぇ? お義父様は私を伯爵家の籍にいれてくださると約束してくれたもの! そんなに簡単には追い出せませんわよ」とマギー。

「ばかばかしい。このような理由があればいくらでも追い出せましてよ? お父様のたっての希望でマギーを伯爵家の籍にいれることを一度は承諾した私ですが、このような場面を見たらその気持ちはすっかりなくなりましたわ。お父様はもう引退された方です。決定権は私にあります」
エリザベスの言葉にマギーが残忍な微笑みを浮かべた。

「ふん! むかつくわねぇ! ねぇ、ここには誰もいませんわ。お姉様とハーマンと私だけ。このトイレは東屋と木々の影で隠れて屋敷からは死角になっておりますわ。ということは……チャンスですわねぇ」
咄嗟に拾い上げた大きな石をエリザベスに向かって振り下ろそうとするマギーに、向かって行くのはガマガエルの大群だ。

「ケロケロケロケロケロ! ケロロッロ!」
「ケロケロケロケロケロ! ゲロゲロゲローーン」
「ケロケロケロケロケロケロケロケロ
             ケロケロケロケロケロケロケロケロケロ!!」

人間のように連携プレイをとりながらマギーを攻撃していくガマガエル部隊である。見事にイボから毒をマギーに浴びせ続けるガマ様達は一歩も引かない。マギーはガマガエルを石で殴ろうとするが巧みにかわされてかすりもしないのだった。


「痛い! 痛い! いたぁーーい!! 目に入ったわ。見えない、見えない! 目が……目がぁーー!!」
マギーは目にも口にもガマガエルの毒が入り悶絶してうずくまってしまった。

それをあっけにとられて見ていたハーマンは、ガマガエルから次々と小便を浴びせられていた。

「うわぁーー! やめろぉーー!! くっ、臭いよ。止めろってばぁ。チックショーー!!」
ハーマンは逃げまどいすぎて池に転がり落ち溺れかけるのだった。
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