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落とした時計

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「同じ魔法科の仲間だろ?家まで送って行くよ」
私が返事をする間もなく、ディラン様は私をお姫様抱っこした!!

廊下ですれ違う学生達の視線が恥ずかしい。

サイラスが向こうから歩いてくるのが見える。

怖い顔つきで、私を睨み付け、なにか言おうとしたみたい。
でも、サイラスは黙っている。


「ねぇ、知ってる?は拾っても決して元通りじゃないってこと?」
ディラン様はサイラスに向かって冷たく言い放つと、私を優しく抱きなおして馬車へと運んでくれた。

落とした時計ってなんことだろう?
よくわからない‥‥





家まで送ってもらう公爵家の馬車のなかで私はつぶやいた。

「魔法なんてできたって、ちっともいいことなんかない‥‥」

前に座っていたディラン様が朗らかに笑いながら、隣に座ってきて、私の髪を優しく撫でながら囁いた。

「ポージ・スライス嬢、めそめそして下を向いていたらなにも見えない。この世に男はサイラスだけ?
君が住むことができるのはこの国だけ?」

ディラン様は、いつも朗らかで余裕があって同じ歳とは思えない。





「アイラ様は、今日はダカーリ・チキン様と一緒ね。」
ナタリーは呆れた表情で言うとため息をつく。 

ダカーリ・チキン様は騎士団長の令息でブラウンの髪と瞳をもつ筋肉が自慢の男だ。

私達が資料室にきたのと入れ違いに、アイラの後を、たくさんの資料を持って歩いている。

「ありがとーー。ダカーリ様は優しいのね。重たくて手がもげそうだったわ」
アイラのハスキーな声が聞こえる。

「彼女って、艶っぽい声をだすわね」
ナタリーは苦々しい声で言った。

私の親友だったアイラは、あのぐらいの資料なら軽々ともちあげられたはずだけど‥‥





カーシン・エッグは大司教の令息だ。

くるんとしたブロンドの巻き毛でソバカスのある幼い顔つきは子犬のように愛らしい。

放課後、学園の図書館でナタリーと課題のレポートを仕上げていると、アイラがカーシンと図書館の本を整理していた。

「ごめんね、アイラ嬢。手伝ってもらって」

「ううん、いいのよ。二人でやった方が早いし、私は今ちょうど暇だったからぁー」
アイラのハスキーな声はいつ聞いても素敵だ。


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