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2 ダーシィの驚き

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(ダーシィ視点)

 ある日の王立学園でのお昼休み、そこにクララはいない。彼女は今、ちょうど席をはずしている。私とイーサン様だけの空間がそこにはある。もちろん、周りには他の生徒もいるけれど。

「なにかお悩みですか? イーサン様」
 
 ずっとため息をついているイーサン様に、私は愛想良く尋ねた。彼は私の親友クララの恋人で、彼女を溺愛しすぎる男性なのだ。そして、私が密かに憧れている男性でもある。

「もっとクララに私を好きになってほしいと思っているのさ。あの可愛い表情がたまらなく愛らしいんだけどね。のが、なかなか難しいんだなぁーー」

 イーサン様の言っている意味がわからない。好きになって欲しいねぇ。もう充分クララはイーサン様が好きなはずだ。


「そうですねぇ。嫉妬は恋のスパイスになりますよね? 私を好きなふりをしたら、きっともっと愛されますよ?」

(こんなくだらないことを言ったら怒るかしら? まぁ、いいわよね。冗談です、って後で誤魔化せばいいもの)

「いいね! とても素晴らしいアイディアだよ!」

「えぇ、すいません。ただの冗談・・・・・・え? 今、なんておっしゃいましたか?」

「だからさ、とてもいいアイディアだと言ったのさ」

 なぜ、これほどこの話に乗ってくれたのかわからない。誰が聞いても荒唐無稽な話だと思うけれど? 

 それから二人で、クララにヤキモチを焼かせる作戦会議をした。イーサン様は私にラブレターを出すという案を考えつき、私は王立美術館に3人で行くという案を提案した。





 ラブレターの時も王立美術館の時も、クララが泣きそうな顔をする度に、なぜかぞくぞくするほど快感を覚えた。クララは親友のはずで大好きなつもりだったのに、彼女が悲しそうな切ない顔をしたり困った顔をすると、もっと意地悪したくなる気持ちを抑えられない。

 どうかしている・・・・・・でも楽しくて堪らない。

 だから私はクララに、もっともっとイーサン様と仲がいいふりをした。





 でも私達はやりすぎたのだ。クララは学園に来なくなり、私は不安に駆られる。 

 「事情は娘から聞いていますよ。親友だったのにクララを追い詰めて楽しかった? クララは隣国に行きました。もうここには帰ってきませんよ」

 ローワン伯爵家を訪問すると、クララのお母様が私に冷たい眼差しで、そうおっしゃった。

「え! だって、これは冗談でした。ちょっとだけからかっただけで、悪意なんてありません!」

「あの子は自殺未遂まで起こしたんですよ、ダーシィ。あなたはけっして許しません。悪意なんてあろうとなかろうと娘を傷つけたのは事実でしょう? あなたには、きっと天罰が下るでしょう」

 私はなんてことをしちゃったんだろう・・・・・・クララは大事な親友だったはずなのに・・・・・・

 私はイーサン様に、急いでクララのことを報告する。イーサン様はすっかり落ち込んでしまった。

 あんまりにも元気がなくなり寝込んでしまったので、私はイーサン様に『ずっと私が側にいて励ましてあげますよ』と伝えた。

 
「そうだね。君とはきっと気が合うものね」
 
 彼は満面の笑みで答えた。

 その微笑みが少し怖く感じたけれど、私はまだ気がついていなかった・・・・・・彼の本当の怖さを・・・・・・
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