2 / 8
2 早速のざまぁはレモン水
しおりを挟む
「ちょっとぉーー! 私の娘のくせに自ら死を選ぶってへなちょこさんねぇ。しっかりなさいな!」
――え? この声は誰? 私の娘って・・・・・・?
「ほら、お母様よ。あなたを産んですぐに亡くなったレディローズ女公爵です。全く情けない。あなたは押しも押されぬ次期女公爵ですよ! マヨーズラ侯爵家の三男なんかにコケにされて! ここは悲しむところではなくってよ! 怒るところなのよ! いいこと! やられたらやり返す! 倍返し、いいえ、3倍返しですわ!」
「3倍返し? そんなこと私にできるでしょうか? それにお母様、なぜ私の頭の中にいらっしゃるのですか?」
「それはね、あなたの守護霊として赤ちゃんの頃から見守っていたのにあなたときたら歯がゆいことばかりするのですもの! あのおバカも私が亡くなったらさっさと再婚しゃがって恩知らずが! だいたい、あいつ(マドンナの父親のことです)は昔から優柔不断でお人好しのおバカだったわ。まぁ、モテすぎた私の気まぐれで夫にしたようなものよ。ふん!」
「モテすぎて・・・・・・本当に私はお母様の娘なのでしょうか? その強気な物言い・・・・・・とても私にはできません」
私はそう言いながらも自分自身が情けなくなっていた。
私のお母様はレディローズ女公爵で絶世の美女だった。私と同じストロベリーブロンドで淡いピンクの瞳は女性達の嫉妬と羨望の的だったとか。顔立ちはこの世のものとは思えないほど美麗で儚げな容姿とは裏腹に強く逞しい女傑。
諸外国の王子達を手玉にとり、自由奔放に恋愛を楽しみ結婚したのは格下のお人好しのお父様だった。私の性格はどちらかと言えばお父様似で、髪と瞳はお母様似だ。
「私はお母様と似ているのは髪と瞳の色だけです。少しも美しくありません」
消え入りそうな声でささやく。
「ばかね! 女性は美しさだけに価値があるわけではないわ。それにマドンナが産まれた時は私に生き写しだった。そのちょっとふっくらしすぎた体型は早速運動と食事療法が必要ね。それにしても私は太る体質ではなかったのに、娘のあなたはなぜこんなことになったのかしら?」
お母様の言葉に恥ずかしさでいっぱいになった。
夕食の時間に私はいつものように席につくが、今日はお父様の姿はなかった。すぐにレモン水が運ばれてきて一口飲むと、お母様が『うげっ』と妙な声を出した。
「どうしました?」私はお母様に頭の中で尋ねるとお母様は不思議なことを言ったの。
「レモン水がこんなに甘いわけないじゃない! これじゃかき氷にかけるシロップよ! マドンナはいつもこんなものを飲んでいたの?」
「え? はい。物心ついたときからこんなかんじでしたよ」
「ちょっと入れ代わらせてもらうわよ。マドンナは見ていなさい」
頭の中でお母様がおっしゃると、お母様が私の表面に浮上してくるような感覚がした。なんだか、自分であって自分でないみたい。
「ちょっと、そこのメイド! この水を代えなさい」
私の声が少しきつめにメイドに命令していた。
「あら、マドンナ。どうしたの? いつもの水でしょう。たっぷり飲みなさい。レモン水はカロリーゼロよ。飲めば飲むほど美容にいいわ」
義母のサマンサと妹のミユキーナはごくごくとレモン水を飲んだ。レモン水はウォーターピッチャーに入れられて各々の前に一個ずつ並べらていた。
「そうね。サマンサ様のレモン水がとても美味しそうだわ。私、サマンサ様のように綺麗になりたいからそのレモン水のピッチャーと交換してくださらない?」
「え? おっほほほ。同じ水ですよ? 交換したところで意味はないでしょう?」
「あら、ありますわ。交換しましょう。そのピッチャーをこちらに渡して。私のピッチャーはあちらに・・・・・・」
私はメイドに命令して交換させようとするがサマンサは不思議なほど抵抗した。
「いい加減になさい! 同じ水だと言っているでしょう? 黙って与えられた物を飲んで食べていればいいのです! 豚のように太っているのは自分が怠惰だからでしょう! レモン水に罪をなすりつけないで!」
「あら、なんのことかしら? 私が太っているのがこのレモン水のせいだなんて言っておりませんよ? ところで今の言葉は不敬罪ではないかしら? 私はレディローズ女公爵の一人娘ですよ。次期女公爵でお父様は代行にすぎません。いわば、私が当主です。当主たる私に豚とは聞き捨てなりませんねぇ。サマンサ様、私のピッチャーのレモン水を全て飲みなさい!」
「ひっ! 私は喉が渇いておりませんので結構ですわ」
「遠慮せずとも、いつものように全て飲み干しなさい。ほら、美容に良いのでしょう? さて、私のレモン水を作った者は誰かしら?」
私の問いかけにメイドの一人が恐る恐る手を上げた。
「えっと、私でございます」
「そう。ならば、これからはサマンサ様のレモン水を私の時と同じレシピで作ってあげなさい。わかりましたね?」
「は、はい」
びくびくと震えるメイドに命令してサマンサを見れば青ざめながらも必死になって私のレモン水を飲み干した。
「ふっ。これからはサマンサ様がそのとても甘くて美味しいレモン水を楽しむ番ですわ」
私の中のお母様は有無を言わさぬ口調で艶やかに微笑みながらそうおっしゃったのだった。
――え? この声は誰? 私の娘って・・・・・・?
「ほら、お母様よ。あなたを産んですぐに亡くなったレディローズ女公爵です。全く情けない。あなたは押しも押されぬ次期女公爵ですよ! マヨーズラ侯爵家の三男なんかにコケにされて! ここは悲しむところではなくってよ! 怒るところなのよ! いいこと! やられたらやり返す! 倍返し、いいえ、3倍返しですわ!」
「3倍返し? そんなこと私にできるでしょうか? それにお母様、なぜ私の頭の中にいらっしゃるのですか?」
「それはね、あなたの守護霊として赤ちゃんの頃から見守っていたのにあなたときたら歯がゆいことばかりするのですもの! あのおバカも私が亡くなったらさっさと再婚しゃがって恩知らずが! だいたい、あいつ(マドンナの父親のことです)は昔から優柔不断でお人好しのおバカだったわ。まぁ、モテすぎた私の気まぐれで夫にしたようなものよ。ふん!」
「モテすぎて・・・・・・本当に私はお母様の娘なのでしょうか? その強気な物言い・・・・・・とても私にはできません」
私はそう言いながらも自分自身が情けなくなっていた。
私のお母様はレディローズ女公爵で絶世の美女だった。私と同じストロベリーブロンドで淡いピンクの瞳は女性達の嫉妬と羨望の的だったとか。顔立ちはこの世のものとは思えないほど美麗で儚げな容姿とは裏腹に強く逞しい女傑。
諸外国の王子達を手玉にとり、自由奔放に恋愛を楽しみ結婚したのは格下のお人好しのお父様だった。私の性格はどちらかと言えばお父様似で、髪と瞳はお母様似だ。
「私はお母様と似ているのは髪と瞳の色だけです。少しも美しくありません」
消え入りそうな声でささやく。
「ばかね! 女性は美しさだけに価値があるわけではないわ。それにマドンナが産まれた時は私に生き写しだった。そのちょっとふっくらしすぎた体型は早速運動と食事療法が必要ね。それにしても私は太る体質ではなかったのに、娘のあなたはなぜこんなことになったのかしら?」
お母様の言葉に恥ずかしさでいっぱいになった。
夕食の時間に私はいつものように席につくが、今日はお父様の姿はなかった。すぐにレモン水が運ばれてきて一口飲むと、お母様が『うげっ』と妙な声を出した。
「どうしました?」私はお母様に頭の中で尋ねるとお母様は不思議なことを言ったの。
「レモン水がこんなに甘いわけないじゃない! これじゃかき氷にかけるシロップよ! マドンナはいつもこんなものを飲んでいたの?」
「え? はい。物心ついたときからこんなかんじでしたよ」
「ちょっと入れ代わらせてもらうわよ。マドンナは見ていなさい」
頭の中でお母様がおっしゃると、お母様が私の表面に浮上してくるような感覚がした。なんだか、自分であって自分でないみたい。
「ちょっと、そこのメイド! この水を代えなさい」
私の声が少しきつめにメイドに命令していた。
「あら、マドンナ。どうしたの? いつもの水でしょう。たっぷり飲みなさい。レモン水はカロリーゼロよ。飲めば飲むほど美容にいいわ」
義母のサマンサと妹のミユキーナはごくごくとレモン水を飲んだ。レモン水はウォーターピッチャーに入れられて各々の前に一個ずつ並べらていた。
「そうね。サマンサ様のレモン水がとても美味しそうだわ。私、サマンサ様のように綺麗になりたいからそのレモン水のピッチャーと交換してくださらない?」
「え? おっほほほ。同じ水ですよ? 交換したところで意味はないでしょう?」
「あら、ありますわ。交換しましょう。そのピッチャーをこちらに渡して。私のピッチャーはあちらに・・・・・・」
私はメイドに命令して交換させようとするがサマンサは不思議なほど抵抗した。
「いい加減になさい! 同じ水だと言っているでしょう? 黙って与えられた物を飲んで食べていればいいのです! 豚のように太っているのは自分が怠惰だからでしょう! レモン水に罪をなすりつけないで!」
「あら、なんのことかしら? 私が太っているのがこのレモン水のせいだなんて言っておりませんよ? ところで今の言葉は不敬罪ではないかしら? 私はレディローズ女公爵の一人娘ですよ。次期女公爵でお父様は代行にすぎません。いわば、私が当主です。当主たる私に豚とは聞き捨てなりませんねぇ。サマンサ様、私のピッチャーのレモン水を全て飲みなさい!」
「ひっ! 私は喉が渇いておりませんので結構ですわ」
「遠慮せずとも、いつものように全て飲み干しなさい。ほら、美容に良いのでしょう? さて、私のレモン水を作った者は誰かしら?」
私の問いかけにメイドの一人が恐る恐る手を上げた。
「えっと、私でございます」
「そう。ならば、これからはサマンサ様のレモン水を私の時と同じレシピで作ってあげなさい。わかりましたね?」
「は、はい」
びくびくと震えるメイドに命令してサマンサを見れば青ざめながらも必死になって私のレモン水を飲み干した。
「ふっ。これからはサマンサ様がそのとても甘くて美味しいレモン水を楽しむ番ですわ」
私の中のお母様は有無を言わさぬ口調で艶やかに微笑みながらそうおっしゃったのだった。
3
お気に入りに追加
1,014
あなたにおすすめの小説
(完結)義妹は婚約破棄を喜んだ?ーねぇ、それで幸せになれたの?
青空一夏
恋愛
アイリス・ウィルソン公爵令嬢は、王女様だった母のクリスタルが亡くなってから環境が一変してしまった。
父親が、囲っていた愛人と子供を屋敷に連れて来て再婚したからだ。
屋敷で居場所のないアイリスは、王太子妃候補に選ばれるが・・・・・・
すっきりざまぁ。因果応報の世界。11話からは、BL要素あり。腐女子の方にも地雷かも。ご自衛ください。
※不快感を感じられた方がおりましたら申し訳ありません(❁ᴗ͈ˬᴗ͈)⁾⁾⁾
【完結】婚約者?勘違いも程々にして下さいませ
リリス
恋愛
公爵令嬢ヤスミーンには侯爵家三男のエグモントと言う婚約者がいた。
先日不慮の事故によりヤスミーンの両親が他界し女公爵として相続を前にエグモントと結婚式を三ヶ月後に控え前倒しで共に住む事となる。
エグモントが公爵家へ引越しした当日何故か彼の隣で、彼の腕に絡みつく様に引っ付いている女が一匹?
「僕の幼馴染で従妹なんだ。身体も弱くて余り外にも出られないんだ。今度僕が公爵になるって言えばね、是が非とも住んでいる所を見てみたいって言うから連れてきたんだよ。いいよねヤスミーンは僕の妻で公爵夫人なのだもん。公爵夫人ともなれば心は海の様に広い人でなければいけないよ」
はて、そこでヤスミーンは思案する。
何時から私が公爵夫人でエグモンドが公爵なのだろうかと。
また病気がちと言う従妹はヤスミーンの許可も取らず堂々と公爵邸で好き勝手に暮らし始める。
最初の間ヤスミーンは静かにその様子を見守っていた。
するとある変化が……。
ゆるふわ設定ざまああり?です。
【完結済み】「こんなことなら、婚約破棄させてもらう!」幼い頃からの婚約者に、浮気を疑われた私。しかし私の前に、事の真相を知る人物が現れて……
オコムラナオ
恋愛
(完結済みの作品を、複数話に分けて投稿します。最後まで書きあがっておりますので、安心してお読みください)
婚約者であるアルフレッド・アルバートン侯爵令息から、婚約破棄を言い渡されたローズ。
原因は、二人で一緒に行ったダンスパーティーで、ローズが他の男と踊っていたから。
アルフレッドはローズが以前から様子がおかしかったことを指摘し、自分以外の男に浮気心を持っているのだと責め立てる。
ローズが事情を説明しようとしても、彼は頑なに耳を貸さない。
「こんなことなら、婚約破棄させてもらう!」
彼がこう宣言したとき、意外なところからローズに救いの手が差し伸べられる。
明かされたのはローズの潔白だけではなく、思いもよらない事実だった……
【完結】物置小屋の魔法使いの娘~父の再婚相手と義妹に家を追い出され、婚約者には捨てられた。でも、私は……
buchi
恋愛
大公爵家の父が再婚して新しくやって来たのは、義母と義妹。当たり前のようにダーナの部屋を取り上げ、義妹のマチルダのものに。そして社交界への出入りを禁止し、館の隣の物置小屋に移動するよう命じた。ダーナは亡くなった母の血を受け継いで魔法が使えた。これまでは使う必要がなかった。だけど、汚い小屋に閉じ込められた時は、使用人がいるので自粛していた魔法力を存分に使った。魔法力のことは、母と母と同じ国から嫁いできた王妃様だけが知る秘密だった。
みすぼらしい物置小屋はパラダイスに。だけど、ある晩、王太子殿下のフィルがダーナを心配になってやって来て……
姉の引き立て役として生きて来た私でしたが、本当は逆だったのですね
麻宮デコ@ざまぁSS短編
恋愛
伯爵家の長女のメルディナは美しいが考えが浅く、彼女をあがめる取り巻きの男に対しても残忍なワガママなところがあった。
妹のクレアはそんなメルディナのフォローをしていたが、周囲からは煙たがられて嫌われがちであった。
美しい姉と引き立て役の妹として過ごしてきた幼少期だったが、大人になったらその立場が逆転して――。
3話完結
(完)婚約破棄ですね、従姉妹とどうかお幸せに
青空一夏
恋愛
私の婚約者は従姉妹の方が好きになってしまったようなの。
仕方がないから従姉妹に譲りますわ。
どうぞ、お幸せに!
ざまぁ。中世ヨーロッパ風の異世界。中性ヨーロッパの文明とは違う点が(例えば現代的な文明の機器など)でてくるかもしれません。ゆるふわ設定ご都合主義。
【完結】『母の命を奪った罪人である自分は、誰にも愛されない』だと? そんなワケあるかボケっ!!
月白ヤトヒコ
恋愛
うちで開催されているパーティーで、家族に冷遇されている子供を見た。
なんでも、その子が生まれるときに母親が亡くなったそうで。それから、父親と上の兄弟に目の仇にされているのだとか。俺は初めて見たが、噂になる程の家族の言動。
俺、こういうの大っ嫌いなんだけど? ちょっと前に、親友が突然神学校に入りやがった。それもこういう理由で、だ。
というワケで、大人げなく怒鳴っている見苦しいオッサンと、罵倒されて委縮している子供の間に割って入ることにした。
俺の前で、そんなクソみたいなことしてるそっちが悪い。
罵倒されてる子は親友じゃないし、このオッサンはアイツの父親じゃないのも判ってる。
けど、赦せん。目障りで耳障りだ。
だから――――俺の八つ当たり受けろ? お前らが、その子にやってることと同じだろ。
「あなた方がそうやって、その子を目の仇にする度、冷遇する度、理不尽に叱責する度、『キャー、わたしの仇に仕返ししてくれてありがとう! わたしの産んだ子だけど、そんなの関係ないわ! だって、わたしの命を奪った子だものね! もっと冷遇して、もっとつらい目に遭わせて、追い詰めて思い知らせてやって!』って、そういう、自分の子供を傷付けて喜ぶような性格の悪い女だって、死んだ後も家族に、旦那に喧伝されるって、マジ憐れだわー」
死んだ後も、家族に『自分が死んだことを生まれたばかりの子供のせいにして、仇を討ってほしいと思われてた』なんて、奥さんもマジ浮かばれないぜ。
『母の命を奪った罪人である自分は、誰にも愛されない』だと? そんなワケあるかボケっ!!
設定はふわっと。
【では、なぜ貴方も生きているのですか?】の、主人公の親友の話。そっちを読んでなくても大丈夫です。
(完結)婚約解消は当然でした
青空一夏
恋愛
エヴァリン・シャー子爵令嬢とイライジャ・メソン伯爵は婚約者同士。レイテ・イラ伯爵令嬢とは従姉妹。
シャー子爵家は大富豪でエヴァリンのお母様は他界。
お父様に溺愛されたエヴァリンの恋の物語。
エヴァリンは婚約者が従姉妹とキスをしているのを見てしまいますが、それは・・・・・・
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる