レトロな事件簿

八雲 銀次郎

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14章:四人の約束

#7-5

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 確かに中華はスピードが命とは聞くが、この短時間で、この品数は、流石に驚きだ。30分で6品。つまり、5分で一品、完成している計算だ…。更に最初、食材を洗っている所からスタートとなると、マイナス5分。つまり、実質25分ほどで6品完成させたことになる。
 立花さんも流石だが、寧々の腕もなかなかな物だ…。ここ1~2カ月程度、中華料理屋でバイトをしていたからと言って、こんなにも、手際が良くなるものなのか…。いや、何だかんだ言って、私自身、彼女の本来の力を理解しきれていなかったのかもしれない…。
普段は、そんなにテキパキと動くことは無いが、本気で料理をしている寧々を見た事が無かった。
 それにしたって、この手際の良さは、れとろに居たときとは、比べ物にはならないくらいだ…。
 「取り敢えず、料理の説明して貰おうか…。」
 広瀬さんがそう言うと、近くの低いテーブルに寄りかかった。
 「はい…。まず手前から、エビチリです。一度天麩羅にしてあるので、辛いのが苦手な方でも、気にしないで食べられます。
 次は、かき揚げの甘辛煮。煮てはいますが、煮る時間を少なくしているので、食感は変わっておりません。
 3品目は、夏野菜の酢漬け。天かすを利用して、少し味にアクセントを付けております。
 4品目は、タケノコと夏野菜の焼き天麩羅です。揚げる前に焼く事で、香味の変化を付けて、天麩羅としての料理に差別化を図っています。
 5品目は見たままの天麩羅です。ただ、魚介をメインに揚げているので、塩か醤油、お好みの味で、ご堪能下さい。
 6品目は、揚げ出し豆腐のカニ餡かけです。餡かけなので、少し熱いですが、サクサクに仕上げていますので、それぞれ薬味を載せてお召し上がりください。」
 エビチリ、煮物、酢漬け、天麩羅二種、それから、揚げ出し。中華料理も一品あるのだが、殆どが、天麩羅を主体とした、料理ばかりだ…。だが、酢漬けの漬けダレや、揚げ出し豆腐の餡かけ。それから、焼き天麩羅の焼いた工程等、寧々が調理に携わった所がはっきりとわかる料理となっている為、寧々の手際の良さとセンスが合わせて見て取れる…。
 「焼き天麩羅か…。焦げ目が付くと、揚げるの、大変だったろ。」
 広瀬さんがそうそう言った。
 「はい。でも、寧々ちゃんが、良い具合に、野菜の表面だけに焦げ目を付けてくれたので、思いのほか、楽に衣を付けられました。」
 立花さんが、そう返した。
 「なるほど、中華の火力を活かしたのか。流石だね…。」
 流石の寧々も、流石に照れくさそうに、頭を掻いた。
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