レトロな事件簿

八雲 銀次郎

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番外編:1今井真香の事件簿

#20

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 「鈴木課長の、計画というのは、“クラウン買収計画”。そうよね?」
 「買収?そんな事、ある筈は…。」
 他の役員や幹部連中が、ざわざわと、話し始めた。それもそうだ。潰れかけだったり、不景気の煽りを受けているならまだしも、私の会社は、今は、波に乗っている。今年に至っては、首都圏を中心に、駅ビルや、大型商業施設など、様々な場所に、総計40店舗以上を展開している。
 だから、買収などそんな話をしている程、我が社は、暇ではない。
 「そう。あたしも最初は、冗談かと思ったけど、冗談では、無いみたいね。」
 私は、足元にあった紙袋を、机の上に、置き、中身を取り出した。
 「社長、それは一体?」
 「これはねぇ、ライバル社でもある、“アザレア”が明日店頭に並べる予定の、ポロシャツだそうです。向こうの社長に、お願いして、一着借りてきました。
 このデザイン、営業部長なら、見覚えがあるんじゃない?」
 私は、営業部長にポロシャツを手渡した。彼は、暫く、シャツを広げて、袖口や襟元などをまじまじと、見詰め、生地も指で、撫でる様に、触った…。
 「この、袖口のデザインと言い、生地と言い…。間違いないです、来月我が社が、スポーツマン向けに発売する、ポロシャツと、酷似していますね…。と言うより、そのままです。」
 「“たまたま”しては、タイミング的にも、偶然過ぎるよね…。という事で、アザレアの社長と、会議が始まる前に、直接電話してみて確認したところ、このポロシャツのデザイン案は、丁度、今から二か月前に、提示されたものらしいです。」
 「二か月前?」営業部長が、更にハッとした様な顔で、聞き返した。
 「そう、丁度、スポーツウェア等のスポーツ系にも手を出そうと、話が出始めた頃ね…。そのポロシャツのデザインは、当初から、修正は殆ど入っていないからね…。」
 「つまり、計画の一部が、漏れていた。という事ですかな?」
 専務が鋭い睨みを利かせ、鈴木課長の方を見据えた。
 「一部だけなら良かったのですがねぇ…。」
 私が、そう言ったタイミングで、朝倉ちゃんのパソコンに、メールが届いた。
 「……社長、どうやら、ビンゴの様です。」
 スクリーンに映し出されたのは、幾つかの企画書や、見積書、それから、デザイン画の資料が、山ほど、映し出された。
 「……どうしてパスワードが…。」
 鈴木課長が、怯えた様にそう言った。
 「貴女が、日頃から、何かと目の敵にしている、部下の子。彼女は、本当に、良い仕事するね…。」
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