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因果の部屋
#1
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歩き始めてから、どのくらい経っただろうか…。何時間、何日、何年…。体感的には、もうかれこれ数十年の歳月が流れたはずだ…。
だが、どれだけ歩いても眼下に広がるのは、8畳ほどの小さな和室。中央には、立派な長方形の座卓が一つ。座卓の長辺に向かって左後ろの隅には、火が灯っている蝋燭が入った行灯が一つ。
その対角線側の隅には、水の入った鉄瓶が乗った小さな三段箪笥。引き出しの中には、上から、茶を入れるための茶葉と2つの湯飲み。中段には茶菓子と思われる、栗羊羹が2切と二枚の茶托。下段には、行灯用の蝋燭と、マッチが1箱。そして真っ白なメモ帳と万年筆が1セット入っている。
それ以外の家財道具などはなく、座布団が2枚座卓に向かい合っているだけ。
四方には壁ではなく、模様のない襖戸があり、それを開けると、全く同じ部屋がそこに現れる。天井や床板を引っぺがしても、結果は変わらなかった。
唯一違うところは、行灯に火が灯っていたのは、最初に訪れた部屋だけだったということだけだ…。最初の頃はマッチがあることを知らず、隣の部屋から移し火で、明かりを灯していた…。
この部屋は面白いことに、空腹は感じず、私が動いている間は、疲れも感じない。座ったり横になったりすると、疲れだけが襲ってきて、眠りに就く。部屋は意外と寒くなく、他の部屋から座布団をかき集め、敷き詰めれば、布団や枕の代わりにはなる。
そして、一番驚いたのは、次に目覚めたときに、傷や怪我が完治することだ。足を挫こうが、蝋燭の火で火傷しようが、座卓に脛をぶつけようが、次に目が覚めた時には、痛みは引き、傷ついた皮膚は塞がる。逆を言えば、眠らなければ、ずっと痛いままだ…。だから、少しでも痛みを覚えたり、目に見える怪我をしたりした場合は、直ぐに横になった。
色々試したりもした。前述通り他の部屋から、備品を持ち込んだり、持ち去ったりすることはできる。少し危険だったが、蝋燭の火で、襖や畳が燃えるのではないかと、火をつけてみたこともあった。だが、燃えたのは、火が当たったところだけで、火が燃え移り、火事になるほどの炎は、どうやったって起きなかった。
そして、どこかの時点で、一周するのではないかと、いつからかメモ帳に番号を記入し、向かった方角に向かってそれを置いた。風が入ってくることはないが、念の為重石替わりに湯飲みを乗せる。そして、来た方角には茶托を置き、部屋の数と迷い防止に努めた。今丁度、42万を数えたところだ…。本来なら、精神的に襤褸襤褸になっても居ても単語しくない。
どうやら、眠るときに精神も修復されてしまうらしい…。
だから、少し心細いと感じるときがあれば、座って、蝋燭の火を見詰め、目が覚めると少しは気が楽になる。
だが、どれだけ歩いても眼下に広がるのは、8畳ほどの小さな和室。中央には、立派な長方形の座卓が一つ。座卓の長辺に向かって左後ろの隅には、火が灯っている蝋燭が入った行灯が一つ。
その対角線側の隅には、水の入った鉄瓶が乗った小さな三段箪笥。引き出しの中には、上から、茶を入れるための茶葉と2つの湯飲み。中段には茶菓子と思われる、栗羊羹が2切と二枚の茶托。下段には、行灯用の蝋燭と、マッチが1箱。そして真っ白なメモ帳と万年筆が1セット入っている。
それ以外の家財道具などはなく、座布団が2枚座卓に向かい合っているだけ。
四方には壁ではなく、模様のない襖戸があり、それを開けると、全く同じ部屋がそこに現れる。天井や床板を引っぺがしても、結果は変わらなかった。
唯一違うところは、行灯に火が灯っていたのは、最初に訪れた部屋だけだったということだけだ…。最初の頃はマッチがあることを知らず、隣の部屋から移し火で、明かりを灯していた…。
この部屋は面白いことに、空腹は感じず、私が動いている間は、疲れも感じない。座ったり横になったりすると、疲れだけが襲ってきて、眠りに就く。部屋は意外と寒くなく、他の部屋から座布団をかき集め、敷き詰めれば、布団や枕の代わりにはなる。
そして、一番驚いたのは、次に目覚めたときに、傷や怪我が完治することだ。足を挫こうが、蝋燭の火で火傷しようが、座卓に脛をぶつけようが、次に目が覚めた時には、痛みは引き、傷ついた皮膚は塞がる。逆を言えば、眠らなければ、ずっと痛いままだ…。だから、少しでも痛みを覚えたり、目に見える怪我をしたりした場合は、直ぐに横になった。
色々試したりもした。前述通り他の部屋から、備品を持ち込んだり、持ち去ったりすることはできる。少し危険だったが、蝋燭の火で、襖や畳が燃えるのではないかと、火をつけてみたこともあった。だが、燃えたのは、火が当たったところだけで、火が燃え移り、火事になるほどの炎は、どうやったって起きなかった。
そして、どこかの時点で、一周するのではないかと、いつからかメモ帳に番号を記入し、向かった方角に向かってそれを置いた。風が入ってくることはないが、念の為重石替わりに湯飲みを乗せる。そして、来た方角には茶托を置き、部屋の数と迷い防止に努めた。今丁度、42万を数えたところだ…。本来なら、精神的に襤褸襤褸になっても居ても単語しくない。
どうやら、眠るときに精神も修復されてしまうらしい…。
だから、少し心細いと感じるときがあれば、座って、蝋燭の火を見詰め、目が覚めると少しは気が楽になる。
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