上 下
54 / 72
廃洋館

#34

しおりを挟む
 8月8日
  この数日間、理解が追い付かないまま、私は人間ではなくなり、何とか生き永らえた。ただ二つだけ、判ったことがあった。
 一つは、身体中に痣や血が滲んでいるにも関わらず、痛みは無く、更には空腹も何も感じない。唯一ある感覚は、少しの眠気だけだという事。
 二つ目は、兄さんの言葉には絶対逆らえないという事。逆らえないとは言え、過度な命令はしてこなかった。


 8月10日
  朝早く兄さんは、私の下にやってきた。そして、“憎しみがあるのなら母さんを殺そう…。”
  そう言われ、私は手枷を外し、出て兄さんの後に着いて行った。
  そこからの記憶は、殆どなく、気が付けば、実の母親を手に持っていた、刃物で腹部を刺していた。ただ、何故か罪悪感等一切なかった。あったのは、高揚感だった。

 9月1日
  私は、兄さんの恨みと憎しみを乗せ、私に1年分の寿命を掛け、“父と使用人の男を殺せ”と命令が下った。
  私はこの家を抜け、父たちの下に向かった。
  不思議な事に、私の姿は、警察達には見えないらしく、警察署の表から堂々と侵入し、拘留所に向かった。
  父は少しやつれた表情で、部屋の隅に座り込んでいた。
  私の姿に気が付くと、怯えた様に悲鳴を上げた。その声が、何故か気に食わず、持っていた、刃物で、そのまま父の胸部を突き刺し、そして、抜いた。
 血が噴き出て、悶え苦しんでいる、父の姿は、滑稽で笑えた。
  それと同様の方法で、使用人の男も刺した後、刃物を、その場に残し私は、血塗れのまま、警察署を出て行った。
 私が家に帰ると、兄さんからは、お礼された。

 10月4日。
  また、兄さんが現れた。今度は、もう一人の私も呼び出し、この館を護ってほしいと、頭を下げられた。
  もう一人の私は、快諾したが、私は寿命を貰わなければ、命令には従えない…。それに、永久的に続くものとなると、1~2年程度の寿命では、どうにもならないことは、既に知っていた。
  すると兄さんは、“自分の残りの寿命の3分の2を賭ける”と言いだし、私は、それを断る事ができなかった。
 
 『そして、私たちは、この館の敷地内から、出ることは許されなくなった。 
 たまにやって来る肝試し連中は、私が驚かしては、追い返し、壊された家具や窓は、もう一人の私が、修復することにした。
 だけど、いつしか、退屈になったもう一人の私は、力を蓄える様になり、私の仕事まで、奪う様になり、私は等々、こんな狭い地下室まで追いやられてしまった…。」
 ナツミさんは、そう言うと、日記を閉じ、元の位置に戻した。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子

ちひろ
恋愛
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子の話。 Fantiaでは他にもえっちなお話を書いてます。よかったら遊びに来てね。

若妻の穴を堪能する夫の話

かめのこたろう
現代文学
内容は題名の通りです。

深夜の自転車

salmon mama
ホラー
深夜の自転車

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

♡蜜壺に指を滑り込ませて蜜をクチュクチュ♡

x頭金x
大衆娯楽
♡ちょっとHなショートショート♡年末まで毎日5本投稿中!!

意味がわかるとえろい話

山本みんみ
ホラー
意味が分かれば下ネタに感じるかもしれない話です(意味深)

同僚くすぐりマッサージ

セナ
大衆娯楽
これは自分の実体験です

[R18] 激しめエロつめあわせ♡

ねねこ
恋愛
短編のエロを色々と。 激しくて濃厚なの多め♡ 苦手な人はお気をつけくださいませ♡

処理中です...