上 下
99 / 113
番外編

【IF】シエテルート2nd 3-c-2

しおりを挟む
 シエテは、賭けに勝ったらシーナに、名前で呼んで貰おうと考えていた。まだ、シーナのことを諦めることは出来ないが、いつかは心からシーナとその相手との幸せを願えるようにしようと思ったのだ。だから、ほんの少しのご褒美として、兄ではなく、シエテと名前で呼んで欲しかったのだ。
 
 シエテが、そんな事を思っているとシーナが怒ったようにシエテに宣言した。
 
「分かった。今から告白する!!」

「ああ、告白の結果は明日でもいいから知らせに来てくれ」

「駄目、結果は今すぐ知らせるから!」

「えっ?」

 シーナは、そう言った後に一度深呼吸をしてから姿勢を正して言ったのだ。

「シエテさん、貴方が好きです。妹なのに、好きになった私を許して下さい!!」

 そう言って、頭を深く下げていたのだ。
 頭を下げた姿勢で、小さく震えるシーナが目に入ったシエテだったが、シーナの言った言葉が中々脳に浸透していかなかった。
 
(あれ?今、なんて?えっ、えっ?!)

 シエテから何の反応もなかったことで、自分の告白にドン引きされているのだと勘違いしたシーナは泣きたくなった。
 
「お兄ちゃん……。ごめんね……。賭けはやっぱり私の勝ちみたいだね。私の要求は、これからも妹として仲良くして欲しい……ってことで、今のは忘れて欲しいな……」

 シーナのそんな悲しげな言葉を聞いたシエテは、とっさに目の前のシーナの腕を掴んで引き寄せていた。
 
「シーナ、賭けは俺の勝ちだ……。悪い……、俺は、シーナを女の子として好きなんだよ。だから、俺の勝ちだ。シーナ、好きだ。俺と付き合って下さい」

 シーナは、シエテの腕の中でまさかの展開に目を白黒させていた。
 
「えっ?待って……、嘘だよ。そんな訳ないよ……」

「そんな訳ある。俺は、お前が好き過ぎて、自分か怖くなったから家を出たんだよ。兄と慕ってくれるシーナに酷いことしてしまいそうで、怖くなって逃げ出したんだ……」

「嘘だよ……」

「嘘じゃないよ」

「でも……だって……」

「俺は、ずっとシーナのことが好きだった。初めは、妹みたいに思ってたけど、いつの間にか好きになってた。でも、俺を引き取ってくれた義父さんと義母さんを裏切ってるみたいで、シーナをどんどん好きになっていくのが怖かった……。兄と慕ってくれる、シーナを裏切ってるみたいで辛かったんだ……」

「えっ?引き取る?どういう事?」

「あぁ、シーナはまだ4歳だったから覚えてないよな?俺は、養子なんだよ。本当の両親が事故にあって、それで親友だった義父さんに引き取られたんだよ」

「えっと、それじゃ私達は血は繋がってないの?」

「そうだよ」

 シエテがそう言うと、腕の中にいたシーナは脱力していた。
 
「そっか……。そうなんだ……。良かった……。それじゃ、好きでいてもいいの?」

「ああ。シーナ、俺のこと受け入れてくれるか?」

「うん!!大好きにーに!!」

 思いが通じた後に、まさか再び「にーに」と呼ばれるとは思っていなかったシエテは少し意地の悪い表情で言った。
 
「そう言えば、賭けは俺の勝ちだな……。何でも言う事聞いてくれるんだよな?あ~、何をお願いしようかな~」

 シエテが、敢えてそう言うとシーナはシエテの腕から逃げ出して、ソファーの後ろに隠れて顔だけだして恐る恐る聞いてきた。
 
「うっ……。できるだけ、簡単な内容でお願いします……」

 怯えた様子でそういうシーナを見たシエテは心底楽しそうに言った。
 
「ふっ、あはは!!大丈夫だよ。とっても簡単だから」

「本当?」

「うん。お願い事は、俺のお嫁さんになってくれるってことでいいよ」

「!!!」

 シエテの要求に、シーナは顔を真赤にさせてはいたが、嬉しそうな表情になりシエテに抱きついていた。
 
「うん!!にーにのお嫁さんになる!!」

「シーナ?お嫁さんは、旦那さんのこと「にーに」とは、呼ばないぞ?ほら、名前で呼んで?」

「……、シ……シエテさん……?」

 恥ずかしそうに、シエテの名前を呼ぶシーナの可愛さにシエテは、シーナを引き寄せて抱きしめていた。
 二人は、ぴったりと寄り添い触れるようなキスをした。
 触れるだけのキスを終えた二人は、額をくっつけてお互いに微笑み合っていた。
 
 それから直ぐに、両親に二人のことを認めてもらうために実家に戻ると、意外にも両親は二人の事を喜んでいたのだ。
 
 両親曰く、親友夫妻と互いの子供たちが結ばれて夫婦になればいいという話をしていたことがあったそうで、二人のことを心から喜んでくれたのだった。
 
 その後、二人はシーナが15歳になるのと同時に結婚した。
 結婚式では、両親と友人に見守られながら愛を誓いあった二人は、幸せそうに微笑みあった。
 
 結婚後は、二人で住むための小さな庭付きの家を買い、シエテが仕事に向かう時はキスで送り出し、帰ってきた時はキスでお迎えすると言った甘々な万年新婚気分な二人だった。
 休日は、二人でイチャイチャし、手を繋ぎ街を散歩するその姿は、独り身の者には拷問級の砂糖を吐き出させ、既婚者や恋人がいる者にも、大量の砂糖を吐かせるといった、砂糖製造工場と化しながらも周囲に、ラブラブ夫婦として生暖かい目で見守られたとかいないとか。
 
 紆余曲折あったものの、二人は前世の分もと言わんばかりに、末永く幸せに暮らしたのだった。




【IF】シエテルート2nd VERY HAPPYEND 完
しおりを挟む
感想 141

あなたにおすすめの小説

私の頑張りは、とんだ無駄骨だったようです

風見ゆうみ
恋愛
私、リディア・トゥーラル男爵令嬢にはジッシー・アンダーソンという婚約者がいた。ある日、学園の中庭で彼が女子生徒に告白され、その生徒と抱き合っているシーンを大勢の生徒と一緒に見てしまった上に、その場で婚約破棄を要求されてしまう。 婚約破棄を要求されてすぐに、ミラン・ミーグス公爵令息から求婚され、ひそかに彼に思いを寄せていた私は、彼の申し出を受けるか迷ったけれど、彼の両親から身を引く様にお願いされ、ミランを諦める事に決める。 そんな私は、学園を辞めて遠くの街に引っ越し、平民として新しい生活を始めてみたんだけど、ん? 誰かからストーカーされてる? それだけじゃなく、ミランが私を見つけ出してしまい…!? え、これじゃあ、私、何のために引っ越したの!? ※恋愛メインで書くつもりですが、ざまぁ必要のご意見があれば、微々たるものになりますが、ざまぁを入れるつもりです。 ※ざまぁ希望をいただきましたので、タグを「ざまぁ」に変更いたしました。 ※史実とは関係ない異世界の世界観であり、設定も緩くご都合主義です。魔法も存在します。作者の都合の良い世界観や設定であるとご了承いただいた上でお読み下さいませ。

突然決められた婚約者は人気者だそうです。押し付けられたに違いないので断ってもらおうと思います。

橘ハルシ
恋愛
 ごくごく普通の伯爵令嬢リーディアに、突然、降って湧いた婚約話。相手は、騎士団長の叔父の部下。侍女に聞くと、どうやら社交界で超人気の男性らしい。こんな釣り合わない相手、絶対に叔父が権力を使って、無理強いしたに違いない!  リーディアは相手に遠慮なく断ってくれるよう頼みに騎士団へ乗り込むが、両親も叔父も相手のことを教えてくれなかったため、全く知らない相手を一人で探す羽目になる。  怪しい変装をして、騎士団内をうろついていたリーディアは一人の青年と出会い、そのまま一緒に婚約者候補を探すことに。  しかしその青年といるうちに、リーディアは彼に好意を抱いてしまう。 全21話(本編20話+番外編1話)です。

88回の前世で婚約破棄され続けて男性不信になった令嬢〜今世は絶対に婚約しないと誓ったが、なぜか周囲から溺愛されてしまう

冬月光輝
恋愛
 ハウルメルク公爵家の令嬢、クリスティーナには88回分の人生の記憶がある。  前世の88回は全てが男に婚約破棄され、近しい人間に婚約者を掠め取られ、悲惨な最期を遂げていた。  彼女は88回の人生は全て自分磨きに費やしていた。美容から、勉学に運動、果てには剣術や魔術までを最高レベルにまで極めたりした。  それは全て無駄に終わり、クリスは悟った。  “男は必ず裏切る”それなら、いっそ絶対に婚約しないほうが幸せだと。  89回目の人生を婚約しないように努力した彼女は、前世の88回分の経験値が覚醒し、無駄にハイスペックになっていたおかげで、今更モテ期が到来して、周囲から溺愛されるのであった。しかし、男に懲りたクリスはただひたすら迷惑な顔をしていた。

性悪という理由で婚約破棄された嫌われ者の令嬢~心の綺麗な者しか好かれない精霊と友達になる~

黒塔真実
恋愛
公爵令嬢カリーナは幼い頃から後妻と義妹によって悪者にされ孤独に育ってきた。15歳になり入学した王立学園でも、悪知恵の働く義妹とカリーナの婚約者でありながら義妹に洗脳されている第二王子の働きにより、学園中の嫌われ者になってしまう。しかも再会した初恋の第一王子にまで軽蔑されてしまい、さらに止めの一撃のように第二王子に「性悪」を理由に婚約破棄を宣言されて……!? 恋愛&悪が報いを受ける「ざまぁ」もの!! ※※※主人公は最終的にチート能力に目覚めます※※※アルファポリスオンリー※※※皆様の応援のおかげで第14回恋愛大賞で奨励賞を頂きました。ありがとうございます※※※ すみません、すっきりざまぁ終了したのでいったん完結します→※書籍化予定部分=【本編】を引き下げます。【番外編】追加予定→ルシアン視点追加→最新のディー視点の番外編は書籍化関連のページにて、アンケートに答えると読めます!!

前世軍医だった傷物令嬢は、幸せな花嫁を夢見る

花雨宮琵
恋愛
侯爵令嬢のローズは、10歳のある日、背中に刀傷を負い生死の境をさまよう。 その時に見た夢で、軍医として生き、結婚式の直前に婚約者を亡くした前世が蘇る。 何とか一命を取り留めたものの、ローズの背中には大きな傷が残った。 “傷物令嬢”として揶揄される中、ローズは早々に貴族女性として生きることを諦め、隣国の帝国医学校へ入学する。 背中の傷を理由に六回も婚約を破棄されるも、18歳で隣国の医師資格を取得。自立しようとした矢先に王命による7回目の婚約が結ばれ、帰国を余儀なくされる。 7人目となる婚約者は、弱冠25歳で東の将軍となった、ヴァンドゥール公爵家次男のフェルディナンだった。 長年行方不明の想い人がいるフェルディナンと、義務ではなく愛ある結婚を夢見るローズ。そんな二人は、期間限定の条件付き婚約関係を結ぶことに同意する。 守られるだけの存在でいたくない! と思うローズは、一人の医師として自立し、同時に、今世こそは愛する人と結ばれて幸せな家庭を築きたいと願うのであったが――。 この小説は、人生の理不尽さ・不条理さに傷つき悩みながらも、幸せを求めて奮闘する女性の物語です。 ※この作品は2年前に掲載していたものを大幅に改稿したものです。 (C)Elegance 2025 All Rights Reserved.無断転載・無断翻訳を固く禁じます。

牢で死ぬはずだった公爵令嬢

鈴元 香奈
恋愛
婚約していた王子に裏切られ無実の罪で牢に入れられてしまった公爵令嬢リーゼは、牢番に助け出されて見知らぬ男に託された。 表紙女性イラストはしろ様(SKIMA)、背景はくらうど職人様(イラストAC)、馬上の人物はシルエットACさんよりお借りしています。 小説家になろうさんにも投稿しています。

森に捨てられた令嬢、本当の幸せを見つけました。

玖保ひかる
恋愛
[完結] 北の大国ナバランドの貴族、ヴァンダーウォール伯爵家の令嬢アリステルは、継母に冷遇され一人別棟で生活していた。 ある日、継母から仲直りをしたいとお茶会に誘われ、勧められたお茶を口にしたところ意識を失ってしまう。 アリステルが目を覚ましたのは、魔の森と人々が恐れる深い森の中。 森に捨てられてしまったのだ。 南の隣国を目指して歩き出したアリステル。腕利きの冒険者レオンと出会い、新天地での新しい人生を始めるのだが…。 苦難を乗り越えて、愛する人と本当の幸せを見つける物語。 ※小説家になろうで公開した作品を改編した物です。 ※完結しました。

「お前を愛するつもりはない」な仮面の騎士様と結婚しました~でも白い結婚のはずなのに溺愛してきます!~

卯月ミント
恋愛
「お前を愛するつもりはない」 絵を描くのが趣味の侯爵令嬢ソールーナは、仮面の英雄騎士リュクレスと結婚した。 だが初夜で「お前を愛するつもりはない」なんて言われてしまい……。 ソールーナだって好きでもないのにした結婚である。二人はお互いカタチだけの夫婦となろう、とその夜は取り決めたのだが。 なのに「キスしないと出られない部屋」に閉じ込められて!? 「目を閉じてくれるか?」「えっ?」「仮面とるから……」 書き溜めがある内は、1日1~話更新します それ以降の更新は、ある程度書き溜めてからの投稿となります *仮面の俺様ナルシスト騎士×絵描き熱中令嬢の溺愛ラブコメです。 *ゆるふわ異世界ファンタジー設定です。 *コメディ強めです。 *hotランキング14位行きました!お読みいただき&お気に入り登録していただきまして、本当にありがとうございます!

処理中です...