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番外編
【IF】シエテルート2nd 1
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「姫の家族として生まれて、姫を守り慈しみ愛したい」
カーシュの返答を聞いた精霊たちはくすくすと笑いながらからかうように言った。
「くすくす。あれ?恋人になるには家族じゃ駄目だよ?」
「いや。恋人でなくていい。俺は家族として姫を大切にしたい。そして、今生で与えられなかった家族の愛で姫を包み慈しみ守り愛したいんだ」
「ふふふん。君は欲が無いようで欲張りだね。分かったよ。家族として生まれるように転生の準備をしよう」
「ありがとう。感謝します。それと、厚かましいお願いなのだが……」
「分かっているよ。できるだけ記憶を引き継げるようにしておく。でも完全じゃないよ?」
「それでいい。姫を守るためには、俺の学んだ戦闘技術が役立つはずだ。それと姫を守り慈しむ心さえ引き継げれば問題ない」
「はいはーい。愛し子の記憶はどうしよう。確認してなかったや。一応、それとなく。そうだ、夢物語のように夢で見るようにしよう。そうすれば、自分で決めてもらえる。夢が夢で終わるのも、それを前世の自分だと考えるのも次のあの子が自分で好きに決めればいい。それこそ自由ってもんだよね。それじゃぁ、ちょっとサービスしておくからね!良い来世を!ふふふ!!君の幸せも私達は祈っているよ。どうか、幸せになってね!!」
精霊たちの楽しそうな謎理論と送り出しの言葉を聞きながら、カーシュの意識は遠くなっていき、次に目覚めた時は、シエテ・ゾールとして生を受けたいた。
カーシュが、シエテとして目覚めたのは5歳のときだった。それまでは、ふわふわとした夢心地だったが、あることが切っ掛けでカーシュとしての記憶を完全に思い出したのだ。
それは、シエテが5歳の時だった。
母から、「シエテ、もうすぐお兄ちゃんになるのよ」と言われたシエテは、母親に言った。
「お母さん!きっと、可愛い妹が生まれるんだ!!」
幼いシエテは、なんとなく生まれてくるのは妹だと思ったのだ。
それを聞いた母は、小さく笑って、シエテに言った。
「そっか、それなら可愛い妹に格好いいお兄ちゃんって思ってもらえるように頑張らなくちゃね」
「うん!!」
そして、母親が妊娠五ヶ月の時に、父親の親友の家に行くということで、馬車に乗って向かった時に悲劇は起きた。
シエテと両親は、辻馬車で親友の家に向かっていたが、途中馬車の車輪が外れて横転してしまったのだ。
更に悪いことに、倒れた馬車は崖下に滑り落ちてしまったのだ。
馬車から外に投げだれたシエテと両親だったが、三人が投げ出された頭上に、馬車が落ちてきたのだ。
両親が、とっさにシエテに覆いかぶさったことで、シエテは無事だったが、両親はシエテを庇ったことでこの世を去っていた。
両親と、生まれてくるはずの妹を失ったシエテは泣き叫んだ。
そして、両親の死体の下敷き状態でシエテは前世を思い出したのだ。
それと同時に、敬愛するイシュミールが生まれ変わる前に死んでしまったことにシエテは声が枯れても泣き叫び続けた。
どのくらいの時が経ったのか分からなくなった時、救助が来たのだ。
シエテは、朦朧とした意識の中で、イシュミールのいない世界で生きることの無意味さを感じながら意識を手放した。
シエテは、救助されたすぐ後に、両親の親友だというソル家に養子として引き取られることになった。
ソル家は、領主の屋敷で住み込みで働く庭師だった。
義父と義母。そして、1つ年下の義妹との暮らしが始まった。
シエテは、両親と生まれてくるはずだったイシュミールを失ったことで心を閉ざしていた。
そんなシエテに、義妹となったシーナが慰めるように、シエテの頭をなでながら言ったのだ。
「にーに?どこか痛い?痛いの痛いの飛んでいけ~」
そこで初めてシエテは、義妹をきちんと見たのだ。
栗色の柔らかそうな髪に、大きな青い瞳の可愛らしい少女だった。
シーナの青い瞳を見たシエテは、直感的に理解したのだ。
この幼い少女が、イシュミールの生まれ変わりだということをだ。
イシュミールと似ても似つかない少女だったが、シエテには分かったのだ。
両親と、生まれてくることが出来なかった妹を思うと心が痛くて痛くて仕方がなかったが、シエテは運命の巡り合わせを知り、精霊に感謝した。
シエテはまったく知らなかったが、両親と生まれてくるはずの妹の死は、精霊たちにとっても予想外の展開だった。
精霊たちの考えでは、両親と共にソル家に遊びに行った際に、シーナと出会い、シーナに恋をして愛を育み家族になるという展開を予定していたのだ。
こんなことになると知っていれば、小細工せずに二人を双子の仲良し兄妹として転生させればよかったと精霊たちは後悔したのだった。
それからシエテは、改めて家族になってくれた義父と義母、シーナを家族として受け入れたのだった。
一緒に暮らすうちに分かったことだが、シーナは前世の記憶を持っていないようだった。しかし、両親の死を経験したシエテを優しく家族として受け入れてくれたのだ。
それは、シエテが5歳にして、義妹となったシーナの為に生きようと決めた瞬間だった。
カーシュの返答を聞いた精霊たちはくすくすと笑いながらからかうように言った。
「くすくす。あれ?恋人になるには家族じゃ駄目だよ?」
「いや。恋人でなくていい。俺は家族として姫を大切にしたい。そして、今生で与えられなかった家族の愛で姫を包み慈しみ守り愛したいんだ」
「ふふふん。君は欲が無いようで欲張りだね。分かったよ。家族として生まれるように転生の準備をしよう」
「ありがとう。感謝します。それと、厚かましいお願いなのだが……」
「分かっているよ。できるだけ記憶を引き継げるようにしておく。でも完全じゃないよ?」
「それでいい。姫を守るためには、俺の学んだ戦闘技術が役立つはずだ。それと姫を守り慈しむ心さえ引き継げれば問題ない」
「はいはーい。愛し子の記憶はどうしよう。確認してなかったや。一応、それとなく。そうだ、夢物語のように夢で見るようにしよう。そうすれば、自分で決めてもらえる。夢が夢で終わるのも、それを前世の自分だと考えるのも次のあの子が自分で好きに決めればいい。それこそ自由ってもんだよね。それじゃぁ、ちょっとサービスしておくからね!良い来世を!ふふふ!!君の幸せも私達は祈っているよ。どうか、幸せになってね!!」
精霊たちの楽しそうな謎理論と送り出しの言葉を聞きながら、カーシュの意識は遠くなっていき、次に目覚めた時は、シエテ・ゾールとして生を受けたいた。
カーシュが、シエテとして目覚めたのは5歳のときだった。それまでは、ふわふわとした夢心地だったが、あることが切っ掛けでカーシュとしての記憶を完全に思い出したのだ。
それは、シエテが5歳の時だった。
母から、「シエテ、もうすぐお兄ちゃんになるのよ」と言われたシエテは、母親に言った。
「お母さん!きっと、可愛い妹が生まれるんだ!!」
幼いシエテは、なんとなく生まれてくるのは妹だと思ったのだ。
それを聞いた母は、小さく笑って、シエテに言った。
「そっか、それなら可愛い妹に格好いいお兄ちゃんって思ってもらえるように頑張らなくちゃね」
「うん!!」
そして、母親が妊娠五ヶ月の時に、父親の親友の家に行くということで、馬車に乗って向かった時に悲劇は起きた。
シエテと両親は、辻馬車で親友の家に向かっていたが、途中馬車の車輪が外れて横転してしまったのだ。
更に悪いことに、倒れた馬車は崖下に滑り落ちてしまったのだ。
馬車から外に投げだれたシエテと両親だったが、三人が投げ出された頭上に、馬車が落ちてきたのだ。
両親が、とっさにシエテに覆いかぶさったことで、シエテは無事だったが、両親はシエテを庇ったことでこの世を去っていた。
両親と、生まれてくるはずの妹を失ったシエテは泣き叫んだ。
そして、両親の死体の下敷き状態でシエテは前世を思い出したのだ。
それと同時に、敬愛するイシュミールが生まれ変わる前に死んでしまったことにシエテは声が枯れても泣き叫び続けた。
どのくらいの時が経ったのか分からなくなった時、救助が来たのだ。
シエテは、朦朧とした意識の中で、イシュミールのいない世界で生きることの無意味さを感じながら意識を手放した。
シエテは、救助されたすぐ後に、両親の親友だというソル家に養子として引き取られることになった。
ソル家は、領主の屋敷で住み込みで働く庭師だった。
義父と義母。そして、1つ年下の義妹との暮らしが始まった。
シエテは、両親と生まれてくるはずだったイシュミールを失ったことで心を閉ざしていた。
そんなシエテに、義妹となったシーナが慰めるように、シエテの頭をなでながら言ったのだ。
「にーに?どこか痛い?痛いの痛いの飛んでいけ~」
そこで初めてシエテは、義妹をきちんと見たのだ。
栗色の柔らかそうな髪に、大きな青い瞳の可愛らしい少女だった。
シーナの青い瞳を見たシエテは、直感的に理解したのだ。
この幼い少女が、イシュミールの生まれ変わりだということをだ。
イシュミールと似ても似つかない少女だったが、シエテには分かったのだ。
両親と、生まれてくることが出来なかった妹を思うと心が痛くて痛くて仕方がなかったが、シエテは運命の巡り合わせを知り、精霊に感謝した。
シエテはまったく知らなかったが、両親と生まれてくるはずの妹の死は、精霊たちにとっても予想外の展開だった。
精霊たちの考えでは、両親と共にソル家に遊びに行った際に、シーナと出会い、シーナに恋をして愛を育み家族になるという展開を予定していたのだ。
こんなことになると知っていれば、小細工せずに二人を双子の仲良し兄妹として転生させればよかったと精霊たちは後悔したのだった。
それからシエテは、改めて家族になってくれた義父と義母、シーナを家族として受け入れたのだった。
一緒に暮らすうちに分かったことだが、シーナは前世の記憶を持っていないようだった。しかし、両親の死を経験したシエテを優しく家族として受け入れてくれたのだ。
それは、シエテが5歳にして、義妹となったシーナの為に生きようと決めた瞬間だった。
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