77 / 113
第三部
第七章 二度目の恋と最後の愛 10
しおりを挟む
シーナが目を覚ますと、床に正座をさせられたカインの姿が目に入った。
目をこすりながら起き上がると、シエテとフェルエルタが抱きついてきた。
「シーたん!!大丈夫?苦しいところはない?痛いところは?気持ち悪くない?大丈夫?」
「シーちゃん大丈夫?気持ち悪くない?気持ち悪いよね?大丈夫?うがいしようか?うがいしようね?」
二人の剣幕にシーナは瞬きを繰り返すだけだった。
そして、気を失う前のことを思い出してかっと顔が熱くなるのが分かった。
自然に唇に触れたシーナは、無意識に口を開いていた。
「そっか、私。カイン様に口を吸われて……。口を吸われた?えっ、えっ?それって、唇と唇がくっついたってことで……。わっ、私……、カイン様とキスしちゃったんだ……。キスがあんなにすごいって知らなかった……。でも、凄く嬉しい」
シーナの独り言が聞こえたシエテとフェルエルタは、ハイライトが消えた瞳でカインを殺意のこもった目で睨みつけていた。
カインは、シーナがあの口付けを嫌がってはいない上、喜んでいることに歓喜した。
現実に戻ってきたシーナは、カインが何故正座させられているのかと首を傾げていると、ミュルエナが丁寧に説明してくれたのだった。
ミュルエナ曰く、部屋を出ていった二人が心配で、影から様子を見ていたら大変なことになっていたので止めに入ったということだった。
そして、シーナが気を失うほど激しい口付けをしたことへのお仕置きだと説明したのだ。
実際には、下世話なミュルエナが覗きに行こうとしたところ、シエテたちがそれに気が付き後をついてきたという訳だ。
そして、二人がイチャつきだして、カインがシーナにキスをしだしたところまでは良かったのだが、驚くシーナを他所にカインは舌を入れ始めたところでシエテとフェルエルタがブチギレて覗き部屋を飛び出していったのだ。
ミュルエナが、それを追いかけて行くとカインから引き剥がした気を失ったシーナを抱きかかえたシエテとフェルエルタが、カインに「ケダモノ!!死ね!!」「ロリコン!!死ね!!」と言いながら睨みつけていたのだ。
ミュルエナは、そんなカインにニヤニヤしつつもそれを声には出さずに言ったのだ。
「ああ、やっぱり~。美少女ちゃんのヤワヤワお口を吸って、ベロ入れましたね~。これはお仕置きが必要ですね~」
そう言ってから、とりあえずとカインに正座をさせたのだった。
ミュルエナの説明を聞いたシーナは、恥ずかしそうにしながらも抱きつくシエテとフェルエルタに言ったのだ。
「にーに、お姉ちゃん。苦しくて意識を失っちゃったけど、私はカイン様から与えられる苦しみなら受け入れられるよ。それに、これからは夫婦になるんだから、もっと大変なことだってきっとあるよ。でも、私はそれでもカイン様と一緒に乗り越えるから。だから二人とも私は大丈夫だよ」
そう言って、二人に微笑みかけたのだ。
その笑顔を見たシエテは、長い間見守ってきた大切な人の恋が実り、愛が育まれる瞬間を目の当たりにして寂しいような嬉しいような複雑な気持ちになった。
そんなシエテを知ってか知らずか、シーナはそんなシエテを抱きしめてから小さな声でシエテにだけ聞こえるように言ったのだ。
「にーに、ありがとう。ごめんね。でも、私はカイン様と歩くって決めたの。だからもう大丈夫だよ。今度は、にーにが自分の幸せのために歩いてほしいの。大丈夫だよ、にーには私のお兄ちゃんなんだから」
「シーたん……。分かった。これからは少し自分のことも考えてみるよ。シーナに心配をかけないようにな。だって、俺はシーナのお兄ちゃんなんだから」
そう言って、シーナとシエテは額同士をくっつけて微笑みあったのだった。
それから、数日間王都を観光した後に揃ってディアロ領に戻っていったのだった。
カインは、領地に戻ってから一番にシーナの両親に挨拶に向かった。
「お嬢さんとの結婚を許してください」
両親はカインの登場に驚きはしても、その言葉にはニコニコしながら言ったのだ。
「そうですか、領主様。うちの娘をよろしくおねがいします」
「あらあら、うちの娘も領主様のこと好いていたのね~。領主様の片思いだとばっかり思っていたけど、良かったわ~」
「おいおい、俺は、シーナも領主様に気があると思っていたぞ~」
「そうかしら~、あなたもシーナの気持ちには気づいてなかったわよ~。あの子の鈍感はあなた譲りよ~」
「いいや、鈍感で可愛いところはお前に似てるよ」
そう言って、カインの片思いがダダ漏れだったと言いながらイチャつき出したのだった。
カインは、自分の気持がシーナに伝わる前から、知られていたことに羞恥で顔を赤くしていたが、すんなりと結婚を許してもらえたことに安堵していた。
シーナの両親から結婚の許可をもらった後のカインの行動は早かった。
即座に王都に手紙を書き、シーナと結婚する旨を伝えた。
あまりに早いカインの行動に国王と王妃は、密かに黒い笑みを浮かべたのだった。
幸いなことに、アメジシスト王国では貴族の結婚について緩いところがあったため、シーナとの結婚はすんなりと認められたのだった。
カインは、早くシーナと夫婦として一緒に暮らしたいという思いから、大至急結婚の準備を進めていた。
結婚式は、貴族にしては珍しく小規模なものだった。
そのため招待客は、少数だった。
シーナの両親と友人。カイン側は、世話になったイグニシス公爵家にだけ招待状を送った。
イグニシス公爵家からは、後継ぎであり、カインの悪友でもあるセシル・イグニシスが来ることになっていた。
あっという間に準備期間は過ぎ、結婚式当日となった。
目をこすりながら起き上がると、シエテとフェルエルタが抱きついてきた。
「シーたん!!大丈夫?苦しいところはない?痛いところは?気持ち悪くない?大丈夫?」
「シーちゃん大丈夫?気持ち悪くない?気持ち悪いよね?大丈夫?うがいしようか?うがいしようね?」
二人の剣幕にシーナは瞬きを繰り返すだけだった。
そして、気を失う前のことを思い出してかっと顔が熱くなるのが分かった。
自然に唇に触れたシーナは、無意識に口を開いていた。
「そっか、私。カイン様に口を吸われて……。口を吸われた?えっ、えっ?それって、唇と唇がくっついたってことで……。わっ、私……、カイン様とキスしちゃったんだ……。キスがあんなにすごいって知らなかった……。でも、凄く嬉しい」
シーナの独り言が聞こえたシエテとフェルエルタは、ハイライトが消えた瞳でカインを殺意のこもった目で睨みつけていた。
カインは、シーナがあの口付けを嫌がってはいない上、喜んでいることに歓喜した。
現実に戻ってきたシーナは、カインが何故正座させられているのかと首を傾げていると、ミュルエナが丁寧に説明してくれたのだった。
ミュルエナ曰く、部屋を出ていった二人が心配で、影から様子を見ていたら大変なことになっていたので止めに入ったということだった。
そして、シーナが気を失うほど激しい口付けをしたことへのお仕置きだと説明したのだ。
実際には、下世話なミュルエナが覗きに行こうとしたところ、シエテたちがそれに気が付き後をついてきたという訳だ。
そして、二人がイチャつきだして、カインがシーナにキスをしだしたところまでは良かったのだが、驚くシーナを他所にカインは舌を入れ始めたところでシエテとフェルエルタがブチギレて覗き部屋を飛び出していったのだ。
ミュルエナが、それを追いかけて行くとカインから引き剥がした気を失ったシーナを抱きかかえたシエテとフェルエルタが、カインに「ケダモノ!!死ね!!」「ロリコン!!死ね!!」と言いながら睨みつけていたのだ。
ミュルエナは、そんなカインにニヤニヤしつつもそれを声には出さずに言ったのだ。
「ああ、やっぱり~。美少女ちゃんのヤワヤワお口を吸って、ベロ入れましたね~。これはお仕置きが必要ですね~」
そう言ってから、とりあえずとカインに正座をさせたのだった。
ミュルエナの説明を聞いたシーナは、恥ずかしそうにしながらも抱きつくシエテとフェルエルタに言ったのだ。
「にーに、お姉ちゃん。苦しくて意識を失っちゃったけど、私はカイン様から与えられる苦しみなら受け入れられるよ。それに、これからは夫婦になるんだから、もっと大変なことだってきっとあるよ。でも、私はそれでもカイン様と一緒に乗り越えるから。だから二人とも私は大丈夫だよ」
そう言って、二人に微笑みかけたのだ。
その笑顔を見たシエテは、長い間見守ってきた大切な人の恋が実り、愛が育まれる瞬間を目の当たりにして寂しいような嬉しいような複雑な気持ちになった。
そんなシエテを知ってか知らずか、シーナはそんなシエテを抱きしめてから小さな声でシエテにだけ聞こえるように言ったのだ。
「にーに、ありがとう。ごめんね。でも、私はカイン様と歩くって決めたの。だからもう大丈夫だよ。今度は、にーにが自分の幸せのために歩いてほしいの。大丈夫だよ、にーには私のお兄ちゃんなんだから」
「シーたん……。分かった。これからは少し自分のことも考えてみるよ。シーナに心配をかけないようにな。だって、俺はシーナのお兄ちゃんなんだから」
そう言って、シーナとシエテは額同士をくっつけて微笑みあったのだった。
それから、数日間王都を観光した後に揃ってディアロ領に戻っていったのだった。
カインは、領地に戻ってから一番にシーナの両親に挨拶に向かった。
「お嬢さんとの結婚を許してください」
両親はカインの登場に驚きはしても、その言葉にはニコニコしながら言ったのだ。
「そうですか、領主様。うちの娘をよろしくおねがいします」
「あらあら、うちの娘も領主様のこと好いていたのね~。領主様の片思いだとばっかり思っていたけど、良かったわ~」
「おいおい、俺は、シーナも領主様に気があると思っていたぞ~」
「そうかしら~、あなたもシーナの気持ちには気づいてなかったわよ~。あの子の鈍感はあなた譲りよ~」
「いいや、鈍感で可愛いところはお前に似てるよ」
そう言って、カインの片思いがダダ漏れだったと言いながらイチャつき出したのだった。
カインは、自分の気持がシーナに伝わる前から、知られていたことに羞恥で顔を赤くしていたが、すんなりと結婚を許してもらえたことに安堵していた。
シーナの両親から結婚の許可をもらった後のカインの行動は早かった。
即座に王都に手紙を書き、シーナと結婚する旨を伝えた。
あまりに早いカインの行動に国王と王妃は、密かに黒い笑みを浮かべたのだった。
幸いなことに、アメジシスト王国では貴族の結婚について緩いところがあったため、シーナとの結婚はすんなりと認められたのだった。
カインは、早くシーナと夫婦として一緒に暮らしたいという思いから、大至急結婚の準備を進めていた。
結婚式は、貴族にしては珍しく小規模なものだった。
そのため招待客は、少数だった。
シーナの両親と友人。カイン側は、世話になったイグニシス公爵家にだけ招待状を送った。
イグニシス公爵家からは、後継ぎであり、カインの悪友でもあるセシル・イグニシスが来ることになっていた。
あっという間に準備期間は過ぎ、結婚式当日となった。
0
お気に入りに追加
2,608
あなたにおすすめの小説
家出した伯爵令嬢【完結済】
弓立歩
恋愛
薬学に長けた家に生まれた伯爵令嬢のカノン。病弱だった第2王子との7年の婚約の結果は何と婚約破棄だった!これまでの尽力に対して、実家も含めあまりにもつらい仕打ちにとうとうカノンは家を出る決意をする。
番外編において暴力的なシーン等もありますので一応R15が付いています
6/21完結。今後の更新は予定しておりません。また、本編は60000字と少しで柔らかい表現で出来ております
旦那様、前世の記憶を取り戻したので離縁させて頂きます
結城芙由奈
恋愛
【前世の記憶が戻ったので、貴方はもう用済みです】
ある日突然私は前世の記憶を取り戻し、今自分が置かれている結婚生活がとても理不尽な事に気が付いた。こんな夫ならもういらない。前世の知識を活用すれば、この世界でもきっと女1人で生きていけるはず。そして私はクズ夫に離婚届を突きつけた―。
この度、皆さんの予想通り婚約者候補から外れることになりました。ですが、すぐに結婚することになりました。
鶯埜 餡
恋愛
ある事件のせいでいろいろ言われながらも国王夫妻の働きかけで王太子の婚約者候補となったシャルロッテ。
しかし当の王太子ルドウィックはアリアナという男爵令嬢にべったり。噂好きな貴族たちはシャルロッテに婚約者候補から外れるのではないかと言っていたが
辺境の獣医令嬢〜婚約者を妹に奪われた伯爵令嬢ですが、辺境で獣医になって可愛い神獣たちと楽しくやってます〜
津ヶ谷
恋愛
ラース・ナイゲールはローラン王国の伯爵令嬢である。
次期公爵との婚約も決まっていた。
しかし、突然に婚約破棄を言い渡される。
次期公爵の新たな婚約者は妹のミーシャだった。
そう、妹に婚約者を奪われたのである。
そんなラースだったが、気持ちを新たに次期辺境伯様との婚約が決まった。
そして、王国の辺境の地でラースは持ち前の医学知識と治癒魔法を活かし、獣医となるのだった。
次々と魔獣や神獣を治していくラースは、魔物たちに気に入られて楽しく過ごすこととなる。
これは、辺境の獣医令嬢と呼ばれるラースが新たな幸せを掴む物語。
どう頑張っても死亡ルートしかない悪役令嬢に転生したので、一切頑張らないことにしました
小倉みち
恋愛
7歳の誕生日、突然雷に打たれ、そのショックで前世を思い出した公爵令嬢のレティシア。
前世では夥しいほどの仕事に追われる社畜だった彼女。
唯一の楽しみだった乙女ゲームの新作を発売日当日に買いに行こうとしたその日、交通事故で命を落としたこと。
そして――。
この世界が、その乙女ゲームの設定とそっくりそのままであり、自分自身が悪役令嬢であるレティシアに転生してしまったことを。
この悪役令嬢、自分に関心のない家族を振り向かせるために、死に物狂いで努力し、第一王子の婚約者という地位を勝ち取った。
しかしその第一王子の心がぽっと出の主人公に奪われ、嫉妬に狂い主人公に毒を盛る。
それがバレてしまい、最終的に死刑に処される役となっている。
しかも、第一王子ではなくどの攻略対象ルートでも、必ず主人公を虐め、処刑されてしまう噛ませ犬的キャラクター。
レティシアは考えた。
どれだけ努力をしても、どれだけ頑張っても、最終的に自分は死んでしまう。
――ということは。
これから先どんな努力もせず、ただの馬鹿な一般令嬢として生きれば、一切攻略対象と関わらなければ、そもそもその土俵に乗ることさえしなければ。
私はこの恐ろしい世界で、生き残ることが出来るのではないだろうか。
村娘になった悪役令嬢
枝豆@敦騎
恋愛
父が連れてきた妹を名乗る少女に出会った時、公爵令嬢スザンナは自分の前世と妹がヒロインの乙女ゲームの存在を思い出す。
ゲームの知識を得たスザンナは自分が将来妹の殺害を企てる事や自分が父の実子でない事を知り、身分を捨て母の故郷で平民として暮らすことにした。
村娘になった少女が行き倒れを拾ったり、ヒロインに連れ戻されそうになったり、悪役として利用されそうになったりしながら最後には幸せになるお話です。
※他サイトにも掲載しています。(他サイトに投稿したものと異なっている部分があります)
アルファポリスのみ後日談投稿しております。
【完結】婚姻無効になったので新しい人生始めます~前世の記憶を思い出して家を出たら、愛も仕事も手に入れて幸せになりました~
Na20
恋愛
セレーナは嫁いで三年が経ってもいまだに旦那様と使用人達に受け入れられないでいた。
そんな時頭をぶつけたことで前世の記憶を思い出し、家を出ていくことを決意する。
「…そうだ、この結婚はなかったことにしよう」
※ご都合主義、ふんわり設定です
※小説家になろう様にも掲載しています
生まれ変わりも楽じゃない ~生まれ変わっても私はわたし~
こひな
恋愛
市川みのり 31歳。
成り行きで、なぜかバリバリのキャリアウーマンをやっていた私。
彼氏なし・趣味は食べることと読書という仕事以外は引きこもり気味な私が、とばっちりで異世界転生。
貴族令嬢となり、四苦八苦しつつ異世界を生き抜くお話です。
※いつも読んで頂きありがとうございます。誤字脱字のご指摘ありがとうございます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる