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第三部
第七章 二度目の恋と最後の愛 6
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カインは、柔らかくてとてもいい匂いのする枕で寝ていることに気が付いた。
しかし、心地の良い枕の感覚にまだ眠っていたい気もした。
そう思ったカインは、寝返りをうった。
仰向けの体勢から、横向きへと体勢を変えても、カインを優しく包み込む枕は変わらずに柔らかくいい匂いがしていた。
不思議に思いつつも、どうして自分が寝ているのかを考えたカインは、意識が暗くなる前に見たシーナの照れた顔を思い出して、ついついデレッとした表情をしてしまった。
そこで、ふと思い出したのだ。
この居心地のいい枕の感覚をどこかで体験したことをだ。
シーナと距離を置こうと決めた数日前の出来事だった。
あの日、シーナの膝枕で眠った時のことが思い出されたのだ。
そう、あの時と同じ柔らかくいい匂いの枕。
そこまで考えたカインは、急激に意識が覚醒していくのが分かった。
そして、目を開けて状況の確認をしようとしたのだ。
しかし、カインの目に入ってきたのは床に膝をついた状態で座っているシエテとフェルエルタの姿だった。
所謂正座姿で項垂れているシエテとフェルエルタを見たカインは驚きから思わず声が出てしまった。
「はっ?これは一体……」
カインの目が覚めたことを知ったシーナは、心配そうに声を掛けた。
「カイン様、痛いところはないですか?」
「いや、大丈夫だ。むしろとても寝心地の良い枕でよく眠れた。屋敷にこれほどの枕があっただろうか?」
横になったまま、カインは寝心地の良い枕についてうっかり口走っていた。
すると、枕が急に暖かくなったのだ。不思議に思ったカインは、暖かくなった枕を撫でるように触った。
すると、「ひゃっ!」という、シーナの可愛らしい小さな声が聞こえてきたことにカインは、枕の正体に気が付いたのだった。
シーナは、恥ずかしそうにしながらもカインの漏らした言葉に返事をした。
「えっと……。カイン様が膝枕好きなら……、いいよ?いつでもしてあげるよ?でも、恥ずかしいから、あっ、あの、ナデナデはしないで欲しい……かも……」
そう言って、次第に小声になるシーナにカインは無意識に触ったのがシーナの太股だったことに遅まきながら気が付いたのだった。
そして、慌てて体を起こしてからシーナにやましい気持ちで撫でたのではないと弁解したのだった。
「すっ、すまない!!いやらしい気持ちで触ったんじゃないんだ。本当に気持ちが良かったから、ただそれだけだ!!」
「カイン様なら……、いいです……」
「シーナ……」
「カイン様……」
そして、二人は見つめ合い、自然と手を握り合っていた。
見つめ合う二人は、ここには他に人がいることをすっかり忘れ去っていたのだった。
そんな二人に、遠慮がちにミュルエナは声を掛けた。
「あの~、お嬢さん?そろそろ、お兄さんとご友人を許して差し上げては?」
ミュルエナの言葉に、シーナはこの場には他にも人がいることを思い出して、慌ててカインから離れようとしたが、カインはそれを許さなかった。
「あの、カイン様。離してほしいです……。にーにたちが見てるから……」
「俺は構わない」
「えっ、でも……。恥ずかしいです」
「可愛い」
「えっ?あっ、あの……。カイン様?」
「お前が可愛すぎて、離したくない」
カインの積極性にシーナは戸惑うばかりだったが、見かねたシエテはカインに忠告をした。
「ロリコンムッツリ辺境伯は、自重してください。シーたんは恋愛初心者なんです。手加減してください。そうじゃないと、またロリコンムッツリ伯を落とさないといけなく―――」
「にーに!!めっ!!カイン様に手を上げるの禁止!!」
「でっ、でも!!」
「駄目ったら駄目!!」
「シーたん!!だって、あのままだったら、領主様はシーたんの事食べてたかもしれない!!ってか、きっと初夜の前に食べられるに決まってる!!なんて恐ろしい!!何も知らないシーたんにあんなことやこんな事をして、それをオカズにはぁはぁしてるんだきっと!!この変態め!!」
興奮したように言うシエテに対して、シーナは小首をかしげるようにして眉を寄せていた。
「えっと、にーにの言っている意味全然分からなかったよ……。でも、カイン様は人を食べたりしないよ!!何言ってるの?それと、ご飯のおかずは、はぁはぁじゃなくて、ふーふーして食べるものだと思うの?でも、知らなかった、初夜のときには何か特別なご飯を食べるんだね!!やっぱりにーにはすごいね!!なんでも知ってるんだもん」
そう言って、ニコニコとシエテに微笑みかけるシーナの言葉にその場にいる全員がシーナの性知識の欠落を思い出して表情を引きつらせたのだった。
中でも、シエテの焦りは群を抜いていた。
(やばいやばいやばい!!そう言えばシーたんは、性知識が欠落していた!!迂闊なことを言ったら、「にーにのエッチ、変態!!不潔、嫌い!!」って言われてしまう。それだけは阻止しなければ!!)
そして、カインもシーナの言葉に動揺を隠せなかった。
(こんな何も知らない子に、あんなことやこんな事をした日には、「カイン様のエッチ、変態!!不潔、嫌い嫌い!!」と言われてしまう。それだけはなんとしても阻止しなければ!!何事も、ゆっくり進めれば大丈夫なはずだ……)
しかし、心地の良い枕の感覚にまだ眠っていたい気もした。
そう思ったカインは、寝返りをうった。
仰向けの体勢から、横向きへと体勢を変えても、カインを優しく包み込む枕は変わらずに柔らかくいい匂いがしていた。
不思議に思いつつも、どうして自分が寝ているのかを考えたカインは、意識が暗くなる前に見たシーナの照れた顔を思い出して、ついついデレッとした表情をしてしまった。
そこで、ふと思い出したのだ。
この居心地のいい枕の感覚をどこかで体験したことをだ。
シーナと距離を置こうと決めた数日前の出来事だった。
あの日、シーナの膝枕で眠った時のことが思い出されたのだ。
そう、あの時と同じ柔らかくいい匂いの枕。
そこまで考えたカインは、急激に意識が覚醒していくのが分かった。
そして、目を開けて状況の確認をしようとしたのだ。
しかし、カインの目に入ってきたのは床に膝をついた状態で座っているシエテとフェルエルタの姿だった。
所謂正座姿で項垂れているシエテとフェルエルタを見たカインは驚きから思わず声が出てしまった。
「はっ?これは一体……」
カインの目が覚めたことを知ったシーナは、心配そうに声を掛けた。
「カイン様、痛いところはないですか?」
「いや、大丈夫だ。むしろとても寝心地の良い枕でよく眠れた。屋敷にこれほどの枕があっただろうか?」
横になったまま、カインは寝心地の良い枕についてうっかり口走っていた。
すると、枕が急に暖かくなったのだ。不思議に思ったカインは、暖かくなった枕を撫でるように触った。
すると、「ひゃっ!」という、シーナの可愛らしい小さな声が聞こえてきたことにカインは、枕の正体に気が付いたのだった。
シーナは、恥ずかしそうにしながらもカインの漏らした言葉に返事をした。
「えっと……。カイン様が膝枕好きなら……、いいよ?いつでもしてあげるよ?でも、恥ずかしいから、あっ、あの、ナデナデはしないで欲しい……かも……」
そう言って、次第に小声になるシーナにカインは無意識に触ったのがシーナの太股だったことに遅まきながら気が付いたのだった。
そして、慌てて体を起こしてからシーナにやましい気持ちで撫でたのではないと弁解したのだった。
「すっ、すまない!!いやらしい気持ちで触ったんじゃないんだ。本当に気持ちが良かったから、ただそれだけだ!!」
「カイン様なら……、いいです……」
「シーナ……」
「カイン様……」
そして、二人は見つめ合い、自然と手を握り合っていた。
見つめ合う二人は、ここには他に人がいることをすっかり忘れ去っていたのだった。
そんな二人に、遠慮がちにミュルエナは声を掛けた。
「あの~、お嬢さん?そろそろ、お兄さんとご友人を許して差し上げては?」
ミュルエナの言葉に、シーナはこの場には他にも人がいることを思い出して、慌ててカインから離れようとしたが、カインはそれを許さなかった。
「あの、カイン様。離してほしいです……。にーにたちが見てるから……」
「俺は構わない」
「えっ、でも……。恥ずかしいです」
「可愛い」
「えっ?あっ、あの……。カイン様?」
「お前が可愛すぎて、離したくない」
カインの積極性にシーナは戸惑うばかりだったが、見かねたシエテはカインに忠告をした。
「ロリコンムッツリ辺境伯は、自重してください。シーたんは恋愛初心者なんです。手加減してください。そうじゃないと、またロリコンムッツリ伯を落とさないといけなく―――」
「にーに!!めっ!!カイン様に手を上げるの禁止!!」
「でっ、でも!!」
「駄目ったら駄目!!」
「シーたん!!だって、あのままだったら、領主様はシーたんの事食べてたかもしれない!!ってか、きっと初夜の前に食べられるに決まってる!!なんて恐ろしい!!何も知らないシーたんにあんなことやこんな事をして、それをオカズにはぁはぁしてるんだきっと!!この変態め!!」
興奮したように言うシエテに対して、シーナは小首をかしげるようにして眉を寄せていた。
「えっと、にーにの言っている意味全然分からなかったよ……。でも、カイン様は人を食べたりしないよ!!何言ってるの?それと、ご飯のおかずは、はぁはぁじゃなくて、ふーふーして食べるものだと思うの?でも、知らなかった、初夜のときには何か特別なご飯を食べるんだね!!やっぱりにーにはすごいね!!なんでも知ってるんだもん」
そう言って、ニコニコとシエテに微笑みかけるシーナの言葉にその場にいる全員がシーナの性知識の欠落を思い出して表情を引きつらせたのだった。
中でも、シエテの焦りは群を抜いていた。
(やばいやばいやばい!!そう言えばシーたんは、性知識が欠落していた!!迂闊なことを言ったら、「にーにのエッチ、変態!!不潔、嫌い!!」って言われてしまう。それだけは阻止しなければ!!)
そして、カインもシーナの言葉に動揺を隠せなかった。
(こんな何も知らない子に、あんなことやこんな事をした日には、「カイン様のエッチ、変態!!不潔、嫌い嫌い!!」と言われてしまう。それだけはなんとしても阻止しなければ!!何事も、ゆっくり進めれば大丈夫なはずだ……)
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