上 下
31 / 113
第二部

第三章 幕間

しおりを挟む
 シーナが、シエテにカインのことを一度だけ聞いてきた。
 あれ以降そう言った事を聞いてくることはなかった。そして、それ以来そう言った前世の話題は一切シーナの口から出ることは無かった。
 そのことに安心していたシエテだったが、今はそれどころではなかった。
 
 大切にしている可愛いシーナに、悪い虫とお邪魔虫がついてしまった。
 
 悪い虫は、道化を装ってるのがミエミエで今のところ・・・・・は、あまり問題でないと判断した。
 問題なのは、お邪魔虫の方だった。
 
 シエテは、お邪魔虫ことフェルエルタから自分と同じ匂いシーナ大好きオーラを感じていた。
 しかし、恐ろしいことにシーナはそんなフェルエルタに懐いてしまった。
 無表情なフェルエルタは、顔に出さない分厄介な相手でもあった。
 同類シーナ大好きのシエテにはその心の中が嫌でも分かってしまった。
 
 ある時、フェルエルタはお菓子を作ったからとソル家までやってきたことがあった。
 もちろん、悪い虫のクリストフも付いてきた。
 
 シーナは、友達が家に遊びに来てくれたと言うことで、それはそれは嬉しそうに二人を家に案内したのだ。
 そして、フェルエルタは作ってきたというお菓子をシーナに無表情で差し出した。
 シーナは、無表情で手渡されたお菓子を見て、頬を染めて瞳を輝かせて言った。
 
「わあぁ~お姉ちゃんのお菓子だ。ありがとう、お姉ちゃんの作るお菓子大好きだから嬉しいな」

「いい。私も、(シーちゃんが)好きだから(可愛い……。うちに連れて帰りたい……)」

「でもすっごく嬉しいよ!私も(お菓子)大好きだから嬉しい。ありがとうお姉ちゃん」

「(シーちゃん)好き……(シーちゃんも私のことが好きって!!うふふ。どうしたらシーちゃんとずっと一緒にいられる?やっぱり、愚弟に頑張ってもらって、お嫁に来てもらうしかない。そうしたら義理の姉妹になって一緒に暮らせる。愚弟に店を継がせて、私も店の手伝いをするっとことで実家暮らし続行。良い案。うん、とても良い案)」

 そう言って、シーナをぎゅっと抱きしめたのだ。シーナも恥ずかしそうにしながらも、ぎゅっとした。
 
 ぎゅっとし合う二人を見てシエテは、お茶を飲むために用意していたカップを持つ手に思わず力が入ってしまった。
 シエテがぎゅっとしてもされるままで、ぎゅっとはしてくれないのに、フェルエルタにはぎゅっとするのだ。
 羨ましい光景にシエテは嫉妬した。それはもう、手にしていたカップが割れてしまうほどに。
 
 
 それからは、対抗意識という訳ではないが、事あるごとにシーナの頭をナデナデしたり、ぎゅっと抱きしめた時に、ほっぺたをスリスリしたり、お菓子を食べるときにはあーんをしたりと、シエテのシスコンが上限を振り切って暴走を始めたのだった。
 
 この暴走を目の当たりにしたフェルエルタは、さらなるスキンシップをするべくシーナを構い倒した。
 すると、シエテもさらなる甘やかしを繰り広げた。
 
 そんな二人を見てクリストフは、半眼で吐き捨てるように言った。
 
「お前ら……。似た者同士だな」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

欲情しないと仰いましたので白い結婚でお願いします

ユユ
恋愛
他国の王太子の第三妃として望まれたはずが、 王太子からは拒絶されてしまった。 欲情しない? ならば白い結婚で。 同伴公務も拒否します。 だけど王太子が何故か付き纏い出す。 * 作り話です * 暇つぶしにどうぞ

傍若無人な姉の代わりに働かされていた妹、辺境領地に左遷されたと思ったら待っていたのは王子様でした!? ~無自覚天才錬金術師の辺境街づくり~

日之影ソラ
恋愛
【新作連載スタート!!】 https://ncode.syosetu.com/n1741iq/ https://www.alphapolis.co.jp/novel/516811515/430858199 【小説家になろうで先行公開中】 https://ncode.syosetu.com/n0091ip/ 働かずパーティーに参加したり、男と遊んでばかりいる姉の代わりに宮廷で錬金術師として働き続けていた妹のルミナ。両親も、姉も、婚約者すら頼れない。一人で孤独に耐えながら、日夜働いていた彼女に対して、婚約者から突然の婚約破棄と、辺境への転属を告げられる。 地位も婚約者も失ってさぞ悲しむと期待した彼らが見たのは、あっさりと受け入れて荷造りを始めるルミナの姿で……?

我が家の乗っ取りを企む婚約者とその幼馴染みに鉄槌を下します!

真理亜
恋愛
とある侯爵家で催された夜会、伯爵令嬢である私ことアンリエットは、婚約者である侯爵令息のギルバートと逸れてしまい、彼の姿を探して庭園の方に足を運んでいた。 そこで目撃してしまったのだ。 婚約者が幼馴染みの男爵令嬢キャロラインと愛し合っている場面を。しかもギルバートは私の家の乗っ取りを企んでいるらしい。 よろしい! おバカな二人に鉄槌を下しましょう!  長くなって来たので長編に変更しました。

【完結】結婚式当日、婚約者と姉に裏切られて惨めに捨てられた花嫁ですが

Rohdea
恋愛
結婚式の当日、花婿となる人は式には来ませんでした─── 伯爵家の次女のセアラは、結婚式を控えて幸せな気持ちで過ごしていた。 しかし結婚式当日、夫になるはずの婚約者マイルズは式には現れず、 さらに同時にセアラの二歳年上の姉、シビルも行方知れずに。 どうやら、二人は駆け落ちをしたらしい。 そんな婚約者と姉の二人に裏切られ惨めに捨てられたセアラの前に現れたのは、 シビルの婚約者で、冷酷だの薄情だのと聞かされていた侯爵令息ジョエル。 身勝手に消えた姉の代わりとして、 セアラはジョエルと新たに婚約を結ぶことになってしまう。 そして一方、駆け落ちしたというマイルズとシビル。 二人の思惑は───……

茶番には付き合っていられません

わらびもち
恋愛
私の婚約者の隣には何故かいつも同じ女性がいる。 婚約者の交流茶会にも彼女を同席させ仲睦まじく過ごす。 これではまるで私の方が邪魔者だ。 苦言を呈しようものなら彼は目を吊り上げて罵倒する。 どうして婚約者同士の交流にわざわざ部外者を連れてくるのか。 彼が何をしたいのかさっぱり分からない。 もうこんな茶番に付き合っていられない。 そんなにその女性を傍に置きたいのなら好きにすればいいわ。

「僕は病弱なので面倒な政務は全部やってね」と言う婚約者にビンタくらわした私が聖女です

リオール
恋愛
これは聖女が阿呆な婚約者(王太子)との婚約を解消して、惚れた大魔法使い(見た目若いイケメン…年齢は桁が違う)と結ばれるために奮闘する話。 でも周囲は認めてくれないし、婚約者はどこまでも阿呆だし、好きな人は塩対応だし、婚約者はやっぱり阿呆だし(二度言う) はたして聖女は自身の望みを叶えられるのだろうか? それとも聖女として辛い道を選ぶのか? ※筆者注※ 基本、コメディな雰囲気なので、苦手な方はご注意ください。 (たまにシリアスが入ります) 勢いで書き始めて、駆け足で終わってます(汗

勇者に幼馴染で婚約者の彼女を寝取られたら、勇者のパーティーが仲間になった。~ただの村人だった青年は、魔術師、聖女、剣聖を仲間にして旅に出る~

霜月雹花
ファンタジー
田舎で住む少年ロイドには、幼馴染で婚約者のルネが居た。しかし、いつもの様に農作業をしていると、ルネから呼び出しを受けて付いて行くとルネの両親と勇者が居て、ルネは勇者と一緒になると告げられた。村人達もルネが勇者と一緒になれば村が有名になると思い上がり、ロイドを村から追い出した。。  ロイドはそんなルネや村人達の行動に心が折れ、村から近い湖で一人泣いていると、勇者の仲間である3人の女性がロイドの所へとやって来て、ロイドに向かって「一緒に旅に出ないか」と持ち掛けられた。  これは、勇者に幼馴染で婚約者を寝取られた少年が、勇者の仲間から誘われ、時に人助けをしたり、時に冒険をする。そんなお話である

貴方にとって、私は2番目だった。ただ、それだけの話。

天災
恋愛
 ただ、それだけの話。

処理中です...