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第二部

第二章 そのおっさんは死んだ魚のような目をしていた 2

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 シーナがおっさんと会った翌日、その日は早朝に自主訓練をした後はシエテとともに両親の手伝いをするため道具一式を持って庭園に向かった。
 シーナとシエテは簡単な作業が中心で、花や木に特性の肥料を与えて水をあげるというものだった。
 何時ものように、シーナは鼻歌交じりに作業をしているとこれまたいつも通りにシエテが「シーたん可愛いはあはあ」と残念な様子で作業を進めていた。
 
 一通り、両親から指示のあった区間の作業が終わったところで、シーナは一足先に昼食の準備をするために自宅に戻ることにした。
 実際には、朝に下準備は済ませているために温め直して皿に盛り付けると言った簡単なもので終わった。
 シエテと両親が戻ってきてから、四人揃って食事を始めた。
 
 何時ものように、他愛のない会話をしていたが、母が何気ない様子で領主の話を始めた。
 
「そう言えば、領主様が久しぶりに屋敷に戻られたそうよ」

「そうらしいな。だが、俺達には関係ないな。以前の代理様の時から関わりは薄いしな。俺たちは、変わらずに庭園の手入れをするだけだ」

「そうね。でも、本来ならご挨拶くらいはすべきなんでしょうけど、今の領主様になった時に、出迎えは無用ってことだったし」

 両親の何気ない会話を聞いていたシーナは出迎え無用と指示があったことが初耳だったため驚いた声を上げた。
 
「えっ?そうだったの?てっきりこれが普通だと思ってたよ。本当は出迎えが必要なんだね」

「ええ、そうよ。でも、初めて領主様がこちらに来られた時に、使用人全員でお出迎えをしたら、これからは無用だって言われちゃってね。それからは、偶然居合わせた時にご挨拶する程度なのよね。本当に変わったお方だわ」

「ふーん」

 雇用主の領主が変わった人物だということは分かったが、実害のあるような人物ではなさそうだったため、直ぐにシーナの興味はなくなった。
 それよりも、今日の夕食用に森に自生しているハーブと木の実を採りに行きたいということに思考が向かった。
 
 両親に午後の作業について確認すると、シエテだけでも足りるということだったので、午後は家の掃除をしたあとに、森に行くことに決めた。
 
 シエテは、「シーたんと楽しく作業がしたかったよ~」と情けない声を上げていたが、必殺の妹モードでなんとかなだめることに成功した。
 
 妹モードについては、できるだけシーナは使いたくなかったが、面倒くさいシエテの仕事効率をあげるために仕方なくという体でだったが。
 作業に行くことを渋るシエテの服の裾を小さく握ってから、上目遣いで少し首を傾げる姿勢を取ってから、「にーに、お仕事頑張ってね。にーにのために美味しいごはんを作ってお家で待ってるからね」と言ってから、笑顔を見せるというものだ。
 シーナ自身は、甘えた素振りの自分の姿を「うわっ、自分キモい。キモすぎ!!」と思っているが、それを目の当たりにしているシエテは天にも昇る心地だった。実際には、とっさに鼻を押さえて鼻血をこらえるのに必死だったのは言うまでもないし、両親は「うちの子マジ天使!!」と親ばかを炸裂させていたりするのだった。
 
 こうして、作業に向かった三人を見送ってから、家の掃除をしてから、カゴとナイフと念の為弓を持って森にでかけた。
 
 
 森に着いてから、手慣れた様子でハーブを必要な数だけ摘んで、木ノ実も採りすぎない程度に採取する。
 上々の収穫物に、ニコニコしていると微かに甘い匂いがした。
 風上から微かに香ってくる匂いがなにか見当を付けたシーナは満面の笑みを浮かべた。
 
 必要な薬草が生えている場所を思い出し、急いでそこに向かう。本来は乾燥させたほうがいいのだが、今回は生のまま使用するため、少し多めに採取した。
 採取した薬草を大きめの葉に包んでから燃えやすい枯れ葉や枯れ木と一緒に燃やした。
 少しすると、独特の匂いが周囲に漂ってきたことを確認してから、風の魔術で煙を誘導する。
 誘導した煙は、木の枝のあまり高くないところに出来ていた蜂の巣の周辺に留まるようにしていた。
 少しすると、蜂の巣の中にいたミツバチたちが煙を嫌がって巣から出てくるのが見えた。
 数分そうしていると、巣から大体の蜂たちが出ていったことを確認してから弓矢で蜂の巣と枝の間を狙って射った。
 
 狙い通りに蜂の巣は枝から離れて地面に落ちた。そこまで高いところでは無かったが、落ちた時に蜂の巣が少し壊れてしまったが問題ないと判断し、落ちた蜂の巣を回収した。
 念の為、拾った蜂の巣を更に煙で燻したが、巣からミツバチが出てこないことを確認してからその場を後にした。
 
 小川に移動してから、汚れた手とついでに顔も洗った。
 蜂の巣は、家に帰ってから絞ることにして背負っていたカゴの中に入れていた。

 今は、煙を浴びて体中に独特な匂いがついてしまったため一刻も早くお風呂に入りたいところだが、折角小川に来たからと、仕掛けていた仕掛けに魚が掛かっていないかを確認する。
 仕掛けには、嬉しいことに鮎が7匹も掛かっていた。
 鮎を仕掛けから取ろうとすると、背後から人の気配がしたため、怪訝に思い振り返った。
 振り返ったシーナの瞳には、昨日のおっさんと思われる男が映っていた。
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