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第一部
第三章 血に染まった令嬢は、悪魔の子と蔑まれる 5
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イシュミールが目を覚ましたとき、直ぐに真っ白な天井が目に入った。
ここがどこなのかと、確かめるために体を動かそうとしたが、全く体に力が入らなかった。
それに、左腕と喉に違和感があった。
誰かを呼んで、この状況を聞かなかればと思い、声を出そうとしたが、なぜか口からはひゅーひゅーと言った、音しかしなかった。
(あら?風邪でも引いたのかしら?わたし……、そうだわ。カーシュならこの状況を知ってい、る……はず?あら?なにかとても大切なことを忘れているような?何かしら?)
そこまで考えてから、癖になっていた左手の薬指の指輪に触れようとして違和感に気がついた。
(あら?指輪はどこかしら……)
指輪の感覚がないどころか、左腕の感覚がないことに気がついてから、気を失うまでの状況を一気に思い出したイシュミールは、吐き気がこみ上げてきた。
口元を右手で抑えて必死に吐き気を堪える。
あまりの苦しさに、涙目になりながらも状況を整理する。
あのとき、何故かイシュタルが男に命じて戦えない状態のカーシュの命を奪った。
動かないカーシュを忌々しそうに蹴りつけるイシュタルに恐怖した。
男に命じて、イシュミールの喉を潰した。
分かっている状況をただ並べただけで、どうしてそうなったのか考えたくなかった。
でも、状況からイシュタルが関わっていることは分かった。
必死に考えを巡らせたが、どうしてこうなってしまったのか理由がわからない。
しかし、一つだけ思い当たることがあった。
考えないように蓋をしていたことが。
初めてカインにあった婚約式後のお茶会で、何故かイシュタルがカインの初恋の相手だと偽ったのかを。
そして、遅ればせながらも一つの考えが頭をよぎった。
(そうか……。イシュタルもカイン様が好きだったんだわ……。だから……。でも、それでも……)
姉妹で好きな人を取り合った結果が、カーシュの死と左腕の切断ということに寒気がして、体が震えた。
これからのことを考えなければと思ったが、思考がまとまらなかった。
ひどくのどが渇いたと思い、ベッド横のチェストに置いてあった水差しとコップに手を伸ばしたが、何故か手が届かなかった。
不思議に思ってもう一度右手を伸ばすと、今度は距離感が狂ったのか水差しを倒してしまった。
部屋に水差しがチェストから落ちて割れる音が鳴り響いた。
そこで、自分の身に起こったもう一つのことに気がついた。
そう、命こそ助かったようだが、右目が見えなくなっていることに愕然とした。
震える右手で、左目の視界を塞ぐと世界は暗闇に包まれたのだ。
これ以上失うものはないだろうと思いつつ、これでもしカインまで失ってしまってはという考えが頭をよぎり恐怖で血の気が引いた。
そこに、イシュタルとカインが現れた。
「気がついたのね。よかった」
「何がいいものか。この狂った女のせいで沢山の人間が死んだ」
「カイン様……。でも、わたしの大切な片割れです。たとえ憎まれていたとしても。この子だけでも生きていてくれて、わたしはうれしいです。死んでしまったカーシュや、騎士たちには申し訳ないですが」
そしてカインは、悲しそうにうつむくイシュタルの肩をガラス細工でも扱うかのごとく大切そうに抱いたのだ。
その光景に、イシュミールは目を見張った。
そして、自身の肩を抱くカインの手に左手を添えたイシュタルのその指に、イシュミールに贈られたはずのカインの指輪があることに。
まさかの考えに、体中から血の気が引いた。
(まさか……、わたしの考えすぎよ。そんなことあるわけないじゃないの)
嫌な考えを消すために、カインに右手を伸ばしたが、その手は届くことはなかった。
「その不浄な身で俺に触れるな!!イシュミールの妹でなければ即刻死刑にしているところだ!!」
カインの言葉に伸ばした手は空を切った。
イシュミールはカインに自分の身にあったことを話そうとして口を開いたが、出てきたのは「ひゅーひゅー」と言う音だけだった。
イシュミールが声が出ないことに絶望していると、両親が部屋に入ってきて、絶叫した。
「どうしてこんな恐ろしいことを!!」
「この子を殺そうだなんて!!貴方なんて産まなければよかった!!」
両親の言っていることが理解できなかった。訳がわからないイシュミールは、助けを求めるようにカインを見たが、憎悪の籠もった瞳で見返されただけだった。
そこで、気がついてしまったのだ。この恐ろしい現実に。
(まさか、本当にわたしがイシュタルだと思われているの?それに、イシュタルがわたしと思われているの?どうして?なぜなの?カイン様はどうして気がついてくれないの?)
混乱するイシュミールを他所に、体の動かないイシュミールをベッドから引きずり下ろして、引きずるようにして両親は謁見の間に向かった。
そして、イシュミールの頭を地べたに擦り付けて、言った。
「この度は、王子殿下の婚約者をこの者が殺害しようとしたこと。騎士たちの命……。何とお詫びを申していいものか……」
陛下の側に控えていたカインはその言葉を聞いて火が点いたように怒鳴った。
「イシュタル!!貴様はなんということをしたんだ!!姉を殺そうとし、それを守ろうとしたカーシュを葬った!!その怪我は自業自得だ!貴様は許さない!!!」
その言葉を聞いたイシュタルはすかさずに言った。
「カイン様、どうか妹を許してください!私は無事ですから。どうか命だけは!!」
イシュタルに懇願されて、カインは、なんとか怒りを収めたが、体中からイシュミールを射殺さんばかりの殺気が溢れ出していた。
そして、なんとか怒りを収めて命だけは助けるようになんとかならないかと陛下に懇願した。
「父上、俺はこいつを殺してしまいたい。しかし、これ以上イシュミールを悲しませたくはない」
それを聞いた陛下は眉を寄せつつも、思案した。
「そうだな。本来は処刑にするところだが、外聞が悪すぎるのも事実。このことを知っているものはごくわずか……。事実を隠蔽しイシュタルを生涯囚人の塔に幽閉としよう」
陛下の判断にその場にいたものは従うべく礼を取った。
そして、イシュミールはすぐに囚人の塔に幽閉されることになった。
囚人の塔は、王宮の中にあったが限られたものしか近づくことが許されない場所でもあった。
その場所は王族や貴族などで、表には出せない罪人を密かに囚えておくための場所だった。
イシュミールは、囚人の塔の最上階に幽閉されてすぐに、足かせを付けられた。
自分の足に付けられた足枷を見てどうしようもなくおかしくなった。
(塔の最上階に閉じ込められていて逃げることも出来ないのに、足枷なんて……。くすくす、可笑しすぎだわ)
閉じ込められている部屋は、今にも壊れてしまいそうなほどぼろぼろなベッドとトイレ代わりのツボがあるだけで他にはなにもない部屋だった。
イシュミールにできることは、小さく切り取られた窓から外を見ることだけだった。
閉じ込められてから、一日に一度パンと水を持って使用人が現れるだけで他に訪れるものはいなかった。
そんな生活が一週間続いたところで、食事は一日置きに1食となり、イシュミールは考える力も失いつつあった。
ただ、眠りにつくたびにカーシュの必死な姿とカインの冷たい視線が思い出されて眠ることもできなくなってきていた。
日々、夢と現の間を行き来する日々が続いた。
そんな中、足枷が付けられていた右足の感覚がなくなっていることに気がついた。
ぼんやりする頭で、右足を見ると何故か足枷が外れていた。不思議に思いつつも、もうなにも考えることができなくなっていた。
ただ、イシュミールが思うことは、どうしてこうなってしまったのかという思いだけだった。
そうして、日々ぼんやりと過ごしていると小さく切り取られた窓の外から声が聞こえた。
何と言っているのかはわからなかったが、とても必死な声音と包み込むような優しい声音だったことだけは分かった。
なんだか、もうどうでも良くなってきたイシュミールは、無意識に左腕を窓に向かって伸ばした。
決して届くことはないと分かっていたが、何故かそうすることで何かが掴めそうな気がしたのだ。
(わたし……、どうしたんだろう?はぁ、なんだかとても疲れたわ。それに、あっちは暖かそうで、久しぶりによく眠れそうな気がするわ。もう、いいわよね?)
そんなことを思っていると、久しぶりに塔を上ってくる足音が聞こえてきた。
最近は、食事も届くことはなくこのままぼんやりと一人で消えてしまうのかと思っていたため、足音の主が誰でも良かった。
今は、窓の外に感じる暖かさのほうが大事だった。
そして、イシュミールの部屋の扉が開いた瞬間、「パチンッ」と金属が爆ぜるような音がしたと思ったと同時に、イシュミールは光の粒子に包まれてその姿はその場から完全に消えたのだった。
その場には、呆然とした様子のカインの姿だけが残されていた。
この事件は醜聞になるということで、内々に処理されることとなった。
ただし、噂はどこかから漏れるもので、世間にはまことしやかにこの様に伝わった。
「「何時も、姉のものを奪っていた妹はついに、王子の妻の座も欲しくなった。そして、金で雇った者を差し向けて、姉を襲おうとした。しかし、王宮の騎士たちと姉を守るために付けられた守護騎士が命を掛けて守り、金で雇われた者たちを撃退した。しかし、勇敢な守護騎士は、姉を守るために受けた傷が元で死んでしまったと。王宮の騎士たちも皆その命を散らした。妹は、最後の力を振り絞った守護騎士に左腕を切り飛ばされたが、心優しい姉に手当をされて命を拾った。恥知らずの妹は、優しい姉の懇願で死刑は免れたものの、生涯幽閉されることになったのだという。なんて悪魔のような恐ろしい子なのだろうか」」
この筋書きは、イシュタルがカインや国王陛下たちに説明した内容とほぼ一緒だったという。
ここがどこなのかと、確かめるために体を動かそうとしたが、全く体に力が入らなかった。
それに、左腕と喉に違和感があった。
誰かを呼んで、この状況を聞かなかればと思い、声を出そうとしたが、なぜか口からはひゅーひゅーと言った、音しかしなかった。
(あら?風邪でも引いたのかしら?わたし……、そうだわ。カーシュならこの状況を知ってい、る……はず?あら?なにかとても大切なことを忘れているような?何かしら?)
そこまで考えてから、癖になっていた左手の薬指の指輪に触れようとして違和感に気がついた。
(あら?指輪はどこかしら……)
指輪の感覚がないどころか、左腕の感覚がないことに気がついてから、気を失うまでの状況を一気に思い出したイシュミールは、吐き気がこみ上げてきた。
口元を右手で抑えて必死に吐き気を堪える。
あまりの苦しさに、涙目になりながらも状況を整理する。
あのとき、何故かイシュタルが男に命じて戦えない状態のカーシュの命を奪った。
動かないカーシュを忌々しそうに蹴りつけるイシュタルに恐怖した。
男に命じて、イシュミールの喉を潰した。
分かっている状況をただ並べただけで、どうしてそうなったのか考えたくなかった。
でも、状況からイシュタルが関わっていることは分かった。
必死に考えを巡らせたが、どうしてこうなってしまったのか理由がわからない。
しかし、一つだけ思い当たることがあった。
考えないように蓋をしていたことが。
初めてカインにあった婚約式後のお茶会で、何故かイシュタルがカインの初恋の相手だと偽ったのかを。
そして、遅ればせながらも一つの考えが頭をよぎった。
(そうか……。イシュタルもカイン様が好きだったんだわ……。だから……。でも、それでも……)
姉妹で好きな人を取り合った結果が、カーシュの死と左腕の切断ということに寒気がして、体が震えた。
これからのことを考えなければと思ったが、思考がまとまらなかった。
ひどくのどが渇いたと思い、ベッド横のチェストに置いてあった水差しとコップに手を伸ばしたが、何故か手が届かなかった。
不思議に思ってもう一度右手を伸ばすと、今度は距離感が狂ったのか水差しを倒してしまった。
部屋に水差しがチェストから落ちて割れる音が鳴り響いた。
そこで、自分の身に起こったもう一つのことに気がついた。
そう、命こそ助かったようだが、右目が見えなくなっていることに愕然とした。
震える右手で、左目の視界を塞ぐと世界は暗闇に包まれたのだ。
これ以上失うものはないだろうと思いつつ、これでもしカインまで失ってしまってはという考えが頭をよぎり恐怖で血の気が引いた。
そこに、イシュタルとカインが現れた。
「気がついたのね。よかった」
「何がいいものか。この狂った女のせいで沢山の人間が死んだ」
「カイン様……。でも、わたしの大切な片割れです。たとえ憎まれていたとしても。この子だけでも生きていてくれて、わたしはうれしいです。死んでしまったカーシュや、騎士たちには申し訳ないですが」
そしてカインは、悲しそうにうつむくイシュタルの肩をガラス細工でも扱うかのごとく大切そうに抱いたのだ。
その光景に、イシュミールは目を見張った。
そして、自身の肩を抱くカインの手に左手を添えたイシュタルのその指に、イシュミールに贈られたはずのカインの指輪があることに。
まさかの考えに、体中から血の気が引いた。
(まさか……、わたしの考えすぎよ。そんなことあるわけないじゃないの)
嫌な考えを消すために、カインに右手を伸ばしたが、その手は届くことはなかった。
「その不浄な身で俺に触れるな!!イシュミールの妹でなければ即刻死刑にしているところだ!!」
カインの言葉に伸ばした手は空を切った。
イシュミールはカインに自分の身にあったことを話そうとして口を開いたが、出てきたのは「ひゅーひゅー」と言う音だけだった。
イシュミールが声が出ないことに絶望していると、両親が部屋に入ってきて、絶叫した。
「どうしてこんな恐ろしいことを!!」
「この子を殺そうだなんて!!貴方なんて産まなければよかった!!」
両親の言っていることが理解できなかった。訳がわからないイシュミールは、助けを求めるようにカインを見たが、憎悪の籠もった瞳で見返されただけだった。
そこで、気がついてしまったのだ。この恐ろしい現実に。
(まさか、本当にわたしがイシュタルだと思われているの?それに、イシュタルがわたしと思われているの?どうして?なぜなの?カイン様はどうして気がついてくれないの?)
混乱するイシュミールを他所に、体の動かないイシュミールをベッドから引きずり下ろして、引きずるようにして両親は謁見の間に向かった。
そして、イシュミールの頭を地べたに擦り付けて、言った。
「この度は、王子殿下の婚約者をこの者が殺害しようとしたこと。騎士たちの命……。何とお詫びを申していいものか……」
陛下の側に控えていたカインはその言葉を聞いて火が点いたように怒鳴った。
「イシュタル!!貴様はなんということをしたんだ!!姉を殺そうとし、それを守ろうとしたカーシュを葬った!!その怪我は自業自得だ!貴様は許さない!!!」
その言葉を聞いたイシュタルはすかさずに言った。
「カイン様、どうか妹を許してください!私は無事ですから。どうか命だけは!!」
イシュタルに懇願されて、カインは、なんとか怒りを収めたが、体中からイシュミールを射殺さんばかりの殺気が溢れ出していた。
そして、なんとか怒りを収めて命だけは助けるようになんとかならないかと陛下に懇願した。
「父上、俺はこいつを殺してしまいたい。しかし、これ以上イシュミールを悲しませたくはない」
それを聞いた陛下は眉を寄せつつも、思案した。
「そうだな。本来は処刑にするところだが、外聞が悪すぎるのも事実。このことを知っているものはごくわずか……。事実を隠蔽しイシュタルを生涯囚人の塔に幽閉としよう」
陛下の判断にその場にいたものは従うべく礼を取った。
そして、イシュミールはすぐに囚人の塔に幽閉されることになった。
囚人の塔は、王宮の中にあったが限られたものしか近づくことが許されない場所でもあった。
その場所は王族や貴族などで、表には出せない罪人を密かに囚えておくための場所だった。
イシュミールは、囚人の塔の最上階に幽閉されてすぐに、足かせを付けられた。
自分の足に付けられた足枷を見てどうしようもなくおかしくなった。
(塔の最上階に閉じ込められていて逃げることも出来ないのに、足枷なんて……。くすくす、可笑しすぎだわ)
閉じ込められている部屋は、今にも壊れてしまいそうなほどぼろぼろなベッドとトイレ代わりのツボがあるだけで他にはなにもない部屋だった。
イシュミールにできることは、小さく切り取られた窓から外を見ることだけだった。
閉じ込められてから、一日に一度パンと水を持って使用人が現れるだけで他に訪れるものはいなかった。
そんな生活が一週間続いたところで、食事は一日置きに1食となり、イシュミールは考える力も失いつつあった。
ただ、眠りにつくたびにカーシュの必死な姿とカインの冷たい視線が思い出されて眠ることもできなくなってきていた。
日々、夢と現の間を行き来する日々が続いた。
そんな中、足枷が付けられていた右足の感覚がなくなっていることに気がついた。
ぼんやりする頭で、右足を見ると何故か足枷が外れていた。不思議に思いつつも、もうなにも考えることができなくなっていた。
ただ、イシュミールが思うことは、どうしてこうなってしまったのかという思いだけだった。
そうして、日々ぼんやりと過ごしていると小さく切り取られた窓の外から声が聞こえた。
何と言っているのかはわからなかったが、とても必死な声音と包み込むような優しい声音だったことだけは分かった。
なんだか、もうどうでも良くなってきたイシュミールは、無意識に左腕を窓に向かって伸ばした。
決して届くことはないと分かっていたが、何故かそうすることで何かが掴めそうな気がしたのだ。
(わたし……、どうしたんだろう?はぁ、なんだかとても疲れたわ。それに、あっちは暖かそうで、久しぶりによく眠れそうな気がするわ。もう、いいわよね?)
そんなことを思っていると、久しぶりに塔を上ってくる足音が聞こえてきた。
最近は、食事も届くことはなくこのままぼんやりと一人で消えてしまうのかと思っていたため、足音の主が誰でも良かった。
今は、窓の外に感じる暖かさのほうが大事だった。
そして、イシュミールの部屋の扉が開いた瞬間、「パチンッ」と金属が爆ぜるような音がしたと思ったと同時に、イシュミールは光の粒子に包まれてその姿はその場から完全に消えたのだった。
その場には、呆然とした様子のカインの姿だけが残されていた。
この事件は醜聞になるということで、内々に処理されることとなった。
ただし、噂はどこかから漏れるもので、世間にはまことしやかにこの様に伝わった。
「「何時も、姉のものを奪っていた妹はついに、王子の妻の座も欲しくなった。そして、金で雇った者を差し向けて、姉を襲おうとした。しかし、王宮の騎士たちと姉を守るために付けられた守護騎士が命を掛けて守り、金で雇われた者たちを撃退した。しかし、勇敢な守護騎士は、姉を守るために受けた傷が元で死んでしまったと。王宮の騎士たちも皆その命を散らした。妹は、最後の力を振り絞った守護騎士に左腕を切り飛ばされたが、心優しい姉に手当をされて命を拾った。恥知らずの妹は、優しい姉の懇願で死刑は免れたものの、生涯幽閉されることになったのだという。なんて悪魔のような恐ろしい子なのだろうか」」
この筋書きは、イシュタルがカインや国王陛下たちに説明した内容とほぼ一緒だったという。
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