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第二十二話

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 わたしがマティウス様に抱きかかえられた状態で家に戻ると、シュナイゼルが驚きながらもわたしを迎えてくれた。
 
「姉上! どうしたんですか!? それに、これは……」

 そうよね。マティウス様とベルナー様と共に家に帰ってきたんですもの、驚くわよね。
 わたしがシュナイゼルに説明しようとしたけど、その前にベルナー様が私のふりをしているシュナイゼルを見て、感心したように言ったのだ。
 
「本当にそっくりなんだな……」

 ベルナー様にじろじろと見られていたシュナイゼルは、眉を吊り上げていたけど何も言わなかった。
 だけど、わたしを抱き上げたままのマティウス様に向かってとんでもない悪態を付いてしまったことには悲鳴を上げそうになってしまった。
 
「はぁ。経緯は分からないけど、正体がバレてしまったんですね。姉上、今まで苦労を掛けてしまってごめんなさい。それで、王太子殿下は何故ここにいるのですか? 一方的に婚約破棄しておいて、姉上にどの面下げて―――」

「シュナイゼル! 不敬ですよ!」

 わたしが悪態をつくシュナイゼルを叱りつけると、マティウス様はそれを制止したのだ。
 
「フェルルカ、いいんだ。本当にその通りだよ。でも、シュナイゼルにははっきり言っておく。身勝手なのは重々承知している。だが、私はフェルルカのことを愛しているんだ。あの時からずっと。フェルルカに好きになってもらえるように努力する。だから、私のこれからの行動を君には見ていて欲しいんだ。何か至らない所があれば言って欲しい。改善するよう努力する」

 熱烈な愛の言葉にわたしは、マティウス様の腕の中でこれ以上ないくらい赤くなっていたと思うわ。
 どぎまぎする私とは違って、真剣な様子でそんなことをいうマティウス様にシュナイゼルは、目を丸くした後に大きなため息を吐いていた。
 
「はぁぁ。ほんと、調子狂うなぁ。それよりも、いつまで姉上を抱き上げてるんですか? いい加減に降ろしてください」

「ああ」

 マティウス様の腕の中からようやく床に降ろされたわたしは、小走りに自分の部屋に向かった。
 そして、普段着に着替えて居間に戻った。
 わたしが着替えている間に今に至る経緯を聞かされていたみたいで、シュナイゼルは涙目になってわたしに抱き着いてきたのだ。
 
「姉上……。辛い思いをさせてしまってごめんなさい」

「いいのよ。わたしは、シュナイゼルの為だったらどんなことだって頑張れるもの」

「姉上……」

「もう、男の子でしょ? 泣かないで?」

「うん……。姉上……、今日は一緒に寝てもいいですか?」

「もう……。うん、いいよ。お風呂も久しぶりに一緒に入ろうか?」

「うん! そうだ。前に雑貨屋のお兄さんにもらった入浴剤を使おうよ」

「ええ、そうしましょう」

 大切なシュナイゼルに甘えられたわたしは、きっとデレデレとして締まりのない顔をしていたのだと思う。
 怒った顔をしたマティウス様とベルナー様に起こられてしまっていた。
 
「一緒に寝たり、ましてや風呂など私が許さんぞ。いくら姉弟だとしてもだ。まったく、油断も隙もないこのシスコンめ」

「うらやま……、じゃなくて、まったく、けしからんな」

「ふん。貴方たちに何を言われようとも関係ないですね。そもそも、部外者が口を出さないでください」

「申し訳ございません。シュナイゼルに甘えられるとつい……。わたし、お見苦しい所をお見せしてしまって……」

 わたしがそういうと、シュナイゼルがぎゅっと抱き着きながら慰めるように言ってくれた。
 
「姉上は、自慢の姉上です。見苦しいなんてとんでもないです。姉上は最高にお可愛らしいです。可愛いは正義なのです!」

「そうなのかしら?」

「はい! 大好きです姉上!」

「くすくす。わたしもシュナイゼルが大好きですよ」

「えへへ。姉上~」

「もう、甘えん坊さん」

 今日のシュナイゼルは、いつも以上に甘えん坊さんで少し不思議に感じつつも、わたしからもぎゅっと抱きしめて、頬を寄せて微笑み合っていると、マティウス様とベルナー様から不穏な空気が漂ってきた気がしたのは何故なのでしょう?

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