19 / 24
第十八話
しおりを挟む
ゲルダに秘密を知られてしまったことについて、ベルナー様に相談するか迷った結果、大会に優勝すれば問題ないと判断したわたしは、このことを黙っていることに決めた。
だって、これ以上ご迷惑をおかけするわけにはいかなかったから。
そして、あっという間に大会当日になっていた。
幸い、対戦は魔力を使用することが許されていることもあって、わたしは自分で言うのもあれだけど、圧倒的な強さで勝ち進んでいた。
そして順調に決勝戦まで進んだわたしは、今まさに優勝をその手に掴まんとしていた。
相手の騎士は、第一騎士団の人で初めて会う人だった。
強さもそこそこのものだったけど、身体強化などしていないことから魔力なしなのだと分かった。
剣技だけでここまで勝ち進めていることを思えばとても優秀な騎士なのだと分かった。
実戦であれば、他の魔力持ちの騎士からのバフなども加わって、十分な力を発揮していたことだろう。
だけどこれは個人戦だ。
わたしには魔力があるから負けることはないと思っていたけど、なかなか勝負がつかない状況にわたしは少しだけ焦りが出てきていた。
いくら魔力で強化していても、戦いが長引けば長引くほど、わたしには不利になっていく。
強化していようと、元は脆弱な体のわたしに、長期戦は大きな負担となっていった。
無理やり動かしている体は悲鳴を上げていて、それでもそんな体を強化して動かすということを繰り返す。
そんな状態が続き、勝負がつかないまま打ち合っている時だった。
鍔迫り合いで相手の騎士と睨み合っている時だった。ふと、相手の騎士がニヤリと歪んだ笑みを浮かべたのだ。
わたしは、眉を寄せて疑問に思いつつも、力を込めて相手の剣を跳ねのけようとしたのだ。
その時だった。ふいに不自然なまでに甘い匂いが周囲に漂ったのだ。
周囲に漂う強い匂を嗅いだ瞬間、一瞬眩暈がしたと思った時だった。
わたしは、急に魔力が操れなくなり、全身が鉛の様に重くなっていたのだ。
魔力が操れないわたしは、立つことも出来ず膝を付きそうになっていたけど、相手に膝を付くことは許さないとばかりに襟首を掴まれて宙刷りにされていた。
そして、相手の騎士に軽々と空中に放り出されたと思った次の瞬間、刃を潰した剣で全身をこれでもかと打たれていた。
相手に素早い動きで打たれながらも倒れることは許されなかったわたしは、体中に痛みが走り次第に意識がもうろうとなっていた。
そして、相手の騎士は止めとばかりにわたしのお腹を思いっきり蹴りつけたのだ。お腹を思いっきり蹴りつけられたわたしは、とうとう地面に倒れ伏していた。
だけど、相手は何かわたしに恨みでもあるのか、身動きが出来ないでいるわたしに馬乗りになって審判が止めるまでわたしの顔を殴り続けてのだった。
視界が赤く染まって、何も考えられなくなっているわたしはただ、体に与えられる痛みを受け入れることしか出来なかった。
意識を失う前に、わたしに駆け寄るマティウス様とベルナー様を見た気がしたけど、それを確かめることも出来ずにわたしの意識は深い場所に沈んでいったのだった。
だって、これ以上ご迷惑をおかけするわけにはいかなかったから。
そして、あっという間に大会当日になっていた。
幸い、対戦は魔力を使用することが許されていることもあって、わたしは自分で言うのもあれだけど、圧倒的な強さで勝ち進んでいた。
そして順調に決勝戦まで進んだわたしは、今まさに優勝をその手に掴まんとしていた。
相手の騎士は、第一騎士団の人で初めて会う人だった。
強さもそこそこのものだったけど、身体強化などしていないことから魔力なしなのだと分かった。
剣技だけでここまで勝ち進めていることを思えばとても優秀な騎士なのだと分かった。
実戦であれば、他の魔力持ちの騎士からのバフなども加わって、十分な力を発揮していたことだろう。
だけどこれは個人戦だ。
わたしには魔力があるから負けることはないと思っていたけど、なかなか勝負がつかない状況にわたしは少しだけ焦りが出てきていた。
いくら魔力で強化していても、戦いが長引けば長引くほど、わたしには不利になっていく。
強化していようと、元は脆弱な体のわたしに、長期戦は大きな負担となっていった。
無理やり動かしている体は悲鳴を上げていて、それでもそんな体を強化して動かすということを繰り返す。
そんな状態が続き、勝負がつかないまま打ち合っている時だった。
鍔迫り合いで相手の騎士と睨み合っている時だった。ふと、相手の騎士がニヤリと歪んだ笑みを浮かべたのだ。
わたしは、眉を寄せて疑問に思いつつも、力を込めて相手の剣を跳ねのけようとしたのだ。
その時だった。ふいに不自然なまでに甘い匂いが周囲に漂ったのだ。
周囲に漂う強い匂を嗅いだ瞬間、一瞬眩暈がしたと思った時だった。
わたしは、急に魔力が操れなくなり、全身が鉛の様に重くなっていたのだ。
魔力が操れないわたしは、立つことも出来ず膝を付きそうになっていたけど、相手に膝を付くことは許さないとばかりに襟首を掴まれて宙刷りにされていた。
そして、相手の騎士に軽々と空中に放り出されたと思った次の瞬間、刃を潰した剣で全身をこれでもかと打たれていた。
相手に素早い動きで打たれながらも倒れることは許されなかったわたしは、体中に痛みが走り次第に意識がもうろうとなっていた。
そして、相手の騎士は止めとばかりにわたしのお腹を思いっきり蹴りつけたのだ。お腹を思いっきり蹴りつけられたわたしは、とうとう地面に倒れ伏していた。
だけど、相手は何かわたしに恨みでもあるのか、身動きが出来ないでいるわたしに馬乗りになって審判が止めるまでわたしの顔を殴り続けてのだった。
視界が赤く染まって、何も考えられなくなっているわたしはただ、体に与えられる痛みを受け入れることしか出来なかった。
意識を失う前に、わたしに駆け寄るマティウス様とベルナー様を見た気がしたけど、それを確かめることも出来ずにわたしの意識は深い場所に沈んでいったのだった。
20
お気に入りに追加
112
あなたにおすすめの小説
公爵令嬢、身代わり妻になる?!
cyaru
恋愛
ガルティネ公爵家の令嬢プリエラ。16歳。
王太子と父の謀りで投獄をされ、市井に放りだされた瞬間に兵士に襲われそうになってしまった。這う這うの体で逃げたものの、今度は身なりの良さに誘拐されそうになり咄嗟に幌馬車に飛び込んだ。その幌馬車は遠い田舎街に向かう馬車だった。
幌馬車では同乗の女性が切羽詰まった顔でプリエラの手を握ってくる。諸事情を抱えた女性は土下座でプリエラに頼み込んだ。
「必ず見つけるからそれまで身代わりになって!大丈夫!不能だから!」
不能かどうかまでは判らないが、少なくとも王太子よりはマシ。
兄や叔母に連絡を取ろうにもお金もなく、知らなかった市井の生活に衝撃を受けたプリエラは身代わり妻を引き受けた。
そして【嫁ぎ先】となる家に案内をされたのだが、そこにいた男、マクシムはとんでもない男だった?!
居なくなったプリエラを探す王太子ジョルジュも継承権を放棄して探しに行くと言い出した?!
♡はプリエラ視点
△はジョルジュ視点
☆はマクシム視点(7話目以降から登場)
★はその他の視点です
♡注意事項~この話を読む前に~♡
※胸糞展開ありますが、クールダウンお願いします。
心拍数や血圧の上昇、高血糖、アドレナリンの過剰分泌に責任はおえません。
※外道な作者の妄想で作られたガチなフィクションの上、ご都合主義です。
※架空のお話です。現実世界の話ではありません。イラっとしたら現実に戻ってください。
※リアルで似たようなものが出てくると思いますが気のせいです。
※爵位や言葉使いなど現実世界、他の作者さんの作品とは異なります(似てるモノ、同じものもあります)
※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。
五歳の時から、側にいた
田尾風香
恋愛
五歳。グレースは初めて国王の長男のグリフィンと出会った。
それからというもの、お互いにいがみ合いながらもグレースはグリフィンの側にいた。十六歳に婚約し、十九歳で結婚した。
グリフィンは、初めてグレースと会ってからずっとその姿を追い続けた。十九歳で結婚し、三十二歳で亡くして初めて、グリフィンはグレースへの想いに気付く。
前編グレース視点、後編グリフィン視点です。全二話。後編は来週木曜31日に投稿します。
勘当されたい悪役は自由に生きる
雨野
恋愛
難病に罹り、15歳で人生を終えた私。
だが気がつくと、生前読んだ漫画の貴族で悪役に転生していた!?タイトルは忘れてしまったし、ラストまで読むことは出来なかったけど…確かこのキャラは、家を勘当され追放されたんじゃなかったっけ?
でも…手足は自由に動くし、ご飯は美味しく食べられる。すうっと深呼吸することだって出来る!!追放ったって殺される訳でもなし、貴族じゃなくなっても問題ないよね?むしろ私、庶民の生活のほうが大歓迎!!
ただ…私が転生したこのキャラ、セレスタン・ラサーニュ。悪役令息、男だったよね?どこからどう見ても女の身体なんですが。上に無いはずのモノがあり、下にあるはずのアレが無いんですが!?どうなってんのよ!!?
1話目はシリアスな感じですが、最終的にはほのぼの目指します。
ずっと病弱だったが故に、目に映る全てのものが輝いて見えるセレスタン。自分が変われば世界も変わる、私は…自由だ!!!
主人公は最初のうちは卑屈だったりしますが、次第に前向きに成長します。それまで見守っていただければと!
愛され主人公のつもりですが、逆ハーレムはありません。逆ハー風味はある。男装主人公なので、側から見るとBLカップルです。
予告なく痛々しい、残酷な描写あり。
サブタイトルに◼️が付いている話はシリアスになりがち。
小説家になろうさんでも掲載しております。そっちのほうが先行公開中。後書きなんかで、ちょいちょいネタ挟んでます。よろしければご覧ください。
こちらでは僅かに加筆&話が増えてたりします。
本編完結。番外編を順次公開していきます。
最後までお付き合いいただき、ありがとうございました!
【改稿版・完結】その瞳に魅入られて
おもち。
恋愛
「——君を愛してる」
そう悲鳴にも似た心からの叫びは、婚約者である私に向けたものではない。私の従姉妹へ向けられたものだった——
幼い頃に交わした婚約だったけれど私は彼を愛してたし、彼に愛されていると思っていた。
あの日、二人の胸を引き裂くような思いを聞くまでは……
『最初から愛されていなかった』
その事実に心が悲鳴を上げ、目の前が真っ白になった。
私は愛し合っている二人を引き裂く『邪魔者』でしかないのだと、その光景を見ながらひたすら現実を受け入れるしかなかった。
『このまま婚姻を結んでも、私は一生愛されない』
『私も一度でいいから、あんな風に愛されたい』
でも貴族令嬢である立場が、父が、それを許してはくれない。
必死で気持ちに蓋をして、淡々と日々を過ごしていたある日。偶然見つけた一冊の本によって、私の運命は大きく変わっていくのだった。
私も、貴方達のように自分の幸せを求めても許されますか……?
※後半、壊れてる人が登場します。苦手な方はご注意下さい。
※このお話は私独自の設定もあります、ご了承ください。ご都合主義な場面も多々あるかと思います。
※『幸せは人それぞれ』と、いうような作品になっています。苦手な方はご注意下さい。
※こちらの作品は小説家になろう様でも掲載しています。
【完結】私は薬売り(男)として生きていくことにしました
雫まりも
恋愛
第三王子ウィリアムの婚約者候補の1人、エリザベートは“クソデブ”という彼の心無い言葉で振られ、自決を決意する。しかし、屋敷を飛び出し入った森で魔獣に襲われたところを助けられて生き延びてしまう。……それから10年後、彼女は訳あって薬売り(男)として旅をしていた。そんな旅のさなか、仲間に言い寄ってくる男とその付き添い、そして怪しげな魔術師の男も現れて……。
ーーーそれぞれが抱える悲劇の原因が元を辿れば同じだということにまだ気づく者はいない。
※完結まで執筆済み。97+2話で完結予定です。
【完結】殿下は私を溺愛してくれますが、あなたの“真実の愛”の相手は私ではありません
Rohdea
恋愛
──私は“彼女”の身代わり。
彼が今も愛しているのは亡くなった元婚約者の王女様だけだから──……
公爵令嬢のユディットは、王太子バーナードの婚約者。
しかし、それは殿下の婚約者だった隣国の王女が亡くなってしまい、
国内の令嬢の中から一番身分が高い……それだけの理由で新たに選ばれただけ。
バーナード殿下はユディットの事をいつも優しく、大切にしてくれる。
だけど、その度にユディットの心は苦しくなっていく。
こんな自分が彼の婚約者でいていいのか。
自分のような理由で互いの気持ちを無視して決められた婚約者は、
バーナードが再び心惹かれる“真実の愛”の相手を見つける邪魔になっているだけなのでは?
そんな心揺れる日々の中、
二人の前に、亡くなった王女とそっくりの女性が現れる。
実は、王女は襲撃の日、こっそり逃がされていて実は生きている……
なんて噂もあって────
取り巻き令嬢Aは覚醒いたしましたので
モンドール
恋愛
揶揄うような微笑みで少女を見つめる貴公子。それに向き合うのは、可憐さの中に少々気の強さを秘めた美少女。
貴公子の周りに集う取り巻きの令嬢たち。
──まるでロマンス小説のワンシーンのようだわ。
……え、もしかして、わたくしはかませ犬にもなれない取り巻き!?
公爵令嬢アリシアは、初恋の人の取り巻きA卒業を決意した。
(『小説家になろう』にも同一名義で投稿しています。)
【完結】傷物令嬢は近衛騎士団長に同情されて……溺愛されすぎです。
早稲 アカ
恋愛
王太子殿下との婚約から洩れてしまった伯爵令嬢のセーリーヌ。
宮廷の大広間で突然現れた賊に襲われた彼女は、殿下をかばって大けがを負ってしまう。
彼女に同情した近衛騎士団長のアドニス侯爵は熱心にお見舞いをしてくれるのだが、その熱意がセーリーヌの折れそうな心まで癒していく。
加えて、セーリーヌを振ったはずの王太子殿下が、親密な二人に絡んできて、ややこしい展開になり……。
果たして、セーリーヌとアドニス侯爵の関係はどうなるのでしょう?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる