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第十話
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ミハエルがシユニナを抱きしめた日から数日。
いつものように、シユニナが訓練場で素振りをしていると、一人の騎士がシユニナの目の前に立ち、何かを地面に叩きつけたのだ。
視線を地面に向けると、そこには黒い手袋が落ちていた。
首を傾げつつも、シユニナは自分の足元に落ちている手袋を拾って、目の前に立つ落とし主に差し出したのだが……。
「はい。落としましたよ?」
「拾ったな?」
「はい?」
「よし! これで互いに決闘に合意したとみなす!! お前! ボクと決闘しろ!」
シユニナは、全く会話の噛み合っていない相手に首を傾げる。
(えぇ~。この人何を言っているの? 私は落とした手袋を拾っただけなのに……)
シユニナは、知らなかったのだ。
叩きつけられた手袋が決闘の申し込みだということを。
そして、その手袋を拾うことが決闘成立の証になることを。
そんな二人のやり取りを少し離れた場所から見ていた他の騎士たちは、面白そうなことが始まったとばかりに囃し立てるのだ。
困惑するシユニナに構わず、目の前の人物は好き勝手に話を進めてしまう。
「ボクは、シューヤ・シュライン。お前に副団長を賭けて決闘を申し込む!! ボクが勝ったらお前は大人しく副団長の前から消えろ」
「えっ?」
「ボクは、誰にでも冷たくて、強くて、格好いい、そんな副団長に憧れて騎士団に入ったんだ!! それなのに……、それなのに!! お前のような男が、ボクの副団長を誘惑するなんて許さないんだからな!!」
(えっ? 私がミーシャを誘惑? この人は何を言っているの?)
思い当たることがなく、シユニナが黙り込んでいると、シューヤはさらにヒートアップしていく。
「ボクは見たんだ!! 副団長に抱き着いているところを! そして、無理やり……、あっあんなうらや……、じゃなくて。とにかく、お前の行動は許されないんだ!!」
(あぁ~~。もしかして、この前扉の外にいた人がこのシューヤって人? でも……、すごく誤解している……。別に私が無理やり迫った訳じゃ……。って! もしかして、ミーシャのこと好きなことバレバレな感じなの?! それはまずいわ……)
ひとり、ぐるぐる考え込んでしまったシユニナに苛立ちが限界に達したシューヤは、指をビシッと指して宣言するのだ。
「とにかく、ボクと決闘するんだ!!」
「……。分かった。でも、私が勝ったら、今の発言を全て訂正してもらう。私と副団長様は、君が邪推しているような、そんな関係じゃない。ただの上司と部下だ」
「ふん。勝つのはボクだ!!」
「いえ、私です!」
こうして、シユニナは吹っ掛けられた決闘を受けることとなるのだ。
決闘は、相手に膝を付かせるか、参ったと言わせた方の勝ちというルールの元開始した。
シューヤは、シユニナの想像よりも剣筋がよく、勝負は拮抗していた。
鋭いシューヤの突きをギリギリでかわしたシユニナだったが、木刀を避けた瞬間、服の下に隠すように下げていたネックレスが服の外に飛び出してしまう。
あっと、思った時にはシューヤの木刀がネックレスの鎖を千切ってしまっていた。
シユニナは、外れることの無いはずのネックレスが千切れて吹き飛ぶ姿に目を丸くさせていた。
そんな、隙だらけのシユニナを見逃さないシューヤは、止めの突きを繰り出す。
その突きは、シユニナの肩に当たり、シャツのボタンを数個飛ばしたが致命傷には程遠いものだった。
突きが当たる一瞬、シユニナが下から木刀で突きを打ち上げてほんの少しではあったが、軌道をずらしたためだった。
突きを下から打ち上げられるような態勢になっていたシューヤのがら空きの横っ腹に遠慮のない一撃がヒットしていた。
痛みによろめいたシューヤは、そのまま数歩後ろに下がった後、ガクリと膝を付いていた。
何とか勝利を収めたシユニナだったが、周囲の声を潜めるような騒めきに首を傾げる。
「おい……。あれって……」
「えっ?」
「ヤバくないか……」
「なにがどうなってるんだ……」
「なんで……?」
周囲の騎士たちの信じられないものでも見たかのような視線にさらされたシユニナは、状況が分からず、無意識に助けを求めるように周囲に視線を彷徨わせる。
すると、人垣の奥に、顔を青くさせたミハエルの姿が見えたのだ。
周囲の突き刺さるような視線とヒソヒソ声に不安で堪らないシユニナは、こちらに駆けてくるミハエルの姿に胸が震えた。
いつものように、シユニナが訓練場で素振りをしていると、一人の騎士がシユニナの目の前に立ち、何かを地面に叩きつけたのだ。
視線を地面に向けると、そこには黒い手袋が落ちていた。
首を傾げつつも、シユニナは自分の足元に落ちている手袋を拾って、目の前に立つ落とし主に差し出したのだが……。
「はい。落としましたよ?」
「拾ったな?」
「はい?」
「よし! これで互いに決闘に合意したとみなす!! お前! ボクと決闘しろ!」
シユニナは、全く会話の噛み合っていない相手に首を傾げる。
(えぇ~。この人何を言っているの? 私は落とした手袋を拾っただけなのに……)
シユニナは、知らなかったのだ。
叩きつけられた手袋が決闘の申し込みだということを。
そして、その手袋を拾うことが決闘成立の証になることを。
そんな二人のやり取りを少し離れた場所から見ていた他の騎士たちは、面白そうなことが始まったとばかりに囃し立てるのだ。
困惑するシユニナに構わず、目の前の人物は好き勝手に話を進めてしまう。
「ボクは、シューヤ・シュライン。お前に副団長を賭けて決闘を申し込む!! ボクが勝ったらお前は大人しく副団長の前から消えろ」
「えっ?」
「ボクは、誰にでも冷たくて、強くて、格好いい、そんな副団長に憧れて騎士団に入ったんだ!! それなのに……、それなのに!! お前のような男が、ボクの副団長を誘惑するなんて許さないんだからな!!」
(えっ? 私がミーシャを誘惑? この人は何を言っているの?)
思い当たることがなく、シユニナが黙り込んでいると、シューヤはさらにヒートアップしていく。
「ボクは見たんだ!! 副団長に抱き着いているところを! そして、無理やり……、あっあんなうらや……、じゃなくて。とにかく、お前の行動は許されないんだ!!」
(あぁ~~。もしかして、この前扉の外にいた人がこのシューヤって人? でも……、すごく誤解している……。別に私が無理やり迫った訳じゃ……。って! もしかして、ミーシャのこと好きなことバレバレな感じなの?! それはまずいわ……)
ひとり、ぐるぐる考え込んでしまったシユニナに苛立ちが限界に達したシューヤは、指をビシッと指して宣言するのだ。
「とにかく、ボクと決闘するんだ!!」
「……。分かった。でも、私が勝ったら、今の発言を全て訂正してもらう。私と副団長様は、君が邪推しているような、そんな関係じゃない。ただの上司と部下だ」
「ふん。勝つのはボクだ!!」
「いえ、私です!」
こうして、シユニナは吹っ掛けられた決闘を受けることとなるのだ。
決闘は、相手に膝を付かせるか、参ったと言わせた方の勝ちというルールの元開始した。
シューヤは、シユニナの想像よりも剣筋がよく、勝負は拮抗していた。
鋭いシューヤの突きをギリギリでかわしたシユニナだったが、木刀を避けた瞬間、服の下に隠すように下げていたネックレスが服の外に飛び出してしまう。
あっと、思った時にはシューヤの木刀がネックレスの鎖を千切ってしまっていた。
シユニナは、外れることの無いはずのネックレスが千切れて吹き飛ぶ姿に目を丸くさせていた。
そんな、隙だらけのシユニナを見逃さないシューヤは、止めの突きを繰り出す。
その突きは、シユニナの肩に当たり、シャツのボタンを数個飛ばしたが致命傷には程遠いものだった。
突きが当たる一瞬、シユニナが下から木刀で突きを打ち上げてほんの少しではあったが、軌道をずらしたためだった。
突きを下から打ち上げられるような態勢になっていたシューヤのがら空きの横っ腹に遠慮のない一撃がヒットしていた。
痛みによろめいたシューヤは、そのまま数歩後ろに下がった後、ガクリと膝を付いていた。
何とか勝利を収めたシユニナだったが、周囲の声を潜めるような騒めきに首を傾げる。
「おい……。あれって……」
「えっ?」
「ヤバくないか……」
「なにがどうなってるんだ……」
「なんで……?」
周囲の騎士たちの信じられないものでも見たかのような視線にさらされたシユニナは、状況が分からず、無意識に助けを求めるように周囲に視線を彷徨わせる。
すると、人垣の奥に、顔を青くさせたミハエルの姿が見えたのだ。
周囲の突き刺さるような視線とヒソヒソ声に不安で堪らないシユニナは、こちらに駆けてくるミハエルの姿に胸が震えた。
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