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第七話
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「おかしい……」
麗らかな日差しが眩しいある日の昼下がり。シユニナは、首を傾げていた。
そして、目の前には忙しいはずのミハエル。
王国騎士団で異例の速さで副団長の地位についていたミハエルは、その腕を買われて第二王女の護衛騎士の統括業務も兼任していた。
そんな忙しいはずのミハエルは、一日置きという高頻度でアガート伯爵家に顔を出していたのだ。
留学から戻ったばかりのシユニナは、男になった事で公の場に出ることを控えていた。
そのため、伯爵家にて剣術の鍛錬を繰り返すだけの日々を送っていたのだ。
庭園の一角で剣の鍛錬をするシユニナに付き合う様に、ミハエルも剣を振るっていた。
時には、手合わせもすることもあった。
シユニナとしては、現役の騎士であるミハエルに稽古を付けてもらえることはとてもありがたかった。
しかし、こうも頻度が高いと心配になってくるものだ。
「えっと、ミハエル様?」
「ん? どうした?」
「えっと、ミハエル様は第二王女の護衛騎士をされているんですよね?」
「ああ。だが、俺が実際に護衛するのは公の場でだけだ。通常の護衛は、他の騎士が務めている」
だとしてもだ。騎士団の副団長もしている身で、ここまで時間を作るのは並大抵なことではない。
何故ここまで自分に構うのか?
シユニナには理解できなかった。
シユニナが帰国してから数日、日々鍛錬に明け暮れていたシユニナだったが、ある情報を聞いてこれからの身の振り方を決めていた。
その日は、年に一度の王国騎士団の入団試験が行われる日だった。
騎士団の入団条件はとても緩く、犯罪歴がなければ性別も年齢も問わないと言うものだった。
留学先で剣術を学び、帰国後はミハエルの稽古を受けていたシユニナは、この先男として身を立てる手段として騎士の道を進むことにしたのだ。
ミハエルとの仮初の婚約関係もいつ解消されるか分からない。
今後は、一人の男として伯爵家に貢献するために選んだ道だった。
二人の師匠がよかったこともあり、シユニナは優秀な成績で騎士団入団を果たすのだ。
シユニナから騎士団への入団を知らされた両親は、シユニナの好きなようにしていいと言ってくれたが、重度のシスコンであるシュミットは、大騒ぎをする。
「どうして? 騎士なんて危ないから辞めなさい! 大丈夫。お兄ちゃんがシユンのこと一生面倒みるから」
「いやいや。駄目でしょう? それに、私は私がしたくて騎士団に入ることを決めたんだから。お兄様には応援して欲しいな」
「ぐっ……。可愛い妹のお願いでも、こればかりは……」
「お兄様、私のこと応援して欲しいな? お願い!」
「くぅ~~~~」
そんなやり取りを繰り返していた時だった。
その日も、いつものように伯爵家にやってきたミハエルが二人の不毛なやり取りに割って入ったのだ。
「俺もシユンが怪我をしてしまったりするのは嫌だな……。でも、下手に反対して無理をされるよりは……。シュミット。少し耳を貸せ」
「ん?」
二人は、肩を組むようにして内緒話を始めた。
「シュミット。このまま反対し続けてもシユンの意志は固そうだ」
「だがな……。俺はシユンが心配なんだ」
「俺だってシユンが心配だ。だがな、反対ばかりでは嫌われるだけだ」
「っ!!」
「だからここは、シユンのしたいようにさせるのが一番だ」
「嫌われるのは嫌だが、それはもっと無理だ。心配すぎて俺がヤバい……」
「大丈夫だ。シユンは、俺の監視下に置いて絶対に怪我を負わせないようにするさ」
「だがなぁ……」
「俺に任せろ」
「…………。分かった。信じるぞ。親友」
「ああ。任せろ。親友」
麗らかな日差しが眩しいある日の昼下がり。シユニナは、首を傾げていた。
そして、目の前には忙しいはずのミハエル。
王国騎士団で異例の速さで副団長の地位についていたミハエルは、その腕を買われて第二王女の護衛騎士の統括業務も兼任していた。
そんな忙しいはずのミハエルは、一日置きという高頻度でアガート伯爵家に顔を出していたのだ。
留学から戻ったばかりのシユニナは、男になった事で公の場に出ることを控えていた。
そのため、伯爵家にて剣術の鍛錬を繰り返すだけの日々を送っていたのだ。
庭園の一角で剣の鍛錬をするシユニナに付き合う様に、ミハエルも剣を振るっていた。
時には、手合わせもすることもあった。
シユニナとしては、現役の騎士であるミハエルに稽古を付けてもらえることはとてもありがたかった。
しかし、こうも頻度が高いと心配になってくるものだ。
「えっと、ミハエル様?」
「ん? どうした?」
「えっと、ミハエル様は第二王女の護衛騎士をされているんですよね?」
「ああ。だが、俺が実際に護衛するのは公の場でだけだ。通常の護衛は、他の騎士が務めている」
だとしてもだ。騎士団の副団長もしている身で、ここまで時間を作るのは並大抵なことではない。
何故ここまで自分に構うのか?
シユニナには理解できなかった。
シユニナが帰国してから数日、日々鍛錬に明け暮れていたシユニナだったが、ある情報を聞いてこれからの身の振り方を決めていた。
その日は、年に一度の王国騎士団の入団試験が行われる日だった。
騎士団の入団条件はとても緩く、犯罪歴がなければ性別も年齢も問わないと言うものだった。
留学先で剣術を学び、帰国後はミハエルの稽古を受けていたシユニナは、この先男として身を立てる手段として騎士の道を進むことにしたのだ。
ミハエルとの仮初の婚約関係もいつ解消されるか分からない。
今後は、一人の男として伯爵家に貢献するために選んだ道だった。
二人の師匠がよかったこともあり、シユニナは優秀な成績で騎士団入団を果たすのだ。
シユニナから騎士団への入団を知らされた両親は、シユニナの好きなようにしていいと言ってくれたが、重度のシスコンであるシュミットは、大騒ぎをする。
「どうして? 騎士なんて危ないから辞めなさい! 大丈夫。お兄ちゃんがシユンのこと一生面倒みるから」
「いやいや。駄目でしょう? それに、私は私がしたくて騎士団に入ることを決めたんだから。お兄様には応援して欲しいな」
「ぐっ……。可愛い妹のお願いでも、こればかりは……」
「お兄様、私のこと応援して欲しいな? お願い!」
「くぅ~~~~」
そんなやり取りを繰り返していた時だった。
その日も、いつものように伯爵家にやってきたミハエルが二人の不毛なやり取りに割って入ったのだ。
「俺もシユンが怪我をしてしまったりするのは嫌だな……。でも、下手に反対して無理をされるよりは……。シュミット。少し耳を貸せ」
「ん?」
二人は、肩を組むようにして内緒話を始めた。
「シュミット。このまま反対し続けてもシユンの意志は固そうだ」
「だがな……。俺はシユンが心配なんだ」
「俺だってシユンが心配だ。だがな、反対ばかりでは嫌われるだけだ」
「っ!!」
「だからここは、シユンのしたいようにさせるのが一番だ」
「嫌われるのは嫌だが、それはもっと無理だ。心配すぎて俺がヤバい……」
「大丈夫だ。シユンは、俺の監視下に置いて絶対に怪我を負わせないようにするさ」
「だがなぁ……」
「俺に任せろ」
「…………。分かった。信じるぞ。親友」
「ああ。任せろ。親友」
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