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第一部
第六話 リアル変身おままごと
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ノルンが研究室で古い魔術式の改変作業をしている時だった。
いつものようにアーノルドがティーセットを持って訪ねてきたのだ。
しかし、その日のアーノルドは、騎士団長であるダン・ダインを伴っていたのだ。
ダンは、ノルンが顔を合わせる数少ない人物の一人だった。
騎士団長という忙しい職務の合間を縫って、ノルンの世話をしに来てくれる人物でもあったのだ。
二人そろって訪ねてきたことに首を傾げつつ、迎え入れたノルンは、アーノルドの話に爆笑を禁じえなかったのだ。
「最近、アーレスが私に構ってくれない!! ノルン先生に言われて、二人で話をする機会を増やしたが、逆にアーレスが私を構ってくれなくなった!! 勉強することも剣術を学ぶこともとてもいいことだ。しかし! しかしだ! あの子は根を詰めすぎなんだ!」
そう言って、ノルンに泣きつくアーノルドの頭をよしよしと撫でつつ、ノルンは首を傾げるのだ。
「それで、何故私のところに来るのだ? 息子のところに行って、寂しいと泣きつけばいいじゃないか?」
ノルンがそう言うと、くわっと目を見開いたアーノルドは、血走った眼で言うのだ。
「そんな、格好悪いことできるか!!」
「それなら、今のお前はどうなんだよ?」
ノルンがそう突っ込みを入れると、瞳を潤ませたアーノルドが言うのだ。
「先生はいいんです!! 私のことをおしめ時代から知っているあなたの前で何を恥ずかしがることがあるんですか!!」
開き直るようにそう言うアーノルドに、ノルンはくすりと微笑むのだ。
確かに、生まれる前から知っているアーノルドの無様な姿など見ても、ノルンには可愛いものとしか思えなかったのだ。
「わかったよ。アーノルドは、相変わらずの泣き虫なのだな。よし、仕方ないから今日は私が遊んでやる」
そう言ったノルンは、アーノルドの後ろに控えていたダンにも視線を向けるのだ。
「ふふふ。ダンも混ぜてやるからな。ふむ。何をして遊ぼうか……」
そう言って、顎に人差し指を当てながら考えていたノルンは、にんまりと微笑むのだ。
「ふっふー。久しぶりにあれをして遊ぼう」
そう言われたアーノルドとダンは、思い当たることがあり表情を引きつらせるのだ。
「えっ? 先生、まさかあれを?」
「うん。配役は……、あみだくじで決めるぞ」
そう言ったノルンは、懐から取り出した紙に、さらさらと何かを書いていく。
そして、書きあがったものをアーノルドとダンに見せるのだ。
「ほら、私たちはもう大人だから、これくらいの配役の中から運で役を勝ち取る。楽しいそうだろ?」
そう言って、ノルンが二人に見せた紙にはこう書かれてあったのだ。
父親・・・浮気性
母親・・・不倫中
子供・・・生まれたての赤ちゃん
騎士・・・母親の不倫相手
メイド・・・父親の浮気相手
その走り書きを見たアーノルドは、頭痛を訴えたのだ。
「なんですか、このドロドロな設定は……」
「だって、リアル変身おままごとするなら、これくらいどろどろな―――」
「あなたは!! いったいどんな艶本を読んだんですか!! ダン!! 探せ!! きっと、この部屋のどこかに先生に悪い影響を与えた艶本があるに違いない!!」
「かしこまりました!!」
そう言って、二人はノルン部屋を漁りだしたのだ。
これには、ノルンも大慌てで隠ぺい工作をするも一足遅かったのだ。
ダンが机の二重底になっている引き出しから、「不倫妻の淫らなティータイム」というとんでもないタイトルの本を見つけてしまったのだ。
「先生!! 何ですかこの乱れまくったタイトルの本は!!」
「ノルン様! あなたと言う人は!!」
アーノルドとダンの二人から責めれれるノルンは、口を尖らせて言い訳をするのだ。
「だって、その著者の作品が大好きで……。でもなぜか新作が艶本で……。でもでも、作風自体はいつもの感じで、えっちな内容だけどすごく楽しかったんだぞ!!」
もじもじとそう言うノルンに溜息を吐いた二人は、やれやれと肩をすくめるのだ。
「先生……。いくら好きな著者のまねごとをしたいと思っても無理と言うものが……」
「いいや、私の変身魔術は完璧なのだ!! ふん、思い知るがいい」
そう言ったノルンは、アーノルドとダンに変身魔術をかけてしまうのだ。
慌てる二人に対して、ノルンはにんまりとした笑顔で言うのだ。
「うむ。二人の小さなころを思い出すなぁ。私なりに手心を加えた」
そう言われた二人はお互いの姿を見て悲鳴を上げたのだ。
そこにあったのに、外見的には十代のアーノルドとダンの姿だった。
しかし、二人の性別は違っていたのだ。
お互いに小さいころの面影のある少女に変えられてしまっていたことに、悲鳴をあげるのだった。
ノルンの目的は、好きな著者の作品体験から、お子様になった二人の友人をお姫様可愛がりすることへと変わっていたのだった。
結局、二人は一時間後に満足したノルンによって元の姿に戻してもらえたのだった。
そして、アーノルドは、ノルンの元に来た目的を忘れてしまっていたのだ。
アーノルドがノルンの元に来た本当の目的は、息子のアーレスが最近ノルンの研究室の近くうろつくことにあったのだ。
アーレスに何度も、立ち入りを控えるように言っても全くいうことを聞いてくれないのだ。
だから、ノルンに知らせに来たのだ。もしかすると、アーレスとどこかで鉢合わせをするかもしれないと。もし、立ち入りが制限されているこの区画で見知らぬ男にあったら、それは息子のアーレスなのだとノルンに言おうとしていたのだが、そんなことはすっかり忘れてしまったアーノルドだった。
いつものようにアーノルドがティーセットを持って訪ねてきたのだ。
しかし、その日のアーノルドは、騎士団長であるダン・ダインを伴っていたのだ。
ダンは、ノルンが顔を合わせる数少ない人物の一人だった。
騎士団長という忙しい職務の合間を縫って、ノルンの世話をしに来てくれる人物でもあったのだ。
二人そろって訪ねてきたことに首を傾げつつ、迎え入れたノルンは、アーノルドの話に爆笑を禁じえなかったのだ。
「最近、アーレスが私に構ってくれない!! ノルン先生に言われて、二人で話をする機会を増やしたが、逆にアーレスが私を構ってくれなくなった!! 勉強することも剣術を学ぶこともとてもいいことだ。しかし! しかしだ! あの子は根を詰めすぎなんだ!」
そう言って、ノルンに泣きつくアーノルドの頭をよしよしと撫でつつ、ノルンは首を傾げるのだ。
「それで、何故私のところに来るのだ? 息子のところに行って、寂しいと泣きつけばいいじゃないか?」
ノルンがそう言うと、くわっと目を見開いたアーノルドは、血走った眼で言うのだ。
「そんな、格好悪いことできるか!!」
「それなら、今のお前はどうなんだよ?」
ノルンがそう突っ込みを入れると、瞳を潤ませたアーノルドが言うのだ。
「先生はいいんです!! 私のことをおしめ時代から知っているあなたの前で何を恥ずかしがることがあるんですか!!」
開き直るようにそう言うアーノルドに、ノルンはくすりと微笑むのだ。
確かに、生まれる前から知っているアーノルドの無様な姿など見ても、ノルンには可愛いものとしか思えなかったのだ。
「わかったよ。アーノルドは、相変わらずの泣き虫なのだな。よし、仕方ないから今日は私が遊んでやる」
そう言ったノルンは、アーノルドの後ろに控えていたダンにも視線を向けるのだ。
「ふふふ。ダンも混ぜてやるからな。ふむ。何をして遊ぼうか……」
そう言って、顎に人差し指を当てながら考えていたノルンは、にんまりと微笑むのだ。
「ふっふー。久しぶりにあれをして遊ぼう」
そう言われたアーノルドとダンは、思い当たることがあり表情を引きつらせるのだ。
「えっ? 先生、まさかあれを?」
「うん。配役は……、あみだくじで決めるぞ」
そう言ったノルンは、懐から取り出した紙に、さらさらと何かを書いていく。
そして、書きあがったものをアーノルドとダンに見せるのだ。
「ほら、私たちはもう大人だから、これくらいの配役の中から運で役を勝ち取る。楽しいそうだろ?」
そう言って、ノルンが二人に見せた紙にはこう書かれてあったのだ。
父親・・・浮気性
母親・・・不倫中
子供・・・生まれたての赤ちゃん
騎士・・・母親の不倫相手
メイド・・・父親の浮気相手
その走り書きを見たアーノルドは、頭痛を訴えたのだ。
「なんですか、このドロドロな設定は……」
「だって、リアル変身おままごとするなら、これくらいどろどろな―――」
「あなたは!! いったいどんな艶本を読んだんですか!! ダン!! 探せ!! きっと、この部屋のどこかに先生に悪い影響を与えた艶本があるに違いない!!」
「かしこまりました!!」
そう言って、二人はノルン部屋を漁りだしたのだ。
これには、ノルンも大慌てで隠ぺい工作をするも一足遅かったのだ。
ダンが机の二重底になっている引き出しから、「不倫妻の淫らなティータイム」というとんでもないタイトルの本を見つけてしまったのだ。
「先生!! 何ですかこの乱れまくったタイトルの本は!!」
「ノルン様! あなたと言う人は!!」
アーノルドとダンの二人から責めれれるノルンは、口を尖らせて言い訳をするのだ。
「だって、その著者の作品が大好きで……。でもなぜか新作が艶本で……。でもでも、作風自体はいつもの感じで、えっちな内容だけどすごく楽しかったんだぞ!!」
もじもじとそう言うノルンに溜息を吐いた二人は、やれやれと肩をすくめるのだ。
「先生……。いくら好きな著者のまねごとをしたいと思っても無理と言うものが……」
「いいや、私の変身魔術は完璧なのだ!! ふん、思い知るがいい」
そう言ったノルンは、アーノルドとダンに変身魔術をかけてしまうのだ。
慌てる二人に対して、ノルンはにんまりとした笑顔で言うのだ。
「うむ。二人の小さなころを思い出すなぁ。私なりに手心を加えた」
そう言われた二人はお互いの姿を見て悲鳴を上げたのだ。
そこにあったのに、外見的には十代のアーノルドとダンの姿だった。
しかし、二人の性別は違っていたのだ。
お互いに小さいころの面影のある少女に変えられてしまっていたことに、悲鳴をあげるのだった。
ノルンの目的は、好きな著者の作品体験から、お子様になった二人の友人をお姫様可愛がりすることへと変わっていたのだった。
結局、二人は一時間後に満足したノルンによって元の姿に戻してもらえたのだった。
そして、アーノルドは、ノルンの元に来た目的を忘れてしまっていたのだ。
アーノルドがノルンの元に来た本当の目的は、息子のアーレスが最近ノルンの研究室の近くうろつくことにあったのだ。
アーレスに何度も、立ち入りを控えるように言っても全くいうことを聞いてくれないのだ。
だから、ノルンに知らせに来たのだ。もしかすると、アーレスとどこかで鉢合わせをするかもしれないと。もし、立ち入りが制限されているこの区画で見知らぬ男にあったら、それは息子のアーレスなのだとノルンに言おうとしていたのだが、そんなことはすっかり忘れてしまったアーノルドだった。
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