50 / 91
第五十話 調味料との出会い
しおりを挟む
春虎の作ったお弁当を食べ終わった秋護とユリウスは、再び訓練へと戻っていった。
それを見送ってから、王立図書館に戻って写しの作業を進める。切りの良いところまで進めて、今日の作業は終えることにした。
当面の食材を購入してからレオールの家に帰ることをユリウスに伝えると、「俺たちはもう少し訓練をしてから帰る」ということだったので、ウィリアムとレオールとの三人で買い出しに向かうことになった。
レオールの案内で、食材が置いてある店が並ぶ通りに着いた春虎は、物珍しそうに並んでいる食材を眺めた。
店先には、そのままでも美味しそうな果物や野菜が数多く並んでいた。
(もしかして、ラジタリウスの人って、そのままで美味しい食材になれてしまって、調理することがおざなりになっているんじゃ……。まぁ、そんなことよりも美味しそうな果物が沢山あるから、フルーツタルトでもつくろうかな?)
そんなことを考えつつ、店を回っていると一軒の店が目に入った。他の店に比べるとお客が圧倒的に少ない。というか、店員しかいない店だった。
なんとなく興味が出てその店を覗くと、そこの店先には沢山の調味料が並んでいた。
春虎は、店にある調味料をじっくりと見渡してから店員に話しかけた。
「すみません、あの……、味見ってできますか?」
店員は、まさか味見を求められるとは思わず、慌てながらも出来ると言って、どれがいいか確認してきた。
春虎は、不透明な瓶に入った調味料と、薄い琥珀色の液体の入った瓶を指さした。
「これと、これをお願いします」
「わかりました。でも、これはどっちも美味しくないですよ?」
そう言って、お皿に少し液体を注いで差し出してくれた。春虎は、匂いを嗅いだ後に少し指につけて舐めてみる。
その味はとても懐かしい味だった。
(間違いない。お醤油とみりんだ!!でも、なんでここに?)
久しぶりの日本の味だったので、驚きに目を見張りながらも店員に他にも変わったものはないかと尋ねた。
「そうですね~、これとか見た目がちょっとあれでお店には出していなんですが……」
そう言って、木でできた箱に入ったものを差し出した。何とそこにあったのは、味噌だった。日本の食材にここで出会えるとは思っていなかったため、少し興奮気味に店員に詰め寄ってしまう。店員は少し仰け反りながらも、美少年に下からぐいっと顔を近づけられて顔を赤らめた。
「あの、これってどこから仕入れたんですか!!作っている人はどこにいるんですか!!」
「えっと、それは祖父の故郷から輸入しているんです。でも、どうやって料理に使うの知っている祖父はすでにいなくて……。でも、祖父が輸入を数年契約でしてしまっているので、在庫を抱えて困っていたんですよ。あははは……」
「全部、全部ください!!」
「そう、全然売れなくて……。えっ?全部?」
「はい!!他にも輸入している調味料はありますか?」
「ありますけど……。祖父の契約したものは酸っぱかったり、辛かったり、しょっぱかったりで全然美味しくないですよ?」
「酸っぱい?まさか……。見せてください」
春虎の熱意に押された店員は、他にも見せてくれた。その結果、酢と調理酒があった。更に、お米も取り扱っていた。
なんでも、輸入先の人が調味料をいつも仕入れてくれるおまけとして一緒に送ってくれたそうだが、使い方がわからず、倉庫に眠っていたと店員は悲しげに言った。
春虎は、瞳を輝かせて買えるだけ買って、ご満悦だった。
店員もこんなに売れるとは思っていなかったようで、呆気にとられながらも、大量買する春虎にお米は「使い方もわからないので差し上げます」と言って、タダで譲ってくれたのだ。
春虎は、店員の手を握って頬を赤く染めながら「明日また来ます!!」と言って店員を困惑させた。
そんな春虎をレオールは少し呆れた顔で見ていたが、この大量の荷物をどうやって運ぶのかと呆れた声で尋ねた。
すると、何でもないように、そこにあった大量のお米と調味料を亜空魔術で収納していった。
それを呆気にとられて見ているレオールに、何故かウィリアムがドヤ顔で言った。
「ハルは、料理は美味いし、強いし、可愛いし、格好いいし、最高なんだ!!」
「何故、ウィリアムが偉そうに言うんだ」
「それは、俺が……」
「俺が?」
「俺が、そう、俺が船長だからだ!!」
意味のわからないウィリアムを放って置くことにしたレオールは、今日買った食材について興味津々に質問をした。
「それで、こんなに買ってどうするんだ?」
「これらは、保存が効くので今後のことを考えてたくさん買いました。ふふふ。これでいろいろな料理ができる!!」
「そうか、私の知らない料理が食べられると思うと楽しみだ」
「はい!そうだ、食材の買い足しをしないと!」
そう言って、食材を売っている店に戻っていく春虎をレオールはいつもよりも柔和な表情で眺めていたが、それに気がついたウィリアムは嫌な予感がして、そのことを突っ込むことができなかった。
それを見送ってから、王立図書館に戻って写しの作業を進める。切りの良いところまで進めて、今日の作業は終えることにした。
当面の食材を購入してからレオールの家に帰ることをユリウスに伝えると、「俺たちはもう少し訓練をしてから帰る」ということだったので、ウィリアムとレオールとの三人で買い出しに向かうことになった。
レオールの案内で、食材が置いてある店が並ぶ通りに着いた春虎は、物珍しそうに並んでいる食材を眺めた。
店先には、そのままでも美味しそうな果物や野菜が数多く並んでいた。
(もしかして、ラジタリウスの人って、そのままで美味しい食材になれてしまって、調理することがおざなりになっているんじゃ……。まぁ、そんなことよりも美味しそうな果物が沢山あるから、フルーツタルトでもつくろうかな?)
そんなことを考えつつ、店を回っていると一軒の店が目に入った。他の店に比べるとお客が圧倒的に少ない。というか、店員しかいない店だった。
なんとなく興味が出てその店を覗くと、そこの店先には沢山の調味料が並んでいた。
春虎は、店にある調味料をじっくりと見渡してから店員に話しかけた。
「すみません、あの……、味見ってできますか?」
店員は、まさか味見を求められるとは思わず、慌てながらも出来ると言って、どれがいいか確認してきた。
春虎は、不透明な瓶に入った調味料と、薄い琥珀色の液体の入った瓶を指さした。
「これと、これをお願いします」
「わかりました。でも、これはどっちも美味しくないですよ?」
そう言って、お皿に少し液体を注いで差し出してくれた。春虎は、匂いを嗅いだ後に少し指につけて舐めてみる。
その味はとても懐かしい味だった。
(間違いない。お醤油とみりんだ!!でも、なんでここに?)
久しぶりの日本の味だったので、驚きに目を見張りながらも店員に他にも変わったものはないかと尋ねた。
「そうですね~、これとか見た目がちょっとあれでお店には出していなんですが……」
そう言って、木でできた箱に入ったものを差し出した。何とそこにあったのは、味噌だった。日本の食材にここで出会えるとは思っていなかったため、少し興奮気味に店員に詰め寄ってしまう。店員は少し仰け反りながらも、美少年に下からぐいっと顔を近づけられて顔を赤らめた。
「あの、これってどこから仕入れたんですか!!作っている人はどこにいるんですか!!」
「えっと、それは祖父の故郷から輸入しているんです。でも、どうやって料理に使うの知っている祖父はすでにいなくて……。でも、祖父が輸入を数年契約でしてしまっているので、在庫を抱えて困っていたんですよ。あははは……」
「全部、全部ください!!」
「そう、全然売れなくて……。えっ?全部?」
「はい!!他にも輸入している調味料はありますか?」
「ありますけど……。祖父の契約したものは酸っぱかったり、辛かったり、しょっぱかったりで全然美味しくないですよ?」
「酸っぱい?まさか……。見せてください」
春虎の熱意に押された店員は、他にも見せてくれた。その結果、酢と調理酒があった。更に、お米も取り扱っていた。
なんでも、輸入先の人が調味料をいつも仕入れてくれるおまけとして一緒に送ってくれたそうだが、使い方がわからず、倉庫に眠っていたと店員は悲しげに言った。
春虎は、瞳を輝かせて買えるだけ買って、ご満悦だった。
店員もこんなに売れるとは思っていなかったようで、呆気にとられながらも、大量買する春虎にお米は「使い方もわからないので差し上げます」と言って、タダで譲ってくれたのだ。
春虎は、店員の手を握って頬を赤く染めながら「明日また来ます!!」と言って店員を困惑させた。
そんな春虎をレオールは少し呆れた顔で見ていたが、この大量の荷物をどうやって運ぶのかと呆れた声で尋ねた。
すると、何でもないように、そこにあった大量のお米と調味料を亜空魔術で収納していった。
それを呆気にとられて見ているレオールに、何故かウィリアムがドヤ顔で言った。
「ハルは、料理は美味いし、強いし、可愛いし、格好いいし、最高なんだ!!」
「何故、ウィリアムが偉そうに言うんだ」
「それは、俺が……」
「俺が?」
「俺が、そう、俺が船長だからだ!!」
意味のわからないウィリアムを放って置くことにしたレオールは、今日買った食材について興味津々に質問をした。
「それで、こんなに買ってどうするんだ?」
「これらは、保存が効くので今後のことを考えてたくさん買いました。ふふふ。これでいろいろな料理ができる!!」
「そうか、私の知らない料理が食べられると思うと楽しみだ」
「はい!そうだ、食材の買い足しをしないと!」
そう言って、食材を売っている店に戻っていく春虎をレオールはいつもよりも柔和な表情で眺めていたが、それに気がついたウィリアムは嫌な予感がして、そのことを突っ込むことができなかった。
0
お気に入りに追加
451
あなたにおすすめの小説
私の頑張りは、とんだ無駄骨だったようです
風見ゆうみ
恋愛
私、リディア・トゥーラル男爵令嬢にはジッシー・アンダーソンという婚約者がいた。ある日、学園の中庭で彼が女子生徒に告白され、その生徒と抱き合っているシーンを大勢の生徒と一緒に見てしまった上に、その場で婚約破棄を要求されてしまう。
婚約破棄を要求されてすぐに、ミラン・ミーグス公爵令息から求婚され、ひそかに彼に思いを寄せていた私は、彼の申し出を受けるか迷ったけれど、彼の両親から身を引く様にお願いされ、ミランを諦める事に決める。
そんな私は、学園を辞めて遠くの街に引っ越し、平民として新しい生活を始めてみたんだけど、ん? 誰かからストーカーされてる? それだけじゃなく、ミランが私を見つけ出してしまい…!?
え、これじゃあ、私、何のために引っ越したの!?
※恋愛メインで書くつもりですが、ざまぁ必要のご意見があれば、微々たるものになりますが、ざまぁを入れるつもりです。
※ざまぁ希望をいただきましたので、タグを「ざまぁ」に変更いたしました。
※史実とは関係ない異世界の世界観であり、設定も緩くご都合主義です。魔法も存在します。作者の都合の良い世界観や設定であるとご了承いただいた上でお読み下さいませ。
傲慢令嬢は、猫かぶりをやめてみた。お好きなように呼んでくださいませ。愛しいひとが私のことをわかってくださるなら、それで十分ですもの。
石河 翠
恋愛
高飛車で傲慢な令嬢として有名だった侯爵令嬢のダイアナは、婚約者から婚約を破棄される直前、階段から落ちて頭を打ち、記憶喪失になった上、体が不自由になってしまう。
そのまま修道院に身を寄せることになったダイアナだが、彼女はその暮らしを嬉々として受け入れる。妾の子であり、貴族暮らしに馴染めなかったダイアナには、修道院での暮らしこそ理想だったのだ。
新しい婚約者とうまくいかない元婚約者がダイアナに接触してくるが、彼女は突き放す。身勝手な言い分の元婚約者に対し、彼女は怒りを露にし……。
初恋のひとのために貴族教育を頑張っていたヒロインと、健気なヒロインを見守ってきたヒーローの恋物語。
ハッピーエンドです。
この作品は、別サイトにも投稿しております。
表紙絵は写真ACよりチョコラテさまの作品をお借りしております。
私のドレスを奪った異母妹に、もう大事なものは奪わせない
文野多咲
恋愛
優月(ゆづき)が自宅屋敷に帰ると、異母妹が優月のウェディングドレスを試着していた。その日縫い上がったばかりで、優月もまだ袖を通していなかった。
使用人たちが「まるで、異母妹のためにあつらえたドレスのよう」と褒め称えており、優月の婚約者まで「異母妹の方が似合う」と褒めている。
優月が異母妹に「どうして勝手に着たの?」と訊けば「ちょっと着てみただけよ」と言う。
婚約者は「異母妹なんだから、ちょっとくらいいじゃないか」と言う。
「ちょっとじゃないわ。私はドレスを盗られたも同じよ!」と言えば、父の後妻は「悪気があったわけじゃないのに、心が狭い」と優月の頬をぶった。
優月は父親に婚約解消を願い出た。婚約者は父親が決めた相手で、優月にはもう彼を信頼できない。
父親に事情を説明すると、「大げさだなあ」と取り合わず、「優月は異母妹に嫉妬しているだけだ、婚約者には異母妹を褒めないように言っておく」と言われる。
嫉妬じゃないのに、どうしてわかってくれないの?
優月は父親をも信頼できなくなる。
婚約者は優月を手に入れるために、優月を襲おうとした。絶体絶命の優月の前に現れたのは、叔父だった。
森に捨てられた令嬢、本当の幸せを見つけました。
玖保ひかる
恋愛
[完結]
北の大国ナバランドの貴族、ヴァンダーウォール伯爵家の令嬢アリステルは、継母に冷遇され一人別棟で生活していた。
ある日、継母から仲直りをしたいとお茶会に誘われ、勧められたお茶を口にしたところ意識を失ってしまう。
アリステルが目を覚ましたのは、魔の森と人々が恐れる深い森の中。
森に捨てられてしまったのだ。
南の隣国を目指して歩き出したアリステル。腕利きの冒険者レオンと出会い、新天地での新しい人生を始めるのだが…。
苦難を乗り越えて、愛する人と本当の幸せを見つける物語。
※小説家になろうで公開した作品を改編した物です。
※完結しました。
果たされなかった約束
家紋武範
恋愛
子爵家の次男と伯爵の妾の娘の恋。貴族の血筋と言えども不遇な二人は将来を誓い合う。
しかし、ヒロインの妹は伯爵の正妻の子であり、伯爵のご令嗣さま。その妹は優しき主人公に密かに心奪われており、結婚したいと思っていた。
このままでは結婚させられてしまうと主人公はヒロインに他領に逃げようと言うのだが、ヒロインは妹を裏切れないから妹と結婚して欲しいと身を引く。
怒った主人公は、この姉妹に復讐を誓うのであった。
※サディスティックな内容が含まれます。苦手なかたはご注意ください。
嫌われ貧乏令嬢と冷酷将軍
バナナマヨネーズ
恋愛
貧乏男爵令嬢のリリル・クロケットは、貴族たちから忌み嫌われていた。しかし、父と兄に心から大切にされていたことで、それを苦に思うことはなかった。そんなある日、隣国との戦争を勝利で収めた祝いの宴で事件は起こった。軍を率いて王国を勝利に導いた将軍、フェデュイ・シュタット侯爵がリリルの身を褒美として求めてきたのだ。これは、勘違いに勘違いを重ねてしまうリリルが、恋を知り愛に気が付き、幸せになるまでの物語。
全11話
拝啓。聖女召喚で得た加護がハズレらしくダンジョンに置いてきぼりにされた私ですが元気です。って、そんな訳ないでしょうが!責任者出て来いやオラ!
バナナマヨネーズ
恋愛
私、武蔵野千夜、十八歳。どこにでもいる普通の女の子。ある日突然、クラスメイトと一緒に異世界に召喚されちゃったの。クラスのみんなは、聖女らしい加護を持っていたんだけど、どうしてか、私だけよくわからない【応援】って加護で……。使い道の分からないハズレ加護だって……。はい。厄介者確定~。
結局、私は捨てられてしまうの……って、ふっざけんな!! 勝手に呼び出して勝手言ってんな!
な~んて、荒ぶってた時期もありましたが、ダンジョンの中で拾った子狼と幸せになれる安住の地を求めて旅をすることにしたんですよ。
はぁ、こんな世界で幸せになれる場所なんてあるのかしら?
全19話
※小説家になろう様にも掲載しています。
【完結】元お飾り聖女はなぜか腹黒宰相様に溺愛されています!?
雨宮羽那
恋愛
元社畜聖女×笑顔の腹黒宰相のラブストーリー。
◇◇◇◇
名も無きお飾り聖女だった私は、過労で倒れたその日、思い出した。
自分が前世、疲れきった新卒社会人・花菱桔梗(はなびし ききょう)という日本人女性だったことに。
運良く婚約者の王子から婚約破棄を告げられたので、前世の教訓を活かし私は逃げることに決めました!
なのに、宰相閣下から求婚されて!? 何故か甘やかされているんですけど、何か裏があったりしますか!?
◇◇◇◇
お気に入り登録、エールありがとうございます♡
※ざまぁはゆっくりじわじわと進行します。
※「小説家になろう」「エブリスタ」様にも掲載しております(アルファポリス先行)。
※この作品はフィクションです。特定の政治思想を肯定または否定するものではありません(_ _*))
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる